1 0 0 0 深頸部膿瘍

著者
西野 宏
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.158-163, 2015-02-20

POINT ●深頸部膿瘍は,気道狭窄,縦隔炎,敗血症などの合併症をきたし,死に至る可能性がある。頸部の腫脹と圧痛,皮膚の発赤を認めた場合,深頸部膿瘍の存在を強く疑う。 ●発症の原因は歯性感染,抜歯,扁桃周囲膿瘍,唾石症による顎下腺炎,耳下腺炎,外傷(異物,内視鏡検査)がある。 ●造影CTの撮影範囲は頸部から横隔膜のレベルまで撮影する。 ●広域の感受性を示す抗菌薬を投与し,膿瘍腔の開放排膿処置のタイミングを逃さない。
著者
中川 尚志
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.145-148, 2010-04-30

Ⅰ アブミ骨筋反射の機序1,2) 大きな音で中耳内にあるアブミ骨筋が収縮する反射をアブミ骨筋反射(stapedius reflex:SR)と呼ぶ。SRは伝音系の振動を抑制し,内耳への音入力を調節する。反射弓は求心路が蝸牛神経(聴神経)で遠心路が顔面神経である。また同時に三叉神経を遠心路として鼓膜張筋も収縮する。これらの反射を合わせて音響性耳小骨筋反射(acoustic reflex:AR)という用語が使われている。ARの測定は音刺激によって生じる外耳道腔の静的コンプライアンスの減少をインピーダンス・オージオメトリーで記録したものである。インピーダンス・オージオメトリーは別章で述べられているので,詳細はそちらを参照いただきたい。ARで総称されているが,鼓膜張筋腱反射の閾値は高いため,実際に臨床で測定している反応は主にSRである。 図1にSRの経路および関係する場所を模式的に表した。SRの入力系は聴覚で,効果器はアブミ骨筋である。外耳と中耳からなる伝音系が音を蝸牛に伝え,蝸牛で音刺激が電気信号に変換される。音のラウドネスは蝸牛神経の発火数,神経インパルスで表現される。神経インパルスが閾値を超えると橋にある腹側蝸牛神経核に入力された信号が上オリーブ複合体を経由して,顔面神経核を刺激する。この結果,遠心路である顔面神経を通して,アブミ骨筋が収縮する。アブミ骨筋が収縮するとアブミ骨の可動性が低下し,アブミ骨に連続する耳小骨および鼓膜のスティフネスが増加する。外耳道腔の一部を形成する鼓膜のスティフネスが増加した結果,外耳道腔の静的インピーダンスが増加する。インピーダンスはスティフネスの逆数であるコンプライアンスで測定しているため,AR検査ではコンプライアンスの減少,下向きの変化として記録される。静的コンプライアンスは個人差が大きいため,AR検査は相対的なコンプライアンスの変化をみる質的な検査である。
著者
長谷川 純 川瀬 哲明 菊地 俊晶 小林 俊光
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.905-909, 2005-11-20

Ⅰ.はじめに 後天性中耳真珠腫の発症機序は単一ではない。過去には,種々の成因に関する学説が呈示されてきた。内陥説1~4),基底細胞乳頭状増殖説5),穿孔説6)などがその代表である。このなかでは内陥説が広く支持されるに至っているが,内陥から真珠腫が形成されるためには,表皮ならびに皮下組織の増殖・分化にかかわる各種サイトカインの関与が必要と考えられている7,8)。 鼓膜内陥の原因としては,耳管機能不全が想定しやすく,過去にも多くの耳管閉塞実験が行われた9,10)。一方,本庄(1987)11)は,陥凹型真珠腫では耳管の通気圧は正常かむしろ低いものが多く,耳管の器質的狭窄はないことを指摘した。また,多くの症例が陰圧を能動的に解除できることから,Bluestone(1978)12)のいう機能的閉塞も少ないことを述べた。森山(2004)13)は後天性真珠腫の耳管機能について,音響法では正常型が約半数と最も多かったが,健常者に比較すると狭窄型が多かったとしている。 真珠腫の成因説として発想を転換したものに,1970年代後半にMagnusonら14)が提唱した鼻すすり説がある。耳管閉鎖障害(耳管開放症)患者では,嚥下やあくびの際に耳管が開放状態となると,耳閉感や自声強聴などの不快感が生じる。このときに「鼻をすする」ことにより中耳腔の陰圧化に続いて「耳管のロック」が起こり,不快感が取り除かれる(図1)。このとき,鼓室内陰圧は時に1,000mmH2Oにも達し,これが鼓膜の内陥やポケット形成を引き起こし,真珠腫を発症する基盤となるとの考えである。 筆者らもこの説に注目し調査を行ってきた。その結果,真珠腫症例全体の約25%にMagnusonの説を裏付ける鼻すすり癖が認められ15),上鼓室陥凹例でも20%に鼻すすり癖を認めた。もちろん,鼻すすり説以外にも真珠腫の成因は複数存在する可能性があるものの,鼻すすり癖は真珠腫の重要な成因の1つであると考えられる。 本稿では,後天性真珠腫の耳管機能について耳管閉鎖障害の観点を中心として述べ,鼻すすり癖を有する真珠腫(以下,「鼻すすり真珠腫」)の取り扱いおよび治療について述べる。
著者
矢部 はる奈
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.216-219, 2017-03-20

POINT ●咽喉頭異常感の要因は多岐にわたり,胃食道逆流の関与が半数程度とされる。 ●特に女性に生じやすい要因としては,唾液分泌量低下による口腔内乾燥がある。 ●悪性疾患を含めた器質的疾患を見逃してはならない。
著者
太田 康 加我 君孝 小山 悟 桜井 尚夫 小川 恵弘
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.67, no.13, pp.1132-1134, 1995-12-20

はじめに 顔面神経管裂隙とは側頭骨の顔面神経管にしばしば存在する骨欠損部であり,中耳手術の際の顔面神経麻痺の原因の1つでもあり,中耳炎の顔面神経への炎症の波及路ともいわれている1,2)。成人側頭骨における顔面神経管裂隙の病理組織学的検討の報告はあるが3〜5),新生児あるいは乳児における顔面神経管裂隙についての報告は極めて少ない4)。今回われわれは,帝京大学耳鼻咽喉科学教室の側頭骨病理コレクションの新生児側頭骨5例8耳の顔面神経管裂隙の出現頻度とその部位について検討したので,ここに報告する。