著者
三浦 周行 山崎 博子 西島 隆明
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.513-517, 1997-12-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

ツルムラサキ (Bassela alba L.) 種子を, 低水分レベルに調節した市販の培養土中で処理することにより,出芽を促進できるかどうかを検討した. 培養土 (「新健苗くん140タイプ」, 大塚産業) 500gに水16, 52および100gを加えた. その培養土をセルトレイに詰め, 各セルに1粒ずつ播種し, 培養土の水分レベルを維持した条件下で15あるいは25&deg;Cに異なった期間置いた後, 十分灌水して出芽室 (明期8時間:30&deg;C, 暗期16時間:20&deg;C) に移し, 出芽率を調査した.<BR>15&deg;Cで2~10日間処理した結果, 10日間&bull;水52g区で最も出芽が促進され, 出芽室に移した後2日に出芽が開始し, 5日には63~70%の出芽率に達した. 一方, 無処理区の出芽は5~6日に始まった後, 徐々に増加し, 20日に23~24%となった. 25&deg;Cで3~5日間処理の結果, 5日間&bull;水52g区の出芽率が勝った.15&deg;C&bull;10日間&bull;水52g区と25&deg;C&bull;5日間&bull;水52g区との効果を比較したところ, 前者で出芽速度が速く,20日における芽生えの胚軸長の変異が小さかった.従って, 本実験の範囲ではツルムラサキ種子の出芽促進には, 水52g区 (水分41~45%) の培養土に播種して, 15&deg;Cで10日間処理するのが最適と考えられた.
著者
西島 隆 寺井 康夫 功刀 幸博
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.10, pp.47-56, 2000 (Released:2011-03-05)

1980年頃から山梨県の主要品種である‘巨峰’と‘ピオーネ’に被害面積が年々拡大してきたわが国固有のブドウえそ果病について、病徴、病徴の品種間差異、検定用指標樹の選抜、自然伝搬およびエライザ検定による現地圃場での感染状況の点から実験調査した。1.5月上旬から遅れて萌芽した新梢に初期症状を認め、6月中~下旬には副梢にも発病した。新梢は節間が短縮し萎縮した。幼木時に発病すると樹勢は衰え、樹冠は拡大しなかった。ある年突然に成木樹に発病を見ることがあった。年々発病部位は拡大していった。2.葉は小さく、葉身には凸凹が見られ、黄白色のモザイク斑やリング状や稲妻状の線状斑が現れ、奇形となった。3.果実には落花直後の幼果期から濃緑色のえそ斑が果面に多数散見され、果肉内部にまで達していた。激発すると果粒は着色不良で成熟せず、果肉は硬く小粒で、商品価値は全くなかった。4.血縁関係にある‘巨峰’、‘ピオーネ’、‘高尾’、‘キャンベル・アーリー’に緑枝接ぎ接種すると、約1ヶ月後に副梢に、もしくは翌年の新梢に激しい病徴が現れた。また台木品種の‘グロワール’にも明瞭な症状が現れた。これらの品種はえそ果病の検定用指標樹として有用であると考えられた。主要な既知ウイルス病検定品種には症状が現れなかった。5.発病樹の‘巨峰’と‘ピオーネ’を台木12品種、穂木15品種に接木接種したところ、えそ果病の発病に品種間差異が認められた。6.現地激発園跡地に植栽した無病の‘巨峰’および‘ピオーネ’に自然伝搬が認められた。7.自然伝搬試験をおこなった圃場およびその周辺圃場のブドウ樹のエライザ検定によって、無病徴品種には陽性反応を示した樹があり、えそ果病に潜在感染していた。樹齢別調査から、えそ果病は園外からの持込みでなく‘デラウェア’から‘巨峰’や‘ピオーネ’に改植する以前に汚染していた可能性もあると考えられた。また‘ピオーネ’、‘巨峰’は感染樹にもかかわらず、無病徴新梢はエライザ検定が陰性で、病原ウイルスの不連続分布が考えられた。
著者
阿部 弘 川勝 恭子 大友 英嗣 西島 隆明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.267-273, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
9

エゾリンドウの4年生株における切り花収量の減少要因を明らかにするため,2年生株から4年生株において,塊茎の発達過程と花茎の発生について調査した.2年生株から3年生株にかけて主塊茎の生育は旺盛になり,副塊茎の多くがこの時期に形成された.3年生株から4年生株にかけては,主塊茎の木化が進んで生育が緩慢になる一方で,副塊茎の発達が旺盛になった.株齢による花茎の発生は主塊茎と副塊茎で異なる傾向を示した.3年生株では,主塊茎からの花茎の発生が旺盛であった.これに対して,4年生株では,旺盛に発達する副塊茎からの花茎の発生が盛んになったものの,主塊茎からの花茎の発生が減少することにより,株全体の花茎発生が減少した.主塊茎の頂芽は栄養芽として存続し,側生器官である花茎と副塊茎を分化し続けた.従って,4年生株における主塊茎の発達の停滞は,無限成長性を維持したまま起こると考えられた.
著者
佐々木 克友 間 竜太郎 仁木 智哉 山口 博康 鳴海 貴子 西島 隆明 林 依子 龍頭 啓充 福西 暢尚 阿部 知子 大坪 憲弘
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0614, 2008 (Released:2008-12-18)

