著者
井上 敦 一方井 祐子 南崎 梓 加納 圭 マッカイ ユアン 横山 広美
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.64-78, 2021-05-20 (Released:2022-05-21)
参考文献数
71
被引用文献数
1

本稿では,ジェンダーステレオタイプと理系への進路希望との関係を調べ,ジェンダーステレオタイプが理系選択の障壁になっているのかを考察した.2012 年に実施された「高校生と母親調査」のデータを用いて分析したところ,「男は外で働き,女は家庭を守るべきである」という性別役割分業に関するジェンダーステレオタイプを肯定した女子生徒に比べて,肯定も否定もしなかった女子生徒および否定した女子生徒は,理系を希望する確率が高く,統計的に意味のある差が確認された.一方で,「男性の方が数学や専門的な技術を使う能力が高い」という能力に関するジェンダーステレオタイプは,男女ともに,理系への進路希望とは統計的に意味のある関係は確認されなかった.また,理系科目の成績,親の学歴や世帯年収といった家庭環境も,理系への進路希望と統計的に意味のある関係を持っていることが確認された.性別役割分業をはじめとする社会全体に未だ根強い男女不平等観を解消することは,女子生徒の理系分野への進路選択の障壁を取り除くことにも大きく貢献するものと考えられる.
著者
井上 敦子 仲田 義啓
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.3, pp.137-140, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

サブスタンスPを代表とする神経ペプチドは,刺激に応じて一次知覚神経から遊離され,脊髄後角において二次神経に痛み情報を伝達すると同時に,末梢組織で遊離された神経ペプチドは,免疫担当細胞,肥満細胞,血管平滑筋細胞に作用して神経因性炎症反応を引き起こす.我々は,一次知覚神経の活性化の解析モデルとして脊髄後根神経節初代培養細胞(培養DRG細胞)を用い,サブスタンスPの動態(生合成と遊離)について炎症性メディエータの影響とその作用メカニズムを検討している.炎症反応により組織局所や神経支配する一次知覚神経のサブスタンスP含量は増加する.培養DRG細胞を炎症性サイトカインであるインターロイキン1βで処置すると,数時間でサブスタンスPが遊離され,数日間の処置で細胞内サブスタンP前駆体PPT mRNAレベルの増加が観察された.また,発痛物質でもあるブラジキニンで培養DRG細胞を前処置すると,カプサイシンによるカルシウムの取り込みを増加したことから,一次知覚神経の興奮性を促進することがわかった.また,数時間のブラジキニン処置でカプサイシンによるサブスタンスP遊離が増強された.インターロイキン1βとブラジキニンの長時間処置によるサブスタンスP遊離に及ぼす影響はシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬で抑制され,インターロイキン1βとブラジキニンにより培養DRG細胞においてCOX-2の発現誘導が観察された.サイトカインなどの炎症性メディエータは,種々神経ペプチドの動態に影響を及ぼすことによって炎症反応,炎症性痛覚過敏を引き起こすと考えられる.その作用機序および細胞内伝達経路を解明することは病的痛覚過敏の制御に極めて重要であると思われる.
著者
中村 泰陽 横井 輝夫 井上 敦史 滝井 里栄 加藤 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0573, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】コップでは飲水することは出来ないが、ストローでは飲水が可能な脳卒中後遺症者や認知症者がいる。しかし、ストローでの飲水の嚥下動態や誤嚥の危険性についての報告はほとんど見られない。そこで健常成人を対象に、表面筋電図、喉頭運動、呼吸軌跡の時系列的解析を用いてストローでの飲水の特徴を検討した。【方法】被験者は研究参加に同意が得られた学生10名。測定手順は鎌倉らの方法を参考にし、ストローの使用の有無の2条件で測定した。嚥下は口唇を閉じ、舌骨上筋群が収縮し、喉頭が前上方に移動することで始まる。そこで、口唇を閉じる口輪筋と舌骨上筋群に表面筋電図を、喉頭運動は喉頭を構成する甲状軟骨に圧電センサーピエゾフィルムを貼付し、呼吸軌跡はairflowセンサーを鼻孔に取り付けて測定した。ストローを使用しない条件では、椅子座位姿勢の被験者に「コップの水10ml全量を口に含み、測定者の“はい”の合図後3回の呼吸周期後に飲み込み、飲み込んだ後3呼吸はそのままの状態を保持するよう」依頼した。ストローでの飲水では、同様の手順で全量を一度にストローで吸い上げ、水分を口腔内で留める事なく嚥下するよう」依頼した。今回測定したパラメータは、嚥下性無呼吸を含む呼吸周期と舌骨上筋群と喉頭運動の活動持続時間、口輪筋の活動開始から舌骨上筋群活動開始までの時間など7項目である。統計処理はストロー使用の有無別にそれぞれのパラメータについてt検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。【結果】ストローを使用しない条件に比べストローでの飲水では、舌骨上筋群と喉頭運動の活動持続時間が有意に延長していた。またストローを使用しない条件では、舌骨上筋群と喉頭運動の活動は共に一峰性であり、ストローでの飲水では、両パラメータともに二峰性の活動がみられた。そしてストローを使用しない条件での一峰性の喉頭運動持続時間に比べ、ストローでの飲水の二峰目の喉頭運動持続時間は有意に短縮していた。呼吸軌跡は、ストローでの飲水では、吸気‐呼気‐嚥下性無呼吸‐呼気、及び吸気‐嚥下性無呼吸‐呼気の2通りの呼吸型が多く認められた。【考察】ストローを使用しない条件では嚥下相のみであるが、ストローでの飲水では、水分を吸い上げる相と、嚥下相の2相から構成される。その結果、ストローでの飲水では、舌骨上筋群と喉頭運動の活動持続時間が延長したものと考えられる。しかし、嚥下相であると考えられるストローでの飲水の二峰目の喉頭運動持続時間が、ストローを使用しない条件の喉頭運動持続時間に比べて有意に短縮していたことは、ストローを使用した場合、嚥下に要する時間が短縮することを意味していると考えられる。また、ストローでの飲水の呼吸軌跡は嚥下性無呼吸後呼気で再開され、誤嚥を予防する機制が働いていると考えられる。つまりストローでの飲水は、誤嚥への防衛機制が働く方法であると考えられた。
著者
一方井 祐子 井上 敦 南崎 梓 加納 圭 マッカイ ユアン 横山 広美
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.79-95, 2021-05-20 (Released:2022-05-21)
参考文献数
27
被引用文献数
1

