著者
陶山 二郎
出版者
茨城大学人文学部
雑誌
茨城大学人文学部紀要. 社会科学論集 (ISSN:13440160)
巻号頁・発行日
no.61, pp.91-101, 2016-02

本稿では、いわゆる「高知白バイ事件」の目撃証言を検討した。本件は、スクールバスの運転手が駐車場から車道に侵入して中央分離帯の前から右折して反対車線に合流しようとしていた際に、右方から進行してきた白バイと衝突し、同白バイの隊員が死亡したという事件である。この事件では、過失を認める自白があるものの、その自白は真実ではないと争われ、現場のスリップ痕等の由来も争われている。他方、目撃証言については、対向車線を走っていた白バイの目撃証言と、その他の目撃証言が鋭く対立している。本稿では、この目撃証言に絞って、特に公判廷における対立する各目撃証言を検討することにより、本件における目撃証言の信用性評価の問題点を明らかにしようとしたものである。
著者
馬渡 剛
出版者
茨城大学人文学部
雑誌
茨城大学人文学部紀要. 社会科学論集 (ISSN:13440160)
巻号頁・発行日
no.61, pp.103-123, 2016-02

本論は、都道府県議会における特別委員会の設置状況から地域の政策課題について俯瞰するとともに、歴史的な変遷について明らかにするものである。特別委員会は、常任委員会の所管に属さない特定の案件や幾つかの常任委員会をまたぐ案件、早急な対応が必要な事件に応じて設置されている。またアドホックに設置される特別委員会は、各議会でほぼ画一的な所管で常設されている常任委員会と異なり、臨機応変な設置が可能であり、地域の政策課題を把握する指標となりうる。
著者
新田 滋 ニッタ シゲル NITTA Shigeru
出版者
茨城大学人文学部
雑誌
茨城大学人文学部紀要 社会科学論集 (ISSN:13440160)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-45, 2010-09

本稿は、「価値」なるものが、形而上学的あるいは物神崇拝的に存立する商品物神、貨幣物神の機構を解明することを主な課題とする。資本主義的な富は、資本循環における諸形態として貸借対照表に表される。そこに資産価値なるものが現れる。このような抽象段階になってはじめて、商品からも貨幣からも分離された価値なる対象性が社会的抽象の産物として実体化されるに至る。資産価値の現象形態である商品の価値形態、貨幣形態、資本形式は、廣松渉がいうように「抽象的人間労働-商品価値」という"物象化的に倒錯" された共同主観的な関係構造として存立している。しかし、交換関係は非対称的なものであり商品は貨幣への「命がけの飛躍」につきまとわれている。貨幣物神を括弧に入れられると考えるところに、古典派・新古典派理論、ひいてはロック的な「自己労働の自己所有」というアングロサクソン的な私的所有観のイデオロギー的倒像が成立するのである。