- 著者
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孫 媛
根岸 正光
宮澤 彰
大山 敬三
西澤 正己
- 出版者
- 国立情報学研究所
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
産官学の研究連携に関して,企業が先導役を果たすNational Systems of Innovation(NSI)モデルに代わり,Triple Helix(三重螺旋)モデルが国際的に注目されるようになっている。本研究は,産官学問の連携活動を反映すると考えられる産官学の共著論文データに注目し,その分析を通してTriple Helix的連携の浸透の実態を実証的に明らかにすることを目的とする。まず,日本の学会誌論文を対象とした「引用文献索引データベース」(CJP)を用いて,名寄せ,所属機関の同定およびセクター分類方法の検討等を行った上で,日本の研究ネットワークの実態分析を試みた。とくに,産学連携関係からみた各大学の特徴・類似度,大学に対する企業の研究依存度,産学連携が盛んな上位大学および企業の個別性を重点的に分析した。和文論文の共著分析として初めての研究であり,今後の研究可能性を示す役割も果たしたと考える。つぎに,米国の引用索引データベース(NCRJ)を用いて,国際・国内雑誌への投稿論文に基づく比較・分析を行った。その結果,企業と大学の協力関係は対等とはいえず,大学側から見たときの企業の役割の重要さは,企業側から大学を見るときのそれに及ばないことが判明した。1995年前後を境として大学が企業との共同研究から離れる様相も明らかになった。また,企業の基礎研究離れ,企業にとっての国内学会誌の役割の大きさ,産学連携の取り組みにおける大きな分野差・地域差,産学連携が特定の地域に集中する趨勢が近年一層強まっていることなども明らかになった。これらの成果は国際・国内学会で発表したほか,国際・国内学術雑誌にも投稿し,内外の研究者との意見交換・情報発信を積極的に行った。わが国の科学技術政策を論じるために,本研究のような統計的分析,計量的評価を地道に展開する必要があると考え,これまでの成果を踏まえて,今後さらにさまざまな観点からの研究を継続する予定である。