著者
山田 哲雄 村松 成司 高橋 徹三
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-46, 1993-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
32

本研究は, 運動時の汗および尿中Na, K排泄量の一過性の変動に及ぼす運動強度の影響について, 安静実験を対照として運動時および運動後9時間にわたり, 腎機能, 血中ホルモンなどとの関連を考え合わせて検討することを目的とした。健康な成人男子5名を被験者とし, 第1日目を調整日, 第2日日を対照実験日 (以後, 対照日と略), 第3日目を最大酸素摂取量の60% (60% VO2mx) を目標強度とした中等度の強度の運動負荷実験日, 第4日目を80% VO2maxを目標強度とした激運動負荷実験日 (以後おのおの中等度の運動日, 激運動日と略) とする実験を実施した。おもな結果は, 以下のとおりであった。1) 運動時の心拍数および% VO2maxは, ともに中等度の運動日に比べ激運動日で有意に高値を示した。2) 血中乳酸, 血漿レニン活性 (PRA), 血清アルドステロン (Ald) は, いずれも運動直後で激運動日>中等度の運動日>対照日の順に高値で, 3実験日の間にはいずれも有意差がみられた。3) 運動時の体重減少量は, 激運動日>中等度の運動日>対照日の順に高値で, 3実験日の間にはいずれも有意差がみられた。4) 運動時の汗中Na, K排泄量は, ともに激運動日>中等度の運動日>対照日の順に有意に高値または高値傾向を示した。5) 尿量, 尿中Na排泄量は, 運動時では対照日に比べ激運動日で有意に低値を示した。一方, 尿中K排泄量は, 運動時では対照日に比べ激運動日で有意に低値を示したが, 回復期では対照日に比べ中等度の運動日で有意に高値を示した。6) (汗+尿) 中Na排泄量は, 運動時では激運動日>中等度の運動日>対照日の順に有意に高値または高値傾向を示した。運動時, 回復期の合計では3実験日の間に有意な差を示さなかった。一方, (汗+尿) 中K排泄量は, 運動時では両運動日で対照日に比べ有意に高値を示した。運動時, 回復期の合計では, 中等度の運動日で対照日に比べ有意に高値を示した。以上のことから, 本実験条件下では, 中等度以上の強度の運動時には一過性に, (1) Na, Kの体外への損失が高まること, (2) Naの損失は汗中Na排泄量が高まるほど大であること, (3) Kの損失は激運動日では必ずしも高まらないこと, (4) 激運動日では相対的にKよりもNaの損失が大であること, また, 運動後9時間までの時点では, (1) Naの体外への損失は激運動日で個人差が大きいものの両運動日ともに対照日に比べ明らかではないこと, (2) Kの体外への損失は中等度の運動日で高まること, (3) NaとKの身体全体としての相対的な排泄比率については両運動日と対照日との間に差がみられないこと, がおのおの示唆された。
著者
岸田 太郎 佐伯 茂 桐山 修八
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.251-260, 1997-08-10
被引用文献数
2 1 2

本研究により以下のことが明らかになった。<BR>1) DWB, DOFおよびPSFは二価鉄の利用性を促進した。PSFはその発泡度が高いほど大きく二価鉄の利用性を促進した。<BR>2) DWB, DOFおよびPSFは三価鉄の利用性には大きな影響を与えなかった。<BR>3) DOFおよびPSFの二価鉄利用性促進はFe吸収の促進によるものと推測された。
著者
真野 博 清水 純 任 良? 中谷 祥恵 野口 有希 増田 和成 和田 政裕 Mano Hiroshi / Shimizu Jun / Im Ryanghyok / Nakatani Sachie / Noguchi Yuki / Masuda Kazunari / Wada Masahiro マノ ヒロシ シミズ ジュン Im Ryanghyok ナカタニ サチエ ノグチ ユキ マスダ カズナリ ワダ マサヒロ
出版者
出版者:日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.177-183,
被引用文献数
3

