著者
齋藤 寿広 三宅 正則 近藤 真理 宇土 幸伸 齊藤 典義 別所 英男 平林 利郎 安藤 隆夫
出版者
山梨県果樹試験場
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 = Bulletin of the Yamanashi Fruit Tree Experiment Station (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-10, 2011-03

1. ビジュノワールは山梨県果樹試験場において,1986年に山梨27号と'マルベック'を交雑して得られた実生から選抜した赤ワイン向けブドウ品種である。2000年よりブドウ山梨38号の系統名でブドウ第10回系統適応性検定試験に供試された。その結果2006年10月4日付で'ビジュノワール'と命名され,'ぶどう農林23号'として,登録・公表された。2008年3月18日付けで種苗法に基づき第16781号として品種登録された。2. 樹勢や樹冠の広がりは'メルロ'と同程度である。花穂は円錐形で副穂を有し,1新梢あたり2花穂程度着生する。満開期は山梨市(標高440m)では6月上旬で'メルロ'と同時期である。着粒密度は'メルロ'と同程度である。巨峰・ピオーネに準じた防除で問題となる病害虫は認められない。3. 収穫期は山梨県以西で9月上中旬であり,果房は円錐形で,大きさは300g程度である。果粒の着粒密度は'メルロ'と同程度で,大きさは2g程度である。果皮は青黒色を呈し,果粉の量は多い。糖度は22.7%,滴定酸度は0.55g/100mlである。渋みおよび香りは感じられない。また,裂果の発生はほとんどみられない。収量は1.5t/10a程度である。4. ワインは,酸含量が少なく,色が濃い。また,フェノール含量が高くタンニンも多く,ボディがあって品質が優れている。5. 耐寒性が高く,西南暖地においても着色良好でワインの色も濃いことから,全国のブドウ栽培地域で栽培が可能である。
著者
新谷 勝広 猪股 雅人 富田 晃 渡辺 晃樹
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.13, pp.49-56, 2014 (Released:2016-01-20)

1990年代後半より県内のモモ栽培地域でモモ樹が衰弱もしくは枯死してしまう障害の発生が見られるようになった。そこで,現地における発生実態および障害の特徴を把握し,その経緯に基づいた再現試験および防止対策試験を行った。現地実態調査から,枯死障害の発生に,圃場や品種の違いとの明白な関係は認められなかった。一方,剪定を中心とする樹体管理,特に冬季剪定おける強剪定との関係が最も高かった。再現試験においても,強剪定した樹に衰弱樹や枯死樹が多く発生し,現地実態調査で観察された枯死障害の症状と同様の症状が確認された。このことから,冬季の強剪定が枯死障害の発生に大きく関与しており,剪定切り口からの枯れ込みが養水分の通導を妨げ,枯死の引き金になっている可能性が示唆された。また、防止対策試験では,厳寒期後の3月に剪定を行う方法が障害の発生を防止するうえで最も有効であることが明らかとなった。
著者
くぬ刀 幸博 寺井 康夫
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-41, 1996 (Released:2011-03-05)
著者
西島 隆 寺井 康夫 功刀 幸博
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.10, pp.47-56, 2000 (Released:2011-03-05)

