著者
ジェイムズ ノーマン 森本 祥子
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.70-87, 2013

<p>イギリスでは、19世紀以来、民間アーカイブズ(所有権が民間にあるもの)の保存を王立手稿史料委員会(Royal Commission on Historical Manuscripts)および全国アーカイブズ登録局(National Register of Archives)が担ってきた。現在はその責務は国立公文書館民間アーカイブズ・チームに引き継がれている。イギリスには民間アーカイブズ全体をカバーする法制度はないため、全国規模で集約した情報を元に、アーカイブズの類型に応じた法制度を活用しつつ、その保存と活用を支援することとなる。本稿では、こうした取り組みを紹介する。</p>
著者
松本 保
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.57-67, 2013

<p>国立国会図書館では、「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ構築プロジェクト」を行っている。東日本大震災に係る災害の記録を始め、発災前の被災地域の記録、復興過程の記録及び過去に発生した地震・津波・原子力発電所の事故の記録を積極的に収集・保存していく。また、国全体としての連携を実現するため、諸機関による収集・保存の呼び掛け・支援を行い、記録の所在情報など検索に必要な情報の集約を進めている。本稿では、その目標・基本理念、公開までに行ったコンテンツ構築の取り組み、東日本大震災アーカイブの概要、今後の課題について述べる。</p>
著者
古賀 崇
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.110-117, 2012

国際アーカイブズ評議会(ICA)の4年に1度の世界大会として開かれた、2012年のオーストラリア・ブリスベン大会の参加報告。筆者の関心に沿って参加したセッションに関するまとめや、国立公文書館のとりまとめで開催された日本からのセッション-東日本大震災からの、文書館・アーカイブズ面での復興事業の報告を含め-の紹介、ならびにICAの運営に関する年次総会などについて記述した。
著者
金 慶南
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-75, 2012

<p>2011年3月11日に起こった東日本大震災は、地震・津波・原発事故が同時に発生して、日本はもちろん、世界各国においても、「脱原発」か原発推進かが問われることになった。法政大学環境アーカイブズ資料公開室は、従来の環境政策・環境問題・環境運動に関する資料管理体制を活用して、「震災・原発アーカイブズ」を構築した。この記録化事業の特徴は次の通りである。</p><p>1:ドキュメンティング戦略として、収集範囲は東日本震災特に福島原子力事故と関連した報道記録と国内の原子力発電等関連した記録を含めて、国際的な原子力政策問題・運動に関わる資料までを視野に入れている。また、「環境アーカイブズ」は原発問題を含む市民活動資料を中心に、国際的な基準で整理・管理することを試みている。</p><p>2:インターネット時代の情報共有方法として影響力を持ちながらも、永続性の弱いウェブ上のデジタル資料をアーカイブズとして収集した。デジタル資料は、アーカイブズ学の新しいパラダイムとして、その収集・管理方案について、研究課題を提示している。</p><p>3:「震災・原発アーカイブズ」の構築を行いつつ、原資料供給者⇔アーカイブズ⇔研究需要者といった協力体制がつくられた。</p><p>4:従来の災害アーカイブズの構築は、災害経験を乗り越えることあるいは災害経験を活用する目的に特化していたが、今回の大震災・原発事故は、アーカイブズが地域で何ができるのか、その可能性を広く再考するきっかけとなった。</p>