- 著者
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小役丸 孝俊
- 出版者
- 日本応用糖質科学会
- 雑誌
- Journal of applied glycoscience (ISSN:13447882)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.4, pp.235-244, 2008-10-20
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
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メイン部とキャリヤー部からなるいわゆるスタインホール型(SH)段ボール製造用澱粉接着剤の高速接着時の必要物性を明確にするために,85℃で高濃度澱粉糊化液のせん断ひずみ初期のせん断弾性率,最大せん断応力値,せん断応力パターンと粘度をトウモロコシ,ハイアミローストウモロコシ(ハイロン-5),ワキシートウモロコシ,小麦,馬鈴薯,甘藷,タピオカの7種の澱粉について測定した.7種澱粉懸濁液糊化液の物性は澱粉種により大きく異なり,これら懸濁液糊化液と,7種の各澱粉をメイン部に使用してキャリヤー部にトウモロコシを用いたSH接着剤糊化液との85℃での物性比較から,SH接着剤の糊化液物性はメイン部澱粉懸濁液糊化液物性を大きく反映し,キャリヤー部糊化澱粉水溶液の添加はこれらの物性を増強した.せん断弾性率と最大せん断応力値は澱粉種により差異があった.また,澱粉濃度の増加により,85℃7種澱粉懸濁液糊化液の各せん断弾性率と最大せん断応力値は指数関数的に増加した.さらに,糊化液のせん断弾性率が表す弾性と最大応力までのひずみ量が表す柔軟性や流動性は個々の澱粉種により澱粉濃度増加による変化が特徴的に異なり,四つのタイプに分類された.弾性率が高い順序と最大応力までのひずみ量が小さな順序で整理すると,弾性率が高く最大応力までのひずみ量が少ないハイロン-5と,弾性率がやや高く最大応力までのひずみ量がやや少ない小麦・トウモロコシと,弾性率がやや低く最大応力までのひずみ量がやや大きな馬鈴薯・甘藷・タピオカと,弾性率が低く最大応力までのひずみ量の大きなワキシーと異なる四つのタイプに分類された.その結果,SH澱粉接着剤糊化液物性は使用する澱粉種によりその物性が異なることがより明白となった.また,弾性率は糊化澱粉粒の形状保持が良いハイロン-5や地上澱粉で高くなり,最大応力までのひずみ量はワキシーや地下澱粉で大きくなった.しかしながら,7種澱粉をメイン部に用いるSH接着剤にて片段試料と表ライナー原紙を170℃のホットプレートで加熱貼合して,ただちに剥離した際の初期接着性には,澱粉種による大きな相違はなかった.これらのことから,初期接着性には澱粉接着剤糊化液の澱粉粒構造の存在や弾性率の高さや最大応力値が最も優先する条件ではないと考えられた.