世界的に見てSTEM分野を学ぶ女性の割合は低いが,その原因についてはよく分かっていない.本研究では,STEM分野に必要とされる7つの能力のジェンダーイメージの有無,およびこれらの能力がSTEMの6分野でどの程度求められるイメージがあるかを調べた.日本とイギリスでオンライン調査を実施した結果,日本とイギリスともに,「論理的思考力」と「計算能力」で男性的イメージが強く,「社会のニーズをとらえる能力」で女性イメージが強かった.分野別の能力については,日本とイギリスともに,物理学と数学で「計算能力」のイメージが強く,生物学では「豊富な知識量」のイメージが強かった.これらの結果は,各分野に特徴的な能力のイメージが国の違いを越えて見られる強固なイメージであることを示すものである.
著者
仲野 宏紀 明石 直子 和田 知未 井出 恭子 井上 敦介 宮部 貴識 山内 一恭
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.261-265, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
15

せん妄は終末期がん患者の30〜40%に合併し,死亡直前は患者の90%がせん妄状態にあるとされるが,治療抵抗性で,嚥下困難や静脈確保困難により薬物投与経路が制限される場合も多い.今回,終末期がん患者のせん妄に対しアセナピン舌下錠の使用を経験したので報告する.緩和ケアチームが介入し,アセナピン舌下錠を投与した患者6名を対象とした.アセナピンは,せん妄による不穏に対し,他の抗精神病薬が無効あるいは使用できないために選択され,明らかな有害事象なく一定の鎮静効果を認めた.全例が嚥下あるいは呼吸機能障害のために,制御困難な呼吸困難や窒息感を合併していた.アセナピン舌下錠は,内服や静脈確保困難な終末期せん妄患者において,せん妄による不穏制御の選択肢の一つになりうると考える.
著者
井上 敦子 仲田 義啓
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.351-361, 1998-12-01 (Released:2007-01-30)
参考文献数
46