DNAマイクロアレイ解析法を用いることで, 沖縄伝統野菜ニガナ (Crepidiastrum lanceolatum) を摂取させた実験動物の肝臓では, 遺伝子発現パターンが大きく変動していることを明らかにした。特に, ニガナは強力なエリスロポエチン (EPO) 遺伝子発現誘導活性を有していることがわかった。このことから, ニガナの摂取は体内のEPOタンパク質産生を上昇させる可能性が考えられた。さらに, Potential Free Energy (pF) 1.5, pF 1.8, pF 3.0の条件で灌水量を調節し, 成分量 (栄養成分や硝酸態窒素) を変化させ, 品質を改良したニガナを作製した。3種類のニガナのうちpF 1.5の灌水量条件で栽培したニガナは, 硝酸態窒素含量およびカリウム含量が比較的少なく, その他のビタミンやミネラル含量は他と同程度であったが, EPO遺伝子誘導活能が最も高かった。本研究の結果, 食品を投与した実験動物を用いたDNAマイクロアレイ解析は, 食品の新たな品質設計技術の一部として有用であると考えた。
著者
藤井 彩乃 渡邉 佑奈 太田 淳子 桑原 晶子 宮脇 尚志 田中 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-17, 2014 (Released:2014-03-03)
参考文献数
13

近年, 肥満者が増加傾向にあり深刻な問題となっているが, 食事による減量の実践のためには対象者が主体的に食習慣・食行動の問題点を理解し, 実行することが必要である。また肥満解消のためには知識を提供するだけではなく, 管理栄養士など専門の知識や技術を持った者が, 対象者の現段階の正しい変容ステージを見極め, それぞれのステージに合わせた支援をすることが求められている。そこで人間ドック受診者を対象に食品の摂取頻度状況等を横断的に調査し, 食品摂取行動に影響を及ぼす因子の検討を共分散構造分析 (SEM) にて行った。結果, BMI 25.0 kg/m2以上群 (肥満群) においては, 食事改善の意識はあるが実行に移せていない可能性が考えられた。さらに食品摂取行動に対して, 健康面より嗜好が大きく摂取頻度に影響していることが推察され, 効果的な栄養指導を行うためには食行動を規定する食習慣, 特に嗜好を考慮することの必要性が示された。
著者
雪野 繼代 田中 邦明 丸山 功 小西 史子 熊谷 多妙子 羽田 尚彦 林 雅弘
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.331-337, 2002-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

工業パイロットスケールで大量培養したドコサヘキサエン酸 (DHA) 富化 Chlorella vulgais CK22株の脂質特性を分析した。純度92.9%のDHAを培養液に添加・培養し, DHA富化 C. vulgaris CK22の細胞成分を調べたところ, DHA添加量と関係し, クロロフィル含量は減少傾向を示したが, 総脂肪酸およびDHA含量はいずれも増加した。しかもDHAの取り込み増加による脂質過酸化の進行はなかった。また, 細胞内に取り込まれたDHAは中性脂質 (NL) のみならず, 糖脂質 (GL) およびリン脂質 (PL) においても認められた。さらにDHA富化 C. vulgaris CK22株の6カ月間にわたる脂質安定性をみたところ, 保存中DHAの若干の減少はあったものの, 過酸化物価の上昇はなかった。
著者
佐藤 明恵 中嶋 洋子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.25-33, 2013 (Released:2013-02-22)
参考文献数
36

Znの不足がラード食(LD)と魚油食(FD)の嗜好性に及ぼす影響を調べた。4週齢のオスFischer344系ラットを1群16匹ずつの4群に分け,それぞれ-ZnLD,-ZnFD,+ZnLD,+ZnFDの飼料で3週間飼育後,各群6匹ずつを解剖した。残りの-Zn群のラットには-ZnLDと-ZnFDを,+Zn群のラットには+ZnLDと+ZnFDの飼料を同時に与えて3週間選択摂取させた後解剖した。-Zn群は+Zn群に比べて血漿Zn濃度,飼料摂取量,体重は有意に低く,血漿・肝臓脂質濃度も-Zn群が有意に低かった。+Zn群のラットは両群ともn-6/n-3がほぼ3となるようにLDとFDを選択摂取したが,-Zn群のn-6/n-3はLD群で1.9,FD群で6.6となった。したがって,+Zn群は一定のn-6/n-3で必須脂肪酸を摂取する能力を有しているが,Znが不足するとこの能力が消失すると推察された。
著者
堀 由美子 村社 知美 福村 基徳 鳥居塚 和生 伊田 喜光
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-11, 2008 (Released:2009-02-28)
参考文献数
21
被引用文献数
7 16

