著者
齋藤 寿広
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.419-424, 2018-08-15 (Released:2018-08-25)
参考文献数
44
被引用文献数
4

The Japanese pear (Pyrus pyrifolia Nakai) is one of the most commercialized fruit trees in Japan and it has been consumed for a long time. The concept of pear cultivars was first developed in the middle of Edo Era (1603-1887). Commercial pear orchards were established in the late Edo Era and over 1000 cultivar name have since been recorded. ‘Taihei’ was the leading cultivar in 1890-1900, followed by ‘Kozo’ in 1900-1910. ‘Chojuro’ became the leading cultivar from the 1910s to the late 1940s due to its high productivity and disease resistance, but ‘Nijisseiki’ replaced it until the late 1980s, as this cultivar had superior flesh texture despite its extreme susceptibility to black spot disease. The systematic breeding program of the Horticultural Research Station [currently National Institute of Fruit Tree and Tea Science (NIFTS), National Agricultural Research Organization (NARO)] began in 1935 and it mainly aimed to improve fruit quality by focusing on flesh texture and black spot disease. As a result, cultivars ‘Kosui’ and ‘Hosui’ were released in 1959 and 1972, respectively. ‘Kosui’ became a leading cultivar in the late 1980s and ‘Hosui’ became second in the beginning of the 1990s. Current breeding at NIFTS uses DNA marker-assisted selection for combining superior fruit quality with traits related to labor and cost reduction, multiple disease resistance, and self-compatibility.
著者
壽 和夫 齋藤 寿広 町田 裕 佐藤 義彦 阿部 和幸 栗原 昭夫 緒方 達志 寺井 理治 西端 豊英 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.1, pp.11-21, 2002 (Released:2011-03-05)

1. ‘あきづき’は1985年に果樹試験場(現 果樹研究所)において‘162-29’に‘幸水’を交雑して育成した実生から選抜したやや晩生の赤ナシ品種である。1993年に一次選抜し,1994年からナシ第6回系統適応性検定試験に‘ナシ筑波47号’として供試した。その結果、1998年8月21日付けで‘あきづき’と命名され、なし農林19号として登録、公表された。また、2001年10月18日付けで種苗法に基づき第9401号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、短果枝、えき花芽ともに着生はやや少ない。開花期は‘幸水’とほぼ同時期で、‘筑水’とは交雑不和合であるが他の主要品種とは和合性である。‘豊水’と‘新高’の間に成熟し、病虫害に対しては通常の防除で対応できる。3. 果実は扁円形で平均果重が500g程度と‘豊水’より大きいが‘新高’よりは小さい。果肉は軟らかく、甘味は‘豊水’程度で酸味が僅かにあり、食味は良好である。芯腐れ、みつ症などの生理障害の発生は少ない。有てい果が多数混在する。
著者
齋藤 寿広 三宅 正則 近藤 真理 宇土 幸伸 齊藤 典義 別所 英男 平林 利郎 安藤 隆夫
出版者
山梨県果樹試験場
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 = Bulletin of the Yamanashi Fruit Tree Experiment Station (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-10, 2011-03

1. ビジュノワールは山梨県果樹試験場において,1986年に山梨27号と'マルベック'を交雑して得られた実生から選抜した赤ワイン向けブドウ品種である。2000年よりブドウ山梨38号の系統名でブドウ第10回系統適応性検定試験に供試された。その結果2006年10月4日付で'ビジュノワール'と命名され,'ぶどう農林23号'として,登録・公表された。2008年3月18日付けで種苗法に基づき第16781号として品種登録された。2. 樹勢や樹冠の広がりは'メルロ'と同程度である。花穂は円錐形で副穂を有し,1新梢あたり2花穂程度着生する。満開期は山梨市(標高440m)では6月上旬で'メルロ'と同時期である。着粒密度は'メルロ'と同程度である。巨峰・ピオーネに準じた防除で問題となる病害虫は認められない。3. 収穫期は山梨県以西で9月上中旬であり,果房は円錐形で,大きさは300g程度である。果粒の着粒密度は'メルロ'と同程度で,大きさは2g程度である。果皮は青黒色を呈し,果粉の量は多い。糖度は22.7%,滴定酸度は0.55g/100mlである。渋みおよび香りは感じられない。また,裂果の発生はほとんどみられない。収量は1.5t/10a程度である。4. ワインは,酸含量が少なく,色が濃い。また,フェノール含量が高くタンニンも多く,ボディがあって品質が優れている。5. 耐寒性が高く,西南暖地においても着色良好でワインの色も濃いことから,全国のブドウ栽培地域で栽培が可能である。
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 高田 教臣 平林 利郎 佐藤 明彦 正田 守幸 寺井 理治 西端 豊英 樫村 芳記 阿部 和幸 西尾 聡悟 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
雑誌
果樹研究所研究報告 (ISSN:13473549)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-9, 2015-03