我々は「新形質花き」の作出を目指し、トレニアを用いて重イオンビーム照射による変異導入を行っている。その中に、第2ウォールが萼化した表現型を示すトレニアmutantが2系統見出された。花器官形成のABCモデルから、これらmutantの表現型はクラスB遺伝子機能の欠損に原因があると予想された。本研究は、変異が導入された遺伝子の特定と、トレニアの花器官形成に関わる情報の収集を目的とする。トレニアのクラスB遺伝子であるTfGLOおよびTfDEFの発現を、野生型および上記mutantを用いRT-PCRにて解析した結果、2種のmutantではTfDEFは発現していたがTfGLOの発現が全く認められなかった。野生型および2種のmutantについてTfGLOゲノム領域を単離し配列を決定した結果、TfGLO遺伝子発現の欠失に直接の要因と推測される変異は見られなかった。このことから、2種のmutantにおけるTfGLO遺伝子の欠損は、上流の発現調節因子の変異に起因すると推察された。すでにシロイヌナズナ等でクラスB遺伝子の発現調節因子として報告されているAPETALA1、LEAFYおよびUFOの発現をRT-PCRで解析した結果、UFO特異的にmRNA量の減少が認められたので報告する。なお、本研究は、「農林水産研究高度化事業」によるものである。
著者
西島 隆 寺井 康夫 功刀 幸博
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.10, pp.47-56, 2000-03

1980年頃から山梨県の主要品種である'巨峰'と'ピオーネ'に被害面積が年々拡大してきたわが国固有のブドウえそ果病について、病徴、病徴の品種間差異、検定用指標樹の選抜、自然伝搬およびエライザ検定による現地圃場での感染状況の点から実験調査した。1.5月上旬から遅れて萌芽した新梢に初期症状を認め、6月中~下旬には副梢にも発病した。新梢は節間が短縮し萎縮した。幼木時に発病すると樹勢は衰え、樹冠は拡大しなかった。ある年突然に成木樹に発病を見ることがあった。年々発病部位は拡大していった。2.葉は小さく、葉身には凸凹が見られ、黄白色のモザイク斑やリング状や稲妻状の線状斑が現れ、奇形となった。3.果実には落花直後の幼果期から濃緑色のえそ斑が果面に多数散見され、果肉内部にまで達していた。激発すると果粒は着色不良で成熟せず、果肉は硬く小粒で、商品価値は全くなかった。4.血縁関係にある'巨峰'、'ピオーネ'、'高尾'、'キャンベル・アーリー'に緑枝接ぎ接種すると、約1ヶ月後に副梢に、もしくは翌年の新梢に激しい病徴が現れた。また台木品種の'グロワール'にも明瞭な症状が現れた。これらの品種はえそ果病の検定用指標樹として有用であると考えられた。主要な既知ウイルス病検定品種には症状が現れなかった。5.発病樹の'巨峰'と'ピオーネ'を台木12品種、穂木15品種に接木接種したところ、えそ果病の発病に品種間差異が認められた。6.現地激発園跡地に植栽した無病の'巨峰'および'ピオーネ'に自然伝搬が認められた。7.自然伝搬試験をおこなった圃場およびその周辺圃場のブドウ樹のエライザ検定によって、無病徴品種には陽性反応を示した樹があり、えそ果病に潜在感染していた。樹齢別調査から、えそ果病は園外からの持込みでなく'デラウェア'から'巨峰'や'ピオーネ'に改植する以前に汚染していた可能性もあると考えられた。また'ピオーネ'、'巨峰'は感染樹にもかかわらず、無病徴新梢はエライザ検定が陰性で、病原ウイルスの不連続分布が考えられた。
著者
山田 邦夫 乘越 亮 鈴木 克己 西島 隆明 今西 英雄 市村 一雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.356-362, 2009 (Released:2009-07-28)
参考文献数
38
被引用文献数
26 38

開花は園芸学的に重要な現象であるにもかかわらず,その形態学的研究に関する報告は限定されている.バラ花弁の成長発達において,いつ細胞分裂が停止し,また細胞の形態がどのように変化するのかなどは明らかとはなっていない.本研究では,バラ花弁の発達にともなう細胞形態の変化を詳細に明らかにすることを目的とした.バラ(Rosa hybrida L. ‘Sonia’)花弁を 6 つの開花ステージごとに採取した.細胞の形態の変化は,花弁横断切片を光学顕微鏡,透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察し,表皮細胞数はノマルスキー微分干渉顕微鏡を用いて測定した.表皮細胞の数は開花にともない増加したが,背軸側の表皮細胞数の増加速度は向軸側に比べより早い時期から緩やかとなった.表皮細胞の面積は,開花後期のステージで,細胞数の増加と比較して著しく急激に増大していた.これは,開花後期のステージでは花弁成長は主に細胞肥大によるものであることを示唆している.開花にともない,花弁における海綿状組織の細胞は独特の肥大成長によって多くの空隙を作りだしていた.また花弁頂部側の表皮細胞では水平方向への肥大成長が著しく,特に向軸側の表皮細胞では液胞の巨大化がともなう細胞肥大が観察された.細胞肥大のパターンが花弁内の組織によって異なっていることが,バラ花弁の開花に伴う反転に寄与していると思われる.