水腫, 脚気, 解毒の改善に用いられるアズキ (生薬名: 赤小豆, セキショウズ) 煮汁の成分を明らかにする目的でアズキ熱水抽出物の成分研究を行った。その結果, フラボノイドならびにその配糖体13種を単離し, 構造を明らかにした。次いでアズキ熱水抽出物およびこれから得られたフラボノイド誘導体についてDPPH法によるラジカル消去活性を測定した。その結果, いずれも代表的な抗酸化物質であるBHAに匹敵する強い抗酸化作用を示した。
著者
芳野 恭士 岸 由紀乃 金高 隆 古賀 邦正
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.221-227, 2012 (Released:2012-10-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1

サラシア属植物の一種であるSalacia reticulataの葉と幹の水抽出物について,そのマウスI型アレルギー抑制作用を検討した。S. reticulataの葉および幹の水抽出物を,200もしくは400 mg/kg体重の投与量でマウスに経口投与した場合,マウスI型アレルギーを有意に抑制した。I型アレルギーマウスにおける腹壁中のインターリューキン-4やインターリューキン-10,さらには免疫グロブリンEの濃度の上昇もまた,これらの抽出物の投与により抑制された。S. reticulataの葉水抽出物中の有効成分の一部として(-)-エピカテキン,また,その幹水抽出物中の有効成分として,マンギフェリンが考えられる。したがって,S. reticulataの葉と幹は,I型アレルギーを予防するのに適した食品素材であると考えられる。
著者
西岡 奈保 田中 紀子 平野 直美 中村 満
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.9-15, 2013 (Released:2013-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
1

長期トレーニングを行う高齢者の身体機能の変化について調べ,身体機能と栄養摂取,咀嚼力,包括的QOLとの関連性を検討した。膝伸展力や平衡機能及び歩行能力,複合動作能力は初期値とトレーニングによる変化量との間に有意な負の相関関係があり,トレーニングの効果は身体機能の初期値が低い者ほど大きいことがわかった。歩行能力,複合動作能力や咀嚼力はエネルギー摂取量と有意に関連し,これらの機能が高い者ほどエネルギーを多く摂取していた。また,SF-8による精神的サマリースコア(MCS)はBMIと有意な正の相関関係にあり,栄養状態が良好な者ほど精神的QOLは高いことが示された。以上より,高齢者の継続的なトレーニングは特に身体機能が低い者ほど効果的であり,介護予防として有効であることが示された。また身体機能や咀嚼力が良好な者ほど栄養摂取量は高く,栄養状態が良好であると精神的QOLも高いことが示唆された。
著者
黒田 圭一 小畠 義樹 久保田 美佳 西出 英一 印南 敏
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.291-299, 1985

