著者
北本 朝展 小野 欽司
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.7-22, 2000-12-20
被引用文献数
2

本論文の目的は、気象学的知識と情報学的アプローチとを融合した台風雲パターンの時系列解析法を提案し、台風解析における熟練者の解析作業支援や、大量の台風画像からの知識発見などを実現することにある。そのための基礎となるデータセットとして、本論文では20,000 枚規模の台風画像コレクションを構築する。ここで台風画像とは、台風のベストトラックに記録された台風中心が地図投影画像中心に一致するように、台風周辺領域を衛星受信画像から切り出したものである。このようなラグランジュ的表現によって、台風雲システム全体の動きから台風雲パターンに固有の動きを分離できる。次に本論文では、台風雲パターンに特徴的な楕円形状を表現するための手法として、変形楕円を用いた形状分解手法を提案する。この結果を用いて台風の日変化の解析という台風解析の問題に取り組んだところ、本論文で提案する手法は、気象学的知見と一致するような、気象学的に意味のある情報を抽出することができた。
著者
北本 朝展 小野 欽司
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.15-26, 2001-03-30

本論文は、日本(国立情報学研究所)とタイ(アジア工科大学)の国際共同研究として進められているプロジェクト、すなわち台風画像データの収集および台風情報データベースの構築に関する報告である。過去の統計データによると東南アジア地域は、北西太平洋で発生する台風の約3分の1が通過する。この危険地域における台風災害を防止し損害を軽減するためには、台風解析と予報という問題に徹底的に取り組むことが重要である。本プロジェクトのユニークな点は、この問題に対して気象学の手法に基づく従来のパラダイムではなく、情報学の分野で発展したアイデアや手法を援用した情報学パラダイムに基づき、台風画像の大規模コレクションを研究の土台として挑戦するという点にある。本論文ではこのコレクションを主に気象衛星 GMS-5「ひまわり」の衛星画像から作成する。ただし GMS-5 を用いて東南アジア地域を観測する場合、衛星画像の実質的な解像度が低下し、雲形状が歪むという欠点が避けられない。そこで本論文では、別の種類の衛星画像、すなわちタイで受信する NOAA 衛星画像を組み合わせることにより、お互いの欠点を補完しつつ高品質な台風画像が生成できることを示す。さらにこのような大量の衛星データをネットワーク経由で交換するための基盤として、日本とタイの間で運用される SINET 国際回線が有効であることを述べる。
著者
柴山 盛生
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-70, 2001-03-30

本稿では、論文の引用度分析に用いられている米国ISIデータベースに収録されている学術雑誌の書誌情報を通して、自然科学との比較を行いながら、学術雑誌発行の国際的状況と分野間の関連性を分析して、人文・社会科学における研究動向を調査した。この結果、人文・社会科学では領域によって国別シェアや発行者の形態など雑誌の発行状況が異なっていることが分かった。また、自然科学との関連性においては、人文科学では結びつきは少ないが、社会科学は比較的結びつきが強いことが明らかになった。さらに、ここでは結果の総括を行い、わが国の人文・社会科学の推進方策、即ち学術雑誌の発行という視点からの「国際化」や「連携」の意味について考察する。
著者
西澤 正己 孫 媛
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.51-60, 2003-09-30

新しい研究分野においては,従来の研究分野分類が現実の研究環境に整合しない局面が多く見られる.特に,他の分野との関連を深めながらその領域を広げている情報学では,その傾向が大きい.そこで,情報学分野の研究者約1800 名に対するアンケート調査をおこない,情報学の研究結果がどのような学術誌に投稿されているかを分析した.その結果,情報科学の3 細目分野を比べると,「計算機科学」は欧文学術誌に比較的多く投稿されるのに対して,「情報システム学」は60%以上が和文学術雑誌に投稿されるなど,投稿する資料の種類に大きな差があることが明らかになった.また,研究者が「権威がある」として挙げた論文誌とISI 社のJCR によるインパクトファクター(IF )の関係では,特にIF が高い雑誌のみが選ばれているわけではないことが判った.さらに,採録論文の分野の広がりとIF の間に相関があるものが多く,雑誌の評価をIF によって判断するのは注意が必要であることが判った.
著者
計 宇生 Ji Yusheng
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2001-03-30
被引用文献数
1

様々なサービスを同一の物理ネットワークで提供するような統合サービス網において、ネットワーク資源の有効利用と、サービス品質の保証のためにはネットワークに入るトラヒックに対して一定の規制を行うことが必要である。一方でエンドユーザにとって、ネットワーク側の規制を満たすためにはある程度品質を犠牲にしなければならないという矛盾が生じる。本論文では様々な特性を持つトラヒックに対するトラヒック規制がこれらトラヒックの品質に対する影響について検証する。その結果、シェーピングなどのトラヒック規制によって、指数分布をベースとするトラヒックに対しては一定の遅延を許せば多重化ノードにおけるキュー長を削減することができるが、自己相似性のようなより長い記憶性をもつトラヒックに対してのシェーピングは、理想的な効果が得にくいことが明らかになった。
著者
宮澤 彰 安立 眞理子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.81-91, 2001-03-30

1996年から2000年にかけて行われた標記プロジェクトの報告。日本の書誌ユーティリティであるNACSIS-CATの海外からの利用の試行プロジェクトとして、1995年にイギリスのプロジェクトについでチューリヒ大学日本学科図書館との接続を行った。キーポイントであるローカルシステムとしては、チューリヒ大学日本学科図書館が、マッキントッシュ上にデータベース管理システム4-th Dimensionを用いて自力開発したシステムを用いた。NACSIS-CAT接続用のソフトウェアにはNACPCを用い、ダウンロードデータからローカルシステムに取り込むシステムを完成させた。試行の開始から、ほぼ定常的使用にいたるまでは約3年を要した。この間の経緯、およびチューリヒ大学日本学科図書館からの中間報告、最終報告を含む。
著者
小島 秀一 高須 淳宏 安達 淳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
NII journal (ISSN:13459996)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.23-35, 2002-03-29
被引用文献数
6

Web上に散在する情報を扱い易くするための手段として,サイト上のページをグループ化するという方法を提案する.意味的に関連した文書をひとまとまりにすることにより,サイトの全体像をユーザへ提示することなどが可能となる.従来の文書の自動分類などでは文書間の類似度を利用して処理が行われているが,本手法ではページ間のリンク構造に着目してサイト内のページ集合をWebグラフとみなし,強連結成分をグループとして抽出することを試みている.またグループは階層的な構造をしているので,その階層構造を抽出するために強連結成分の分割を行っている.