1980年頃から山梨県の主要品種である‘巨峰’と‘ピオーネ’に被害面積が年々拡大してきたわが国固有のブドウえそ果病について、病徴、病徴の品種間差異、検定用指標樹の選抜、自然伝搬およびエライザ検定による現地圃場での感染状況の点から実験調査した。1.5月上旬から遅れて萌芽した新梢に初期症状を認め、6月中~下旬には副梢にも発病した。新梢は節間が短縮し萎縮した。幼木時に発病すると樹勢は衰え、樹冠は拡大しなかった。ある年突然に成木樹に発病を見ることがあった。年々発病部位は拡大していった。2.葉は小さく、葉身には凸凹が見られ、黄白色のモザイク斑やリング状や稲妻状の線状斑が現れ、奇形となった。3.果実には落花直後の幼果期から濃緑色のえそ斑が果面に多数散見され、果肉内部にまで達していた。激発すると果粒は着色不良で成熟せず、果肉は硬く小粒で、商品価値は全くなかった。4.血縁関係にある‘巨峰’、‘ピオーネ’、‘高尾’、‘キャンベル・アーリー’に緑枝接ぎ接種すると、約1ヶ月後に副梢に、もしくは翌年の新梢に激しい病徴が現れた。また台木品種の‘グロワール’にも明瞭な症状が現れた。これらの品種はえそ果病の検定用指標樹として有用であると考えられた。主要な既知ウイルス病検定品種には症状が現れなかった。5.発病樹の‘巨峰’と‘ピオーネ’を台木12品種、穂木15品種に接木接種したところ、えそ果病の発病に品種間差異が認められた。6.現地激発園跡地に植栽した無病の‘巨峰’および‘ピオーネ’に自然伝搬が認められた。7.自然伝搬試験をおこなった圃場およびその周辺圃場のブドウ樹のエライザ検定によって、無病徴品種には陽性反応を示した樹があり、えそ果病に潜在感染していた。樹齢別調査から、えそ果病は園外からの持込みでなく‘デラウェア’から‘巨峰’や‘ピオーネ’に改植する以前に汚染していた可能性もあると考えられた。また‘ピオーネ’、‘巨峰’は感染樹にもかかわらず、無病徴新梢はエライザ検定が陰性で、病原ウイルスの不連続分布が考えられた。
著者
西島 隆 寺井 康夫 功刀 幸博
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.10, pp.47-56, 2000-03

1980年頃から山梨県の主要品種である'巨峰'と'ピオーネ'に被害面積が年々拡大してきたわが国固有のブドウえそ果病について、病徴、病徴の品種間差異、検定用指標樹の選抜、自然伝搬およびエライザ検定による現地圃場での感染状況の点から実験調査した。1.5月上旬から遅れて萌芽した新梢に初期症状を認め、6月中~下旬には副梢にも発病した。新梢は節間が短縮し萎縮した。幼木時に発病すると樹勢は衰え、樹冠は拡大しなかった。ある年突然に成木樹に発病を見ることがあった。年々発病部位は拡大していった。2.葉は小さく、葉身には凸凹が見られ、黄白色のモザイク斑やリング状や稲妻状の線状斑が現れ、奇形となった。3.果実には落花直後の幼果期から濃緑色のえそ斑が果面に多数散見され、果肉内部にまで達していた。激発すると果粒は着色不良で成熟せず、果肉は硬く小粒で、商品価値は全くなかった。4.血縁関係にある'巨峰'、'ピオーネ'、'高尾'、'キャンベル・アーリー'に緑枝接ぎ接種すると、約1ヶ月後に副梢に、もしくは翌年の新梢に激しい病徴が現れた。また台木品種の'グロワール'にも明瞭な症状が現れた。これらの品種はえそ果病の検定用指標樹として有用であると考えられた。主要な既知ウイルス病検定品種には症状が現れなかった。5.発病樹の'巨峰'と'ピオーネ'を台木12品種、穂木15品種に接木接種したところ、えそ果病の発病に品種間差異が認められた。6.現地激発園跡地に植栽した無病の'巨峰'および'ピオーネ'に自然伝搬が認められた。7.自然伝搬試験をおこなった圃場およびその周辺圃場のブドウ樹のエライザ検定によって、無病徴品種には陽性反応を示した樹があり、えそ果病に潜在感染していた。樹齢別調査から、えそ果病は園外からの持込みでなく'デラウェア'から'巨峰'や'ピオーネ'に改植する以前に汚染していた可能性もあると考えられた。また'ピオーネ'、'巨峰'は感染樹にもかかわらず、無病徴新梢はエライザ検定が陰性で、病原ウイルスの不連続分布が考えられた。
著者
小澤 俊治 古屋 清 三宅 正則
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.10, pp.11-19, 2000-03