2種類の魚油多価不飽和脂肪酸濃縮油を異なった投与法によりラットに与えたとき, 投与法の違いが各濃縮油の血清, 肝臓の各種脂質濃度に影響するかどうか検討した。ラットは成長期のSprague-Dawley系の雄を用いた。試験に用いた2種の多価不飽和脂肪酸濃縮油は, 純度66%エイコサペンタエン酸濃縮油 (EPAconc) と純度76%ドコサヘキサエン酸濃縮油 (DHAconc) であった。各濃縮油はラットに2週間投与した。濃縮油投与法は, 0.5%コレステロール (chol) を含む基礎飼料に各濃縮油を3%レベルで添加した飼料を摂取させる方法と, あらかじめ基礎飼料のみラットに摂取させ, 摂取飼料の3%相当の濃縮油を単独に胃内へ胃管で注入投与する方法の2種の方法を用いた。対照群には5%オリーブ油を投与した。各濃縮油を飼料に添加投与したとき, EPA-concは血清の中性脂肪 (TG) を抑制する作用がDHA-concやリノール酸より明らかに強かった。しかし血清, 肝臓, 心臓中のchol濃度に対しては上昇抑制作用が弱かった。一方DHAconcの血清TGの上昇抑制作用はほとんどみられなかった。胃管投与法では, EPAconc, DHAconcともに飼料への混合投与の場合と作用の傾向はよく似ていたが, EPAconcのTGに対する作用は強まり, cholに対する作用は逆に弱まった。血清PLは両投与法において同程度の低下を示した。血清と肝臓中の過酸化脂質 (TBA値) はEPAconcの飼料への添加投与では上昇したが, 胃管投与では上昇しなかった。DHAconcはどちらの投与法においても著しい上昇傾向を認めた。このように試料濃縮油の投与法の相違によりそれらの血清, 肝臓等の脂質への作用は一部異なった場合もあったが, 全般的にみて似たような傾向を示した。
著者
西田 浩志 栗山 由加 川上 賀代子 武井 裕輔 千葉 貴裕 増田 秀美 風間 克寿 大塚 彰 佐藤 眞治 小西 徹也
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.169-175, 2011-06-10
被引用文献数
1

芽キャベツとケールの交配から生まれた新しい野菜であるプチヴェールはカルシウムなどをはじめとしたミネラルやビタミン・βカロテンなどの栄養素に富んだ野菜であることから, その機能性に関する研究成果が待たれている。本研究では高脂肪・高ショ糖・高コレステロールの肥満誘導食 (ウエスタン飼料) を与えたマウスに対してプチヴェールがどのような影響を及ぼすかを検討した。通常食群 (CT), 通常食+5%プチヴェール群 (PV), ウエスタン飼料群 (W), ウエスタン飼料+5%プチヴェール群 (WPV) の4群を設定した。ウエスタン飼料給餌による体重および内臓脂肪重量の増加をプチヴェールが抑制した。トリグリセリド (TG) およびコレステロール値を測定したところ, 血中および肝臓ではプチヴェールの明確な作用が確認されなかったものの, 糞中への排泄量をプチヴェールが有意に促進することが分かった。また, ウエスタン飼料による肝臓中の脂肪酸合成酵素 (FAS) の活性上昇をプチヴェールが抑制することも明らかになった。 プチヴェールは脂肪酸代謝や糞中への脂質排泄を制御することでマウスの肥満を抑制することが示唆された。
著者
円谷 悦造 浅井 美都 太田 美智男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.101-106, 1998-04-10
被引用文献数
2 1

食酢を用いた調理における, 食中毒原因菌である<i>Escherichia coli</i> O157: H7 NGY-10, <i>Salmonella</i> Enteritidis IID 604, <i>Vibrio parahaemolyticus</i> IFO 12711および <i>Staphylococcus aureus</i> IFO 3060の挙動を調べ, 食酢が細菌性食中毒の予防に有効か否かを検証した。<br>食酢を調味に使用する調理食品では, 食酢使用量の多い, 酢漬け類, 紅白なます, サワードリンク等では, <i>E. coli</i> O157: H7 NGY-10に対する殺菌効果が, 食酢使用量の比較的少ない, 酢の物類, すし飯等では静菌効果が確認された。食酢を調味には使用しないが, 刺身類や茹で蛸を食酢に短時間浸漬すると, 供試菌株に対する静菌効果ないしは殺菌効果が発現し, 保存性が高まった。炊飯前に, 食味に影響しない量の食酢を添加すると, 冷却後の米飯に供試菌株を接種しても静菌された。冷凍魚介類を食酢希釈液中で解凍すると, その後の穏和な加熱でも, 供試菌株が殺菌され, 保存性が高まった。また, ハンバーグステーキに食酢を適量添加して焼くと, 中心温度が65℃という不十分な加熱でも, 供試菌株が殺菌され, 保存性が高まった。<br>以上の結果より, 調理の場面での食酢の細菌性食中毒防止効果が確認された。
著者
下村 吉治
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.373-376, 2002

