著者
金城 厚
出版者
沖縄県立芸術大学
雑誌
沖縄県立芸術大学紀要 (ISSN:09188924)
巻号頁・発行日
no.15, pp.77-83, 2007

本稿は、筆者が2006年4月から7月までロンドン大学に滞在して行った特別研修の報告である(音楽学部特別研修制度についての申し合わせ第11項の規定による)。研修によって得た多くの知見や情報のうち、特に、エリック・クラーク、ニコラス・クック共編『実証的音楽学:目的、方法、展望』は筆者にとって多くの刺激があり、今後の本学における民族音楽学の教育にも有用であると思われるので、同書の紹介を中心に、欧米の潮流や日本での現状を踏まえつつ、これからの民族音楽学の方法論について考えを述べたい。
著者
波平 八郎
出版者
沖縄県立芸術大学
雑誌
沖縄県立芸術大学紀要 (ISSN:09188924)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.189-205, 2006-03-31

The purpose of this paper is to compare Shushinkaneiri and Ukiyozoshi (entertaining stories of Edo period). Although a large number of studies have been made on the influences of Yokyoku on Shushin kaneiri, little is known about those of Ukiyozoshi. In conclusion, (1) the outline of Shushin kaneiri resembles those of Ukiyozoshi tales, (2) Nakagusuku Wakamatsu is described as a wakashu (young man) who demonstrates shudo (traditional Japanese male love).
著者
中村 マリポール
出版者
沖縄県立芸術大学
雑誌
沖縄県立芸術大学紀要 (ISSN:09188924)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.97-110, 2006-03-31

邦楽はまったく日本だけの風土や言語や習俗の生んだ表現方法でできていて、限られた範囲の人々に訴えている。日本人の好む高級な邦楽は、能楽(謡曲)や長唄や義太夫等で、数百年前に日本で完成している。民謡は今も素朴な形で各地に残っているし、民謡から変化した俗うたや小唄は三味線や太鼓の伴奏とともに日本人の娯楽生活に親しまれている。これに対して明治初年以来学校の教科に洋楽系の唱歌(Songの、明治に作られた訳)が採用されて普及したために唱歌風の俗謡(ぞくよう)や流行歌が生まれた。また吹奏楽やジャズやそのほかの軽音楽が輸入されて大衆の歓迎を受け、今では西洋系の曲が日本の通俗音楽に大きい地位を占めている。洋楽は欧米諸民族の民謡や民舞を基にしている。日本人の好む洋楽は交響曲、オペラ、ピアノやヴァイオリン、室内楽、合唱等で、欧米人の好みとだいたい同じである。ラジオの放送時間や、レコードの製造ならびに販売高や、演奏会の開催数から推すると、今の日本では邦楽よりも洋楽が遥かに優位にある。しかしながら、洋楽、邦楽の演奏者はもとより、聴衆も別々である。洋楽と邦楽の両方に対して同程度の理解力を持つ聴衆は、稀であり、これら両方をよく知っている職業的演奏者は皆無に近い。しかし、今の日本では芸術的鑑賞音楽として、洋楽(西洋から輸入された音楽)と、邦楽(日本だけで育った音楽)の両方を持っていて、ほぼ独立に日本の社会に並び立っている。本来の日本人には邦楽しか無かった筈だが、現在に至る変化はどういう経路で起きたのだろうか?幕末には幕府の弱体化により、幕府や各地の諸藩が兵制の改革を最大の目標に掲げ、軍隊の最新式の洋式化を行った。また明治創設期には新政府は軍の創設およびその近代化に最大の力を注いだ。操練には西洋軍学も自ずと取り入れる事になった。これが日本に洋楽が根付いた最大の要因と考える。軍への西洋音楽の効果を認識した政府は、次に学校教育に音楽を取り入れることを始めた。学校数育が、根付いた音楽をさらに全国に普及させた要因と考えられる。西洋の宗教音楽も盛んに入ってきてはいたが、西洋宗教にかかわる人達の総人口に占める割合は極小数であったから、西洋音楽が根付くための影響は極僅かであったと考えられる。