There have been many efforts to develop novel antipsychotic drugs with improved clinical efficacy and reduced side effects such as extrapyramidal side effects and hyperprolactinemia. Recent evidences from studies on the effects of novel antipsychotic drugs such as clozapine on neurotransmitter receptors are prompting reconsideration of the dopaminergic hypothesis of schizophrenia. This paper gives an overview of the current understanding, including our data, of the effects of several antipsychotics on dopamine receptor subtypes. The recent cloning of dopamine receptors has revealed that multiple dopamine receptor subtypes are generated from at least five distinct dopamine receptor genes. Aripiprazole, a candidate for a novel antipsychotic, has an antagonistic activity against dopamine D2 receptors with a high affinity, but has a weaker potency to up-regulate D2 receptors than haloperidol in the striatum and inhibitory effects on D2-receptor binding activities and mRNA in the pituitary, when it is chronically administrated to rats. Thus the occupancy or influences in D2 receptors in the striatum are involved in the extrapyramidal side effects of typical antipsychotic drugs. These studies provide new leads to understand the pathophysiology and causes of schizophrenia and to develop more effective and safe methods of treatment.
著者
井上 敦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.9-12, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿の目的は, 親の数学のジェンダーステレオタイプと娘の自然科学専攻の関係を定量的に明らかにすることである. 2018年3月に実施したアンケート結果を用いて分析したところ, 「女性は男性に比べて数学的能力が低い」という質問に肯定的な回答をした母親の娘に比べて, 否定的な回答をした母親の娘は自然科学専攻の確率が高く, 統計的に意味のある差が確認された. さらに, 自然科学のなかでも特に高度な数学の専門性が要求される理工系専攻において, その傾向が強いことも確認された. 一方で, 父親の数学のジェンダーステレオタイプと娘の自然科学専攻の間には, 統計的に意味のある関係はみられなかった. これらの結果を踏まえて, 数学のジェンダーステレオタイプに関する母親のロールモデル効果の存在を指摘し, 求められる支援策を議論した.
著者
田中 直 服部 学 中村 和義 井上 敦裕
出版者
学研メディカル秀潤社
巻号頁・発行日
pp.1033-1035, 2021-07-25

インフルエンザや新型コロナウイルスのワクチン接種後に,FDG-PET検査にて腋窩リンパ節が高集積を示すことが知られている.今回,筆者らは,MRI検査のDWIBS(diffusion weighted whole body imaging with back ground body signal supression)像にて,新型コロナワクチン接種後に腋窩~鎖骨上リンパ節が高信号を示した1例を経験した.さらに,この経験を踏まえて,同じく新型コロナワクチン接種後の2名のボランティア撮像を行い,腋窩リンパ節の信号上昇を確認したので,併せて報告する.
著者
仲田 善啓 井上 敦子 杉田 小与里
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.61-68, 1999 (Released:2007-01-30)
参考文献数
56
被引用文献数
1 1

シグマ(σ)受容体は中枢神経系に存在し,ハロペリドールやコカインなどの向精神薬物がそのリガンドになりうること,精神分裂病患者で受容体数の減少および遺伝子の多型が観察されたことから,精神機能に関与していることが示唆されている.しかしσ受容体の生理的機能については未だ不明な点が多く,思索の域をでない状態であるといえる.σ受容体には2つのサブタイプ(σ1,σ2)が見い出され,σ1受容体はそのcDNAとゲノムが複数の動物種でクローニングされている.σ受容体の中枢神経系での機能を明らかにする目的で,モルモットおよびラットにハロペリドールを慢性投与し,σ受容体結合活性とσ1受容体をコードするmRNAを定量解析した.その結果,ハロペリドールは,σ1,σ2両受容体に同等の親和性を有しているにもかかわらず,慢性投与により,σ1受容体結合量は減少したが,σ2受容体結合量は変化しなかった.この結合量減少作用はモルモットにおいてラットより著しく大きく観察された.また,モルモットとラットにおいてσ1受容体mRNAはハロペリドール慢性投与により影響を受けないことが明らかになった.以上の結果より,σ1とσ2受容体はin vivoにおいて異なった機構により制御されている可能性が考えられた.また,ハロペリドールによるσ1受容体結合量の減少は受容体の遺伝子からの転写活性減少によるものではないことがわかった.さらに,モルモットとラットのσ受容体に対するハロペリドールの作用の相違から,ハロペリドール投与による臨床効果を考える上で代謝産物のσ受容体への影響を考慮すべきであることが示唆された.
著者
井上 敦司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.82-82, 2008