スポーツの世界で, 栄養の重要性についての関心が高まっている。運動競技において良い成績をおさめるためには, スポーツに適した体づくりをすることと, 十分なスタミナづくりをすることが必要であろう。最近のスポーツ栄養に関する研究では, 食べるものの質と量に加えて, 摂取するタイミングの重要性が明らかにされつつある。この総説では, 体づくりとスタミナづくりについてのこれらの最近の知見を紹介する。
著者
村木 悦子 松岡 知里 及川 璃奈 佐藤 しのぶ 千葉 大成 角田 伸代 加園 恵三
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.99-106, 2011-04-10
被引用文献数
1

香辛料の一種であるフェヌグリーク (<I>Trigonella foenum-graecum</I> <I>L</I>.) の生活習慣病予防効果を検討した。標準食 (STD) および高脂肪・高ショ糖食 (HFS) の2種類の実験食を作成し, それぞれの実験食にフェヌグリーク添加群を加えて計4群とし, 正常なSD系ラットに摂食させた。HFSではフェヌグリーク添加によって, 体重増加量, エネルギー効率比および精巣周囲白色脂肪組織重量は減少した。また, 肝臓中の総コレステロール量も減少し, 糞中への総胆汁酸排泄量が増加した。しかしながら, 耐糖能に関してはフェヌグリーク添加による大きな影響はみられなかった。以上のことから, フェヌグリークは食餌中脂質の糞中への排泄を促進することによって, 肝臓および白色脂肪組織への脂肪蓄積を抑制し, その結果として体重増加を抑制することが推察された。
著者
望月 てる代 上田 愛子 石永 正隆
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.339-343, 1998-12-10
被引用文献数
2 2

30~59歳日本人男性100人の脂質の1日摂取量を直接測定した。<br>1) 全脂肪酸, コレステロール, 植物ステロールおよびリン脂質の1日摂取量は44.8g, 295.5mg, 194.1mgおよび2.9gであった。30~39, 40~49および50~59歳代の全脂肪酸の摂取量は51.8, 41.3, 45.1gであり, 飽和脂肪酸の摂取量が30~39歳代と40~49歳代で有意に差があった。<br>2) 魚介類由来の脂肪酸摂取量の平均は1.2gで, n-6/n-3比の平均は4.3であった。<br>3) 30~39, 40~49, 50~59歳代のコレステロールの摂取量は273.8, 274.7および331.3mgであった。コレステロールとリン脂質の摂取量の間には強い正の相関があった。
著者
山田 典子 吉村 裕之
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.271-278, 2010-12-10
被引用文献数
3 4

最近, 冷え症者と非冷え症者を判別分析により識別する指標を確立した。本研究では, それらの指標で識別した冷え症の女子学生24名を対象に, プラセボ群, ローヤルゼリー(RJ)低用量摂取群(1.4 g/day), RJ高用量摂取群(2.8 g/day)を無作為に8名ずつ割り振り, 二重盲検試験法により2週間摂取してもらった。冷え自覚症状の程度は, 冷え症関連質問紙および温感質問紙で評価した。腋窩温度, 末梢皮膚血流動態, 手指皮膚表面温度, 緩和寒冷ストレス負荷後の皮膚表面温度の経時的変化なども, RJ摂取前および摂取後2週間目に測定した。その結果, 手部・足部・腰部において, RJを摂取後, 温かく感じていることが判明した。また, 高用量のRJ摂取群では, 安静時の手指皮膚表面温度が有意に上昇し, 腋窩温度と皮膚表面温度との差も小さくなった。RJ摂取群は, 緩和寒冷ストレス負荷後の皮膚表面温度を速やかに回復した。
著者
近藤 万里 寺田 美穂 田部井 亮 宇都宮 信博 松山 和義 山本 一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.383-388, 1983