山梨県果樹試験場では、農林水産省の指定試験地として1951年からブドウの育種事業を開始し、わが国の気象条件下でも容易に栽培が可能で高品質の生食醸造兼用品種の育成を図ることを目標に事業を進めてきた。その成果として、'甲斐美嶺'を登録するに至ったので、その育成経過及び特性を報告する。本品種は1983年に'レッド・クイーン'と'甲州三尺'を交雑した実施2個体から選抜したものである。1984年に播種、育種後、1985年に個体番号13669として圃場に定植した。1990年に一次選抜を行い、1992年より'山梨36号'の系統名で第8回系統適応性検定試験に供試した。その結果、白色系品種としては早熟であり食味も良好なことから、1997年8月19日に'美嶺'と命名、'ぶどう農林17号'として登録、公表された。その後、商標との類似のため、1999年3月31日に'甲斐美嶺'と名称変更された。1997年3月31日に種苗法に基づく品種登録の申請を行い、1999年4月21日に出願公表された。樹勢は強く、新梢の伸びは旺盛である。葉の大きさは大きい。花穂は複穂円錐形で、1新梢あたり2~3花穂を着ける。花は完全花(両性花)であり、三倍体品種である。満開期は山梨市で6月上旬で、花振るいは小~中である。防除は'巨峰'に準じた散布で問題となる病害虫は認められない。自然状態の果房は、有岐円筒~有岐円錐形であり、着粒密度は中~やや密である。果粒の形は扁円で、大きさは約1.6gである。満開時12.5または25ppm及び満開10日後の25ppmのジベレリン水溶剤の処理によって、4~5gに果粒が肥大し、400g前後の果房となる。果粒は黄緑色で果面の汚れやさびは少なく、果紛は少ない。果皮の厚さは中程度で、はく皮性は容易である。肉質は塊状であり、フォクシー香を有する。果汁の糖度は18~19°Brixで、酸含量は0.5~0.7g/100mlで食味はさわやかである。裂果はほとんど認められない。脱粒性はほとんど認められず、輸送性に優れる。果実の日持ちは中程度である。収穫の目安は糖度18°Brix以上、酸度0.6g/100ml以下、糖酸比30以上とする。全国のブドウ生産地帯での栽培が可能であるが、酸抜けが遅いことを考慮して、寒冷地を除く温暖なブドウ地帯での普及が見込まれる。
著者
小澤 俊治 雨宮 毅 佐藤 俊彦
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-9, 2000-03

山梨県果樹試験場では、農林水産省の指定試験地として1951年からブドウの育種事業を開始し、わが国の気象条件下でも容易に栽培が可能で高品質の生食醸造兼用品種の育成を図ることを目標に事業を進めてきた。その成果として、'サマーブラック'を登録するに至ったので、その育成経過及び特性を報告する。本品種は1968年に'巨峰'と'トムソン・シードレス'を交雑した実生11個体から選抜したものである。1969年に播種、育苗後、1970年に個体番号8255として圃場に定植した。1990年に一次選抜を行い、1992年より'山梨35号'の系統名で第8回系統適応性検定試験に供試した。その結果、早生品種として着色や果実品質が優れることから、1997年8月19日に'サマーブラック'と命名、'ぶどう農林16号'として登録、公表された。1997年3月31日に種苗法に基づく品種登録の申請を行い、1999年3月18日に出願公表された。樹勢は強く、新梢の伸びは旺盛である。樹冠の広がりは大きく、樹勢いは強い。葉の大きさは大きい。花穂は複穂円筒形で、1新梢あたり2花穂を着ける。花は完全花(両性花)であり、三倍体品種である。満開期は山梨市で6月中旬で、花振るいは多い。防除は'巨峰'に準じた散布で問題となる病害虫は認められない。自然状態の果房は、有岐円筒形であり、着粒密度は中である。果粒の形は扁円~円で、大きさは3g程度である。満開時及び満開10日後のジベレリン50ppmの処理によって、7~8gに果粒が肥大し、400g前後の果房となる。果粒は紫黒色で着色は良好であり、果粉は多い。果皮は厚く、はく皮性はやや困難である。肉質は塊状と崩壊性の中間であり、フォクシー香を有する。果汁の糖度は20~21°Brixと高く、酸含量は0.5~0.6g/100mlで食味は濃厚である。裂果は少ない。果梗と果粒の分離性は容易であり、果実の日持ちは短い。収穫の目安は糖度19°Brix以上、酸度0.6g/100ml以下、糖酸比30以上とする。