1. '美玖里'は,1995年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において'石鎚'に'秋峰'を交雑し,育成した実生から選抜した果実品質が優れる中~晩生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し,2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。2009年2月の平成20年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会(落葉果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2011年3月9日に,登録番号20474号として種苗法に基づき品種登録された。2. 樹勢は強く,樹姿は直立で,枝梢の発生量は多い。雌花の開花期は'筑波'より遅く'石鎚'とほぼ同時期,果実の成熟期は育成地では9月下旬~10月上旬で'筑波'と'石鎚'の間である。若木での収量は'筑波'や'石鎚'と同程度である。双子果,裂果,腐敗果の発生は栽培上問題とならない程度に少ない。環境条件により,虫害果が多発する場合がある。3. 果実は円形で,褐色を呈する。系統適応性検定試験における平均果重は26g程度で'筑波'や'石鎚'と同程度以上で,揃いは良好である。果実の比重は'筑波'や'石鎚'より高く,肉質,甘味,香気ともに'筑波'と同程度以上で'石鎚'より優れ,食味は良好である。渋皮剥皮は困難である。果肉は黄色で,'筑波','石鎚'と比較して明度が高く,黄色味が強い。4. 関東地方以西の産地で特性を発揮できるが,東北地方での適応性は不明である。既存の主要品種と比較して果肉色や食味の点で優れており,ゆで栗等家庭用消費の他,付加価値の高い加工原料としての利用が期待される。
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 阿部 和幸 寺井 理治 正田 守幸 高田 教臣 佐藤 義彦 平林 利郎 佐藤 明彦 西端 豊英 樫村 芳記 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
pp.1-9, 2009 (Released:2011-05-24)

1. ‘ぽろたん’は、1991年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において‘550-40’に‘丹沢’を交雑し、育成した実生から選抜した渋皮剥皮性が優れる早生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し、2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。その結果2006年10月4日付で‘ぽろたん’と命名され、‘くり農林8号’として登録、公表された。2007年10月22日付けで種苗法に基づき第15658号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、樹姿はやや直立である。枝梢は密に発生し、太く、長い。雌花の着生は多く、結果性はやや多い。果実の成熟期は育成地では9月上~中旬で‘国見’と同時期である。3. きゅう果は扁球形で‘国見’と同程度の大きさで、果実の側果側面の形は帯円三角形、横面は尖円形である。平均果重は30g程度で‘国見’より若干小さいが、‘丹沢’よりやや大きく、揃いは中程度である。双子果の発生はやや多く、裂果の発生は少ない。果実の比重は‘丹沢’や‘国見’より高く、肉質はやや粉質である。果肉は黄色で甘味、香気ともに‘丹沢’や‘国見’より多く、食味は良好である。環境条件により、虫害果が多発する場合がある。蒸しグリでの渋皮剥皮性は易であり、焼きグリにした場合、チュウゴクグリ程度に容易に剥皮出来る。4. 試作を検討した関東地方以西の産地で特性を発揮できるが、東北地方での適応性は不明である。ニホングリで唯一渋皮剥皮性が優れる品種であり、家庭での消費増大はもとよりニホングリの新規加工需要の創出等多方面での利用が期待される。
著者
澤村 豊 間瀬 誠子 髙田 教臣 佐藤 明彦 西谷 千佳子 阿部 和幸 増田 哲男 山本 俊哉 齋藤 寿広 壽 和夫
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.222-226, 2013 (Released:2013-10-12)
参考文献数
17
被引用文献数
4 13

ニホンナシは配偶体型自家不和合性を有し,結実には他家受粉が必要となる.本研究では,ニホンナシの自家和合性個体を作出するため,自家不和合性品種の‘幸水’にガンマ線を緩照射し,その‘幸水’より採取された花粉を無照射の‘幸水’に受粉し,交雑実生を獲得した.その結果,自家受粉で 74.4%の結実率を示す自家和合性個体 415-1 を得た.PCR 法により S-RNase の遺伝子型を解析したところ,415-1 は‘幸水’と同じ S4S5 であった.415-1 の自家和合性が花粉側変異,花柱側変異の何れによるものかを受粉試験により調査した.415-1 に同じ S 遺伝子型をもつ品種(‘秀玉’および‘王秋’)の花粉を受粉しても結実が確認できなかったことより,415-1 の S4- および S5-RNase は機能していると考えられた.一方,‘秀玉’および‘王秋’に 415-1 の花粉を受粉したところ,種子を有する果実の結実が確認された.これらの結果から 415-1 は花粉側の自家和合性変異体であると判断した.