高血圧自然発症ラットを用い, わかめの高血圧発症に対する影響を検討し, 胎生期よりのわかめの投与は発育期に次のような作用を示した。<BR>1) わかめは甲状腺機能を増強し, 血中サイロキシン濃度を上げ, また, 血漿中カテコラミン濃度を下げる。<BR>2) わかめは血清中KおよびCa濃度を上げる。<BR>3) わかめ投与によって体重増加が抑制されるもの, および体重増加傾向に差が認められるものがあった。<BR>4) わかめには胎生期から投与した場合, SHRの高血圧発症を遅らせる効果があったが, 高血圧発症そのものを抑制する効果はなかった。
著者
中谷 延二
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.389-395, 2003-12-10
被引用文献数
2 12

香辛料の機能成分のなかで抗酸化性, 抗菌性に着目して活性成分を探索した。抗酸化性に関しては香草系香辛料のシソ科のローズマリー, セージからきわめて抗酸化性の高いアビエタン型フェノール系ジテルペノイドを単離, 構造解析した。同科のオレガノ, マジョラム, キク科のヨモギ類から極性の高い水溶性抗酸化ポリフェノールを見いだした。香辛系香辛料のショウガからジンゲロール型およびジアリールヘプタノイド型の30種の新規化合物を含む50種の抗酸化成分を得た。ウコンには各種クルクミノイドが見いだされた。トウガラシ, コショウからはフェノール系アミド化合物を単離し, オールスパイスからはフェニルプロパノイド配糖体やタンニンを, ナンヨウザンショウからは一連のカルバゾール類を見いだした。抗菌性については非揮発成分に着目し, ハイゴショウ, パプアメース, ナツメグなどから多種類の化合物を得た。抗酸化物質は生体内酸化ストレスよって発症するがん, 動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つことが期待される。
著者
野口 茜 森山 明穂 峰尾 茂 藤澤 洋子 杉山 まりか 坂口 英
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.27-33, 2011-02-10
被引用文献数
2

近年, 肥満予防に対するポリフェノールの有用性がよく論じられている。ボイセンベリーにはアントシアニンやエラグ酸などのポリフェノールが多く含まれているが, 抗肥満作用に関する報告はない。そこで, 5%ボイセンベリー果汁 (BJ) を添加した普通食並びに高脂肪食をWistar系雄性ラット (6週齢) に12週間摂取させ, BJが肥満を予防する作用をもつか試験した。その結果, BJ添加は, 体重増加量, 体脂肪蓄積, 肝臓脂質中の中性脂肪量および総コレステロール量を, 有意に低下させた。また, 各飼料摂取後の血漿中中性脂肪濃度を測定した結果, BJ添加が食後3時間での血漿中中性脂肪濃度上昇を, 有意に抑制した。以上の結果から, ボイセンベリー果汁の摂取は, 高脂肪食摂取による肥満を予防する可能性が示唆され, さらにはメタボリックシンドロームの改善にも有用であると考えられた。
著者
野口 茜 森山 明穂 峰尾 茂 藤澤 洋子 杉山 まりか 坂口 英
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.27-33, 2011-02-10
参考文献数
39
被引用文献数
2

近年, 肥満予防に対するポリフェノールの有用性がよく論じられている。ボイセンベリーにはアントシアニンやエラグ酸などのポリフェノールが多く含まれているが, 抗肥満作用に関する報告はない。そこで, 5%ボイセンベリー果汁 (BJ) を添加した普通食並びに高脂肪食をWistar系雄性ラット (6週齢) に12週間摂取させ, BJが肥満を予防する作用をもつか試験した。その結果, BJ添加は, 体重増加量, 体脂肪蓄積, 肝臓脂質中の中性脂肪量および総コレステロール量を, 有意に低下させた。また, 各飼料摂取後の血漿中中性脂肪濃度を測定した結果, BJ添加が食後3時間での血漿中中性脂肪濃度上昇を, 有意に抑制した。以上の結果から, ボイセンベリー果汁の摂取は, 高脂肪食摂取による肥満を予防する可能性が示唆され, さらにはメタボリックシンドロームの改善にも有用であると考えられた。