著者
大貫 啓行
出版者
麗澤大学
雑誌
麗沢大学紀要 (ISSN:02874202)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.239-259, 2006-07

05年8月8日、郵政民営化法案の参院否決を受け、小泉首相は直接国民の判断を仰ぐとして衆院を解散、結果は自民党の圧勝となった。突然の総選挙に、官僚からの大量の転身立候補者が出、劇場的選挙として国民の高い関心を呼んだ。官僚の大量立候補は官僚であることの魅力が低下してしまった結果とすれば今後の人材確保の上などで問題となる。これまで、郵政民営化を始めとする小泉政権の主導する構造改革への対応を通じて公務員の意識の変化の過程を観察してきた。これまでは対象事案発生からおおむね1年程経過した時点での観察になっているが、本稿は予定を変更して解散・総選挙へと急転した05年夏に焦点を合わせ、しかも投票直後というより接近した時点での観察を試みる。政界・政局との距離の起き方など高級官僚の本音をみる上で興味深いものがあると考えるからだ。特に、政治との関係という面で「大改革の時代を公務員(特に高級官僚)はどのように受け止めているのか」との問いを中心に公務員の意識改革の現状を同時進行系で分析・検討したい。