著者
豊田 暁宏 柏女 霊峰 Akihiro Toyoda Reiho Kashiwame
雑誌
淑徳大学大学院総合福祉研究科研究紀要 (ISSN:18807755)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.67-85, 2022-09-30

本研究は,保育士離職防止のための公定価格における課題,課題克服のための施策について,社会福祉施設運営管理の視点から明らかにすることを目的とし,文献研究,インタビュー調査を行った。その結果,「保育士配置基準の改善」,「民間施設給与等改善費の見直し」,「ノンコンタクトタイムの保障」,「11時間開所問題の改善」の4点の改善,インタビューでは「ノンコンタクトタイムのための場所の確保」,「昇給財源の安定性の確保」の必要性が示唆された。増加分のノンコンタクトタイムや人件費の活用方法には法則性がある可能性が示唆され,活用方法の違いは,保育士配置基準に対して,保育士に余剰がある状態かどうかであった。配置基準に準ずる場合,残業等の補填として使用され,余剰がある状態で研修等の保育の質向上,賃金改善としての使用が想定される。このことから,特に保育士配置基準の改善が優先して求められることが示唆された。
著者
柏女 霊峰 Reiho Kashiwame
出版者
淑徳大学大学院総合福祉研究科
雑誌
淑徳大学大学院総合福祉研究科研究紀要 (ISSN:18807755)
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-24, 2017

本稿においては,まず,子ども家庭福祉における地域子育て家庭支援の定義を定め,その背景として確認すべき子どもの発達や保護者の育児環境について考察した。そのうえで,地域子育て家庭支援政策の経緯を振り返り,その意義について述べた。また,地域子育て家庭支援の理念と原理について整理し,最後に,今後の方向として,子ども家庭福祉分野における地域包括的・継続的支援の実現と深く関わる支援であると述べた。
著者
佐藤 俊一 Shunichi Sato
出版者
淑徳大学大学院総合福祉研究科
雑誌
淑徳大学大学院総合福祉研究科研究紀要 (ISSN:18807755)
巻号頁・発行日
no.27, pp.1-14, 2020

この小論は,ソーシャルワーカーの倫理の根源的課題を明らかにしようとするものであるが,同時に,それは現代の対人にかかわる専門職の共通する倫理課題となる。なぜなら,倫理とは,ある領域の専門職の行動規範ではなく良心の問題となるからである。この度改訂されたソーシャルワーカー倫理綱領の前文における3つのキイワーズ,人間としての尊厳,価値ある存在,平等の理解について,自明とされている考えを現象学の視点から明らかにし,ソーシャルワーカーが実践できるようにすることを試みている。続いて原理に示されている人間の尊厳と多様性の尊重,集団的責任,スピリチュアルな側面の実現のために人間の基本的な理解,個人と社会の両立する関係を検討し,根源的課題に取り組むためには,スピリチュアリティの覚醒がソーシャルワークの支援に必要となることを論じている。This essay attempts to clarify the fundamental ethical issues in social work, which can become common ethical concerns for modern interpersonal professions. This is because ethics is a matter of conscience, rather than a code of conduct for professionals in a certain field.This essay will address from the phenomenological perspective the three keywords explicated in the preamble to the revised Social Worker Code of Ethics — concerning human dignity, the existence of value, and understanding of equality — and attempt to shape them into implementable ideas for social workers. We examine to realize human dignity and respect for diversities, collective responsibility, spiritual aspect as shown in the principles by considering basic human understanding, coexisting personal and societal relationships and argue that the awakening of spirituality is necessary to support social work for addressing fundamental issues.