著者
及川 康 片田 敏孝
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.66-73, 2015

<p>2013年5月に中央防災会議の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループは、「南海トラフ巨大地震対策について」と題する最終報告において「地震予知は一般的に困難である」とする立場を表明した。本稿では、このような「予知は困難」とする政府見解が住民にどのように受け止められる可能性があるのかについて、アンケート調査に基づき検証を行った。</p><p>曖昧さを嫌って物事を二律背反的なものとして思考しやすい住民の心理傾向を前提とするならば、多くの住民は"予知の三要素(時期・規模・場所)"を具体化に明確化してくれる情報を望む傾向にあるものと考えられ、そのような要望に直接的に応えてくれる可能性を秘めた従来の地震予知という制度は、原則的には大きな期待とともに受容される可能性が高いと言える。しかしながら、このたびの「予知は困難」とする見解は、そのような住民の感情とは基本的には逆行するものであると言え、ともすると否定的な反応を示す住民が少なくないことも想定され得る。</p><p>インターネット調査という制約下であることから解釈には注意を要するものの、本稿で検証に用いた回答者集団においては、否定的な反応を示す回答者が大勢を占める状況ではなく、肯定的反応と否定的反応の回答者が混在する状況となっていた。また、曖昧さを嫌って物事を二律背反的に捉える心理傾向が強い回答者ほど、「予知は困難」とする見解に対する否定的反応が現れやすいという傾向が示された。</p>
著者
山里 平
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.30-33, 2015 (Released:2021-04-01)
参考文献数
10
著者
首藤 由紀
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.71-76, 2016

<p>東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故により、福島県内の12市町村で避難指示が出され、約10万人を超える住民等が避難生活を余儀なくされた。これら被災地域の復興には、原子力防災も重要な課題である。</p><p>事故後、新たに設置された原子力規制委員会の定める「原子力災害対策指針」により、原子力災害対策重点区域の拡大、緊急事態区分や緊急時活動レベル(EAL)・運用上の介入レベル(OIL)の導入、30km以遠への広域避難など、我が国の原子力防災体制は大きく変化した。</p><p>全域避難となった8町村の中で最初に避難指示が解除された楢葉町では、避難指示解除までの間、帰町計画の中で「除染の効果」や「原子力発電所の安全確保」などを帰町判断の考慮要件として、学識者からなる委員会での検討・評価を踏まえて、帰町の判断に活用した。また、これら委員会の提言に基づいて、町独自の判断で原子力災害対策重点区域を定めた地域防災計画の修正を行うなど、事故後の原子力防災体制の変化に合わせつつも、被災を経験した地域としての教訓を反映した原子力防災体制の構築が進められている。</p><p>政府方針で平成29年3月までとされている避難指示解除に向けて、現在、各町村で帰還後に向けた原子力防災体制の検討等が進められているが、今後長期にわたる廃炉作業のリスクは不透明な部分もあり、被災を経験した地域としての原子力防災体制の構築が課題となっている。</p>