著者
佐藤 俊彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PB-028, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

感覚情報処理に関連した感受性や欲求性に関する概念には,感覚処理感受性や刺激欲求性など,さまざまなものがあり,従来から用いられてきたパーソナリティ特性の概念との間で関連が認められていることから,これらの概念の間の重複や差異を整理しておくことは,これらの概念が包含する個人の心理的特徴の範囲を正確に把握するためだけでなく,パーソナリティの個人差を理解する上でも重要であるだろう。そこで,それぞれの概念に対応した質問紙尺度の相互の関連性を明らかにするため,大学生を対象に,Highly Sensitive Person Scale日本語版(HSPS-J19;高橋,2016),刺激欲求尺度・抽象表現項目版(SSS-AE;古澤,1989),および日本版青年・成人感覚プロファイル(AASP;辻井,2015)の3種類の質問紙尺度への回答を求めた。AASPに含まれる低登録,感覚探求,感覚過敏,感覚回避の4つの尺度のうち,低登録の尺度の得点は,HSPSの易興奮性との間に中程度の正の相関を認め,感覚過敏と感覚回避の得点のいずれもが,HSPSの低感覚閾との間でやや高い正の相関を認めた。感覚探求の得点については,SSS-AEの脱抑制欲求(Dis)尺度との間で中程度の正の相関を認めた。
著者
石原 哲也 平田 幸一 辰元 宗人 山崎 薫 佐藤 俊彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.180-186, 1997-06-25 (Released:2009-09-16)
参考文献数
30

一過性全健忘 (TGA) の発症機序については, 未だに統一した見解は得られていない.われわれは, 従来の臨床的およびMRI, SPECTによる画像診断的検討に加え, proton MRspectroscopy (1H-MRS) を用い, その成因に関する検討をおこなった.TGAの急性期におけるSPECTでは, 側頭葉内側および基底核を中心とした脳血流の低下が示唆された.一方, 側頭葉内側および基底核部における急性期の1H-MRSでは, 虚血性変化の急性期にみられるようなコリン, クレアチンの低下や乳酸の増加は認めず, 脳細胞の代謝異常または脳機能の低下を示すとされるN-アセチルアスパラギン酸 (NAA) の相対的な低下のみがみられた.この結果から, TGAの発症には必ずしも一過性脳虚血発作と同様なatherothrombo-embolicな機序による脳血流低下のみが関与するものではないことが示唆された.
著者
安廣 重伸 佐藤 俊彦 田中 啓充 上野 亜紀 鶴岡 浩司 西江 謙一郎 柚上 千春 江戸 優裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab0709, 2012

