著者
崔 元奎 金 耿昊 李 相旭 金 慶南
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.118-138, 2015-06-30 (Released:2020-02-01)

本稿では、大韓帝国末期から日本によって植民地化された直後の時期にあたる19世紀から20世紀初頭に韓半島で実施された土地調査事業に着目する。これまで本事業の過程を示す資料としては、慶尚南道金海郡庁で1980年代に発見されたものと、筆者が2000年に慶尚南道馬山市庁において見つけ出した昌原郡土地調査事業資料の存在が明らかになっているのみで、資料の発掘が進んでいないのが現状である。そこで本稿では、土地調査に関する本格的な研究を行う前に、昌原郡土地調査事業に関する資料を分析する。なかでも、帳簿の変化と事業推進過程、調査事業前後における帳簿の共通点と相違点を分析することで、この時期における土地調査事業の性格の一端を明らかにしたい。
著者
水野 直樹 藤永 壮 宮本 正明 河 かおる 松田 利彦 LEE Sung Yup 庵逧 由香 洪 宗郁 金 慶南
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日中戦争・アジア太平洋戦争期の植民地朝鮮の政治や社会・文化を理解するために必要な資料を国内外の図書館・文書館で調査・収集し、そのうち重要と認められる資料を選んでWEB上の資料集を作成した。これらのほとんどは、文書資料として残されているだけで、印刷されることがなかったため、一般市民のみならず研究者も閲覧・利用に不便をきたしていたものである。WEB上の資料集は、今後の歴史研究に利用でき、また広く歴史認識の共有にも役立つものとなっている。また植民地期とその直後に朝鮮に在住していた日本人の回想記・手記類についても、目次・著者略歴などのデータを整理してWEB上で提供することとした。
著者
金 慶南
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.62-88, 2011-11-30 (Released:2020-02-01)

本稿において筆者は、かつての帝国と植民地にまたがって記録が不均衡に残存する構造を分析するために,日本と植民地朝鮮の山林資源分野の行政決裁システムと原本の保存構造について検討した。その結果、法令、予算、人事に関する決定権限は日本の内閣にあり、主要な事項はすべて天皇の決裁を受けたことが明らかになった。これに伴い、関連する主要な記録の原本は全て日本の国立公文書館に所蔵されることとなり、韓国の国家記録院に残されている山林資源関連記録の原本は、そのほとんどが施行に関連する記録であることを示す。すなわち、朝鮮総督府記録が日韓に不均衡な形で残存することになったのは、戦争、日本人の引揚げなどによる廃棄・散逸も大きな原因だが、より根本的な理由として帝国と植民地の決裁システムにあることを指摘する。
著者
金 慶南
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-131, 2015-12-31 (Released:2020-02-01)

本稿の目的は、1910年から1952年まで、日本帝国の植民地支配とその戦後処理構造に対して、日本帝国と朝鮮植民地、GHQと占領地日本で行われた決裁構造と原本出所を明らかにすることで、記録史料学的な観点からアプローチすることにある。その結果、日本帝国政府と朝鮮総督府、GHQと従属的日本政府の上意下達式二重決裁構造によって、植民地支配と戦後処理に関する決裁原本はそれぞれ韓国、日本、アメリカ等に分散保存されることが明らかになった。これによって植民地支配とその処理問題を植民地時期・戦後を連続的に把握し、同時に、日本、朝鮮、米国という空間を総合的に考察することで、帝国と植民地・占領地記録をもっと構造的に再認識することが期待される。
著者
吉澤 文寿 太田 修 浅野 豊美 長澤 裕子 李 東俊 金 鉉洙 薦田 真由美 金 慶南 金 恩貞 李 洋秀 山本 興生 ミン ジフン 成田 千尋 李 承宰 李 洸昊 金 崇培
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

この研究では、日韓国交正常化問題資料の整理及び刊行作業を行った。そして、日本、韓国、米国などの公文書館、資料館で収集した資料を用いて、韓国からの研究者の協力を得て、研究会、パネルディスカッション、シンポジウムを開催した。その結果、日韓国交正常化交渉で議論された請求権および歴史認識問題に関する論点について、国交正常化以後の時期を含めた展開を視野に入れつつ、日米韓三国それぞれの立場から、相応の責任が生じているという一定の見通しを提示することができた。
著者
金 慶南
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-131, 2015

<p>本稿の目的は、1910年から1952年まで、日本帝国の植民地支配とその戦後処理構造に対して、日本帝国と朝鮮植民地、GHQと占領地日本で行われた決裁構造と原本出所を明らかにすることで、記録史料学的な観点からアプローチすることにある。その結果、日本帝国政府と朝鮮総督府、GHQと従属的日本政府の上意下達式二重決裁構造によって、植民地支配と戦後処理に関する決裁原本はそれぞれ韓国、日本、アメリカ等に分散保存されることが明らかになった。これによって植民地支配とその処理問題を植民地時期・戦後を連続的に把握し、同時に、日本、朝鮮、米国という空間を総合的に考察することで、帝国と植民地・占領地記録をもっと構造的に再認識することが期待される。</p>
著者
金 慶南
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-75, 2012

<p>2011年3月11日に起こった東日本大震災は、地震・津波・原発事故が同時に発生して、日本はもちろん、世界各国においても、「脱原発」か原発推進かが問われることになった。法政大学環境アーカイブズ資料公開室は、従来の環境政策・環境問題・環境運動に関する資料管理体制を活用して、「震災・原発アーカイブズ」を構築した。この記録化事業の特徴は次の通りである。</p><p>1:ドキュメンティング戦略として、収集範囲は東日本震災特に福島原子力事故と関連した報道記録と国内の原子力発電等関連した記録を含めて、国際的な原子力政策問題・運動に関わる資料までを視野に入れている。また、「環境アーカイブズ」は原発問題を含む市民活動資料を中心に、国際的な基準で整理・管理することを試みている。</p><p>2:インターネット時代の情報共有方法として影響力を持ちながらも、永続性の弱いウェブ上のデジタル資料をアーカイブズとして収集した。デジタル資料は、アーカイブズ学の新しいパラダイムとして、その収集・管理方案について、研究課題を提示している。</p><p>3:「震災・原発アーカイブズ」の構築を行いつつ、原資料供給者⇔アーカイブズ⇔研究需要者といった協力体制がつくられた。</p><p>4:従来の災害アーカイブズの構築は、災害経験を乗り越えることあるいは災害経験を活用する目的に特化していたが、今回の大震災・原発事故は、アーカイブズが地域で何ができるのか、その可能性を広く再考するきっかけとなった。</p>