ザデー教授のソフトコンピューティング提唱により、あいまい性処理は現代そして次世代の知的システムの必要要素として広く認識されるようになった。この中で、ファジィ理論はあいまい性の処理の中核と位置づけられている。更に、ファジィ理論と、確率論やDempster-Shafer証拠理論等、他の枠組みの統合やこれらの対応性を明確にした、あいまい性の処理に関する統一的理論体系が求められている。この講演では、ボールドウィン教授のFuzzy Relational Inference Language(FRIL)の研究開発成果を基にした、論理プログラミング(PROLOGの基礎的枠組み)の拡張による統一的あいまい性処理の枠組みを紹介したい。
著者
藤丘 政明 井上 敦 森近 貴幸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1150-C4P1150, 2010

【目的】<BR> 肩甲上腕リズム(Scapulohumeral Rhythm:以下、SHR)が破綻している症例において、筋力や臼蓋上腕リズムの動きなど局所の状態は改善しているものの、全体として協調した動きの獲得に難渋することは多い。そこで今回、拘束条件として肩甲骨の動きを制限する患側を下にした側臥位での挙上運動が、全体として協調したSHR獲得に及ぼす影響について明らかにすることを本研究の目的とする。<BR>【方法】<BR> 本研究を行うにあたって、患側を下にした側臥位でのアプローチ(以下、SL法)では患側を下にした状態で90°側臥位をとることで、自重にて肩甲骨の自由な動きは制限されるので、その環境で挙上をすることで肩甲骨の動きを用いない動作となり、SHR獲得につながるのではないかと仮説を立てた。その仮説を検証するために、肩関節挙上時に代償動作として肩甲骨挙上がみられる症例に対して、SHR再獲得に一般的に用いられている鏡でのフィードバックを用いた方法(以下、FB法)とSL法を行い、アプローチ前後の即時効果を90°前方挙上時、Empty can test(以下、ECT)とFull can test(以下、FCT)での90°外転時における僧帽筋上部線維(Trapezius Upper:以下、TU)の筋電図積分値(以下、IEMG)と肩甲骨外転距離という評価項目を用いて比較した。FB法では鏡でのフィードバックを行いながら代償の出ない範囲での挙上運動を50回実施し、SL法では患側を下にした90°側臥位の状態で0°~90°までの挙上運動を50回実施した。対象は棘上筋断裂修復術を施行してから4ヶ月が経過している50代女性で、他動運動での可動域制限や疼痛はなかった。筋力はマイクロFET(日本メディックス社製)を使用して測定したが、安定性を高める筋である僧帽筋中部線維などについては健側と比べて80~90%程度であった。また、棘上筋の機能については、萎縮はほとんど見られず、Drop Arm Test(-)、Jobe Testでの筋力は健側に比べ85%程度であった。90°前方挙上時の患側の肩甲骨外転距離は健側と比べ3cm大きく、TUのIEMGも患側の方が大きかった。表面筋電計にはユニバーサルEMG((有)追坂電子機器製)を用いた。TUの電極貼付部位は、C7と肩峰を結んだ線上でC7より2cm外下方とした。<BR>【説明と同意】<BR> 対象には本研究の趣旨を十分に説明し、理解を得た上で同意書に署名していただいた。<BR>【結果】<BR> FB法では、運動中のTUのIEMGは減少していたものの、評価項目での改善は得られなかった。患側を下にした運動中には、肩甲骨の外転距離にほとんど変化はなく、挙上時におけるTUのIEMGは0.8から0.1へと減少した。アプローチ後では、座位での前方挙上時におけるTUのIEMGにはほとんど変化は見られなかったが、肩甲骨外転距離は1cm程度改善し、「だいぶ肩甲骨が上がってこなくなったような気がする」という主観的な訴えも聞かれた。また90°外転時では、FCTでのTUのIEMGはほとんど変化しなかったものの、ECTでのIEMGは2.2から2.0へと減少した。<BR>【考察】<BR> 本症例は、肩関節周囲筋には健側とほぼ同等の筋力を有しているにもかかわらず、挙上時には肩甲骨の代償動作を伴った運動パターンが残存していた。そこで、運動パターン改善のためにFB法とSL法を行ったが、結果としてFB法では運動パターンに変化が得られなかった。この要因としては、鏡からの視覚的フィードバックによって、代償動作が出ない範囲での運動は行えるが、あくまで代償動作が出ない範囲の運動であるため、代償動作が出現する肢位での運動パターンの変化には結びつかなかったのではないかと考えられた。一方、SL法では肩甲骨外転距離やTUのIEMGが減少した。これについては仮説で考えたように、挙上運動時に運動の拘束条件として肩甲骨の動きを制限したことで、TUによる代償動作が行ないにくくなり、肩甲骨の動きを用いない動作が可能になったためではないかと考えられた。そうすることで代償を用いないパターンでの運動学習が行え、座位での運動パターンの改善に繋がったのではないかと考えられた。また、SL法は無意識下での運動が可能であるので、ホームエクササイズとしての指導が容易であり外来通院患者のSHR獲得の一助にもなりうるのではないかと考えられる。ただ、SL法は本症例のように疼痛がない場合には適応できるが、SL法が疼痛を惹起するような症例に対しては禁忌であると考えられる。そういった症例に対してどういった方法を用いるかについては今後の課題である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>患側を下にした側臥位でのアプローチがSHR獲得に及ぼす影響について明らかにすることで、局所の状態は改善しているにもかかわらず肩甲骨挙上のパターンを呈している症例に対するSHR獲得への介入方法の一助となり得る。