【はじめに、目的】 臨床場面において、足底板やテーピング等を用いて腓骨の操作をすることで、下肢の前額面上の運動をコントロールする場面を経験する。これに関する先行研究では、上島ら(2007)は入谷式足底板での外果挙上が、歩行時の骨盤の外方加速度を減少させたと報告し、腓骨の挙上が近位脛腓関節を介して脛骨を内上方に向って押し上げる力になった事をその要因として挙げている。このことから、腓骨の挙上または下制は、脛骨を介して膝関節の内外反運動に影響を及ぼす事が考えられる。そこで本研究では、膝の内反ストレスによって進行する(Andriacchi ら2004)とされる変形性膝関節症(以下膝OA)の症例を対象に、レントゲン画像を用いて脛骨に対する腓骨の高位と膝関節のアライメントの関係性について検討を行ったので報告する。【方法】 対象は2009年8月から2011年10月に当院で内側型膝OAに対し、片側人工膝関全置換術(以下TKA)を施行した症例のうち、レントゲン画像の使用に同意を得る事の出来た20名(40肢、男性5名、女性15名、平均年齢75±7.1歳)とした。対象者のTKA施行に際して医師の処方の下、術前検査の目的で放射線技師により撮影されたレントゲン画像(膝関節正面像・側面像・下肢全長の正面像)を用いて、以下の項目を計測した。計測項目は、腓骨下制量・腓骨長・Femoro-Tibial Angle(以下FTA)・Femoral Condyle-Femoral Shaft angle(以下FC-FS)・Tibial Plateau-Tibial Shaft angle(以下TP-TS)・Femoral Condyle-Tibial Plateau angle(以下FC-TP)・Posterior Proximar Tibial Angle(以下PPTA)とし、1mm及び1度単位で計測した。尚、腓骨下制量は、腓骨長軸に対して腓骨頭の外側隆起部及び脛骨高原最外側部からの垂直線をひき、成された2つの交点の距離として定義し計測した。そして、体格の影響を排除する目的で、腓骨下制量を腓骨長で除し、更に百分率で表すことで、腓骨下制率を算出して分析に使用した。統計学的分析にはFTA・FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの各々における左右差と腓骨下制率に関係があるかを対応のあるt検定を用いて検討した。尚、各項目において左右差がなかった対象者は群間比較からは排除して分析した。また、各膝関節アライメントと腓骨下制率に関係があるかをPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は危険率5%(p<0.05)で判定した。【説明と同意】 対象者には本研究の主旨を説明し、レントゲン画像の使用に書面にて同意を得た。【結果】 計測の結果、腓骨下制量は28.1±4.2mm・腓骨下制率は8.7±1.2%であった。膝関節アライメントの指標として挙げた、FTAは181.4±3.9度・FC-FSは83.6±3.2度・TP-TSは94.5±3.5度・FC-TPは3.9±2.1度・PPTAは81.3±4.8度であった。膝関節アライメントの左右差と腓骨下制率の関係については、FTAの左右差による分類において有意な群間差を認め、FTAの大きい側の腓骨下制率は大きいことが分かった(p<0.01・n=19:1名は左右差なし)。FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの左右差による分類ではと腓骨下制率に群間差は認められなかった。膝関節アライメントと腓骨下制率との関係については、FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの全項目において有意な相関を認めなかった。【考察】 本研究の結果、左右の比較においてはFTAと腓骨の高位に関係が認められた。上島ら(2007)の研究を踏まえると、FTAの増大により腓骨が下制させられるのではなく、腓骨を上位で維持できなくなる事で、歩行時の膝関節外方化の是正が困難となり、内反ストレスが増大することで、FTAが増大すると考える。即ち、腓骨の挙上によって膝関節の内方化、腓骨の下制によって膝関節の外方化を促せる可能性があると考える。このことから、FTAなどの骨形態の変化がない場合でも、膝関節の内外反ストレスをコントロールする目的で腓骨の高位を操作することは効果が期待できると考えている。【理学療法学研究としての意義】 本研究により腓骨の高位とFTAに関係が認められ、腓骨の挙上は歩行時の膝関節の外反運動を生じさせ、下制は内反運動を生じさせると推察された。膝関節のアライメントを評価・治療する際、腓骨の高位を把握する事は重要であり、特に今回対象とした膝OAにおいては臨床的に有用と考える。
著者
小澤 俊治 雨宮 毅 佐藤 俊彦
雑誌
山梨県果樹試験場研究報告 (ISSN:03893588)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-9, 2000-03

