- 著者
-
中野 加奈子
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, pp.221-235, 2007-03-01
退院援助は、日本に医療ソーシャルワークが導入されて以来取り組まれてきた医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)の主要な業務の一つである。これまでの歴史の中で、MSWは、社会問題としての生活問題の解決に取り組む実践を積み重ね、実践の中から退院援助の理論を構築してきた。しかし一方で、これまで「退院問題」「退院計画」「退院援助」という用語は曖昧な使われ方をしており、さらに、医療制度の様々な「改正」によって、医療ソーシャルワークが機能し得ない状況が起こりつつある。本論では、上記の用語の概念整理を行い、「退院援助」において、MSWが患者・家族の様々な生活問題を捉え、それらの解決・調整をしながら、患者・家族の主体形成にも関わる援助を行っていることを明らかにした。さらに、今後は、生活全体を捉える視点からの生活問題のアセスメントや、退院援助対象者のスクリーニングの「標準化」が必要であり、さらに退院後のフォローアップが必要となることを考察していくものである。