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著者
井上 敦夫 井上 凱夫
出版者
玉川大学
雑誌
ミツバチ科学 (ISSN:03882217)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.180-184, 1997-10-31
著者
中村 光 岩永 可奈子 境 泉洋 下津 咲絵 井上 敦子 植田 健太 嶋田 洋徳 坂野 雄二 金沢 吉展
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
雑誌
こころの健康 : 日本精神衛生学会誌 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.26-34, 2006-12-30

本研究の目的は, ひきこもり状態にある人を持つ家族の受療行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることであった。ひきこもり親の会 (セルフヘルプグループ) に参加している家族153名から自記式質問紙による回答を得た。その結果, 以下のことが明らかにされた。(1) 家族の85.6%がひきこもり状態を改善するために相談機関を必要としている。(2) 精神疾患に対する偏見が家族の受療行動を阻害する可能性がある。(3) 相談機関の存在や所在地を知っていることが, 家族の受療行動を促進する可能性がある。(4) 家族にとって保健所や精神保健福祉センター, 電子メールによる相談は利用しにくく, 反対に電話相談は利用しやすい可能性がある。(5) ひきこもり状態にある本人が相談機関来所を拒否すると, 家族の受療行動を阻害する可能性がある。調査結果の検討を通して, ひきこもり状態にある人を持つ家族の受療行動を促進する方法が議論された。
著者
奥田 剛 井上 克司 井上敦之 伊藤暁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.110, pp.17-24, 2005-11-11

Pシステムは、生物学上の特徴をもつセルを用いた並列計算モデルであり,本論文ではこのモデルを利用した1つの触手をもつ通信機能のあるPシステムを取り上げる.これをCommunicating P System with One Tentacle (1CPST)と呼ぶ.研究では、次の結果を示す.意の有限オートマトンMが与えられたとき Mが受理する言語L(M)を受理するような1CPSTを構成する方法.T ={0}なる入力テープ集合は深さ2の1CPSTでは受理できるが 深さ1の1CPSTでは受理できない.意の正則表現が与えられたとき その正則表現を表す言語を直接受理するような深さ2の1CPSTを構成する方法.P system is a parallel computing model that uses the cell having the biological feature. This paper investigates the P system that has the communicating function with one tentacle, called Communicating P System with One Tentacle (1CPST). In this study, the following results are obtained. A method of constructing a 1CPST that accepts the same language as that of arbitrary finite automaton. It is impossible for 1CPST's of depth 1 to accept the set T = {0}, which can be accepted by a 1CPST of depth 2. A method of constructing a 1CPST of depth 2 that directly accepts the languages expressed by arbitrary regular expressions.