山梨県果樹試験場では、農林水産省の指定試験地として1951年からブドウの育種事業を開始し、わが国の気象条件下でも容易に栽培が可能で高品質の生食醸造兼用品種の育成を図ることを目標に事業を進めてきた。その成果として、'サマーブラック'を登録するに至ったので、その育成経過及び特性を報告する。本品種は1968年に'巨峰'と'トムソン・シードレス'を交雑した実生11個体から選抜したものである。1969年に播種、育苗後、1970年に個体番号8255として圃場に定植した。1990年に一次選抜を行い、1992年より'山梨35号'の系統名で第8回系統適応性検定試験に供試した。その結果、早生品種として着色や果実品質が優れることから、1997年8月19日に'サマーブラック'と命名、'ぶどう農林16号'として登録、公表された。1997年3月31日に種苗法に基づく品種登録の申請を行い、1999年3月18日に出願公表された。樹勢は強く、新梢の伸びは旺盛である。樹冠の広がりは大きく、樹勢いは強い。葉の大きさは大きい。花穂は複穂円筒形で、1新梢あたり2花穂を着ける。花は完全花(両性花)であり、三倍体品種である。満開期は山梨市で6月中旬で、花振るいは多い。防除は'巨峰'に準じた散布で問題となる病害虫は認められない。自然状態の果房は、有岐円筒形であり、着粒密度は中である。果粒の形は扁円~円で、大きさは3g程度である。満開時及び満開10日後のジベレリン50ppmの処理によって、7~8gに果粒が肥大し、400g前後の果房となる。果粒は紫黒色で着色は良好であり、果粉は多い。果皮は厚く、はく皮性はやや困難である。肉質は塊状と崩壊性の中間であり、フォクシー香を有する。果汁の糖度は20~21°Brixと高く、酸含量は0.5~0.6g/100mlで食味は濃厚である。裂果は少ない。果梗と果粒の分離性は容易であり、果実の日持ちは短い。収穫の目安は糖度19°Brix以上、酸度0.6g/100ml以下、糖酸比30以上とする。
著者
今城 周造 佐藤 俊彦
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-11, 2004-03-31

本研究の目的は喫煙行動の規定因の検討であった。計画的行動の理論によれば行動意図は、行動への態度や、主観的規範、統制認知の影響を受ける。本研究では、これらの変数を測定する質問紙調査を行った。対象者は大学生159人(男75、女84)であった。その結果、喫煙への態度には喫煙者と非喫煙者の間に差はなく、両者とも喫煙をむしろ否定的に捉えていた。一方、喫煙者は非喫煙者よりも、重要他者から喫煙を是認されていると感じていた。また喫煙者は喫煙を容易なことと認知するが、非喫煙者はむしろ困難と認知していた。階層的重回帰分析の結果、行動意図と統制認知の間には強い正の相関があった。態度と主観的規範はいずれも行動意図と正の相関を示すが、その関係は弱い。これらの結果は、計画的行動の理論が、喫煙行動の理解と予測に有効な道具となりうることを示す。また喫煙・禁煙に伴う困難さが、分煙・防煙の成否を左右する可能性が示唆された。
著者
佐藤 俊彦
出版者
東北文化学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題では,高血圧ラットSHRの驚愕反応に関する行動的特徴と,その生理学的基礎,特に循環器機能との関連を明らかにすることを目標としている。昨年度に行ったSHRとWKYの驚愕反応と恐怖増強(fear-potentiated startle, FPS)を調べる実験について,追加実験を行って,データを追加した。各セッションの前半と後半の試行とで別個に平均を集計したところ,恐怖条件づけ後24時間では,セッション前半の試行のFPSの指標(%FPS)には有意な系統差はなく,後半でのみ,SHRの%FPSが大きかった。この結果より,SHRの情動的性質について,情動的な興奮性が一般に高まっているというよりはむしろ,情動喚起刺激に対する慣れが遅いと推定できた。この研究成果については平成18年10月に開催された北米神経科学会(米国Atlanta)にて発表するとともに,驚愕反応ならびに恐怖増強の世界的権威Michael Davis教授のラボ(Emory大学)を訪問し,実験手法についてアドバイスを受けた。また,同年11月の日本心理学会においても,SHRの驚愕反応に関する研究成果の発表を行った。今年度には新たな実験も開始した。昨年度からの予備実験の結果を踏まえながら,Davis教授から受けたアドバイスも参考に実験をデザインした。血管拡張薬ヒドララジンの静脈内投与により,血圧の低下したSHRでは,FPSの程度が有意に減少していた。また,少数の個体に対して,別種の降圧剤を投与したところ,同様にFPSが小さくなった。SHRで比較的大きなFPSがみられる生理学的背景として,心臓血管系の高い機能水準が寄与している可能性が示された。この成果は平成19年度の国内外の学会において発表するとともに,論文投稿を準備している。なお,本研究における動物飼育と実験実施にあたっては,東北大学文学研究科心理学研究室の設備を借用した。