- 著者
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鈴木 由美
- 出版者
- 桐生短期大学
- 雑誌
- 桐生短期大学紀要 (ISSN:13424076)
- 巻号頁・発行日
- no.18, pp.79-85, 2007
看護職が暴力問題を扱うようになってから久しいが, DVはもはや健康問題であることが背景にあり,モラル・ハラスメントも健康問題である.看護者は自己の生活体験に関わらず,被害者を支援することが望まれるが,支援者に関わる方法を学ぶ前に, DVの認識を深めることが早道であるといわれている. DVは身体的な暴力を伴う場合は緊急性や重症度が高く,モラル・ハラスメントの場合は主に言葉や態度による暴力であるため,重大視されないことが予測される.モラル・ハラスメントがDVと同様に健康問題であることから,看護職の認識や看護職の根底にある夫唱婦随などの日本的な男女間の考えや男女間の言葉や態度による暴力をどのように解釈するかを知る目的で調査をおこなった.モラル・ハラスメントの調査で看護職416人を対象とし,有効回答数は377人(有効回答率89.9%)であった.モラル・ハラスメントでは客観的な証拠に乏しいため,第三者が加害者に寛大であるとき,被害者は二次被害をこうむると考え,調査では男性に対する寛大度に焦点を当てた.モラル・ハラスメントという言葉を聞いたことがある者は163人(43.6%)であった. DVは医療者の誰もが知っているが,モラル・ハラスメントは半数以上が知らなかった.また夫婦間の精神的暴力10項目に対して,対象者の年代,結婚暦,キャリアなどの背景による相違があるとすれば,年代,キャリア,結婚暦が長いほうが伝統的な夫唱婦随を支持する傾向があったが,大差はみられなかった.また結婚生活の背景として,既婚の対象者では9割以上が自身の結婚生活を普通以上であると評価をしたが,このことはむしろ暴力に対するバイアスが生じるというより,自己の体験によるバイアスがかかる可能性も少ないと考えられる.本来,看護者は自らの生活背景が,疾病や支援に影響しないように律することが期待されることから,生活背景が安定していることが望ましいからである.