著者
津田 洋子 塚原 照臣 野見山 哲生
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-12, 2016-08

すんき漬は長野県木曽地方に伝わる漬物で、秋に収穫される赤かぶの葉を塩を使わずに植物性乳酸菌で発酵させ、広い年齢層の地域住民に冬季に食される郷土食である。すんき漬には家庭により多種類の植物性乳酸菌が含まれており、発酵に関係する菌種のうち3 種類が同定されている。更に、すんき漬にはI 型アレルギーに関与するIgE 生産能の減少効果を有する菌株が含まれていることも報告されている。本研究は、木曽地方の一村の全住民910 人を対象に自記式調査票によるアレルギー症状の有無と食生活等について調査を行い、すんき漬摂取とアレルギー疾患の関係を時間断面研究で調査した。回収率は88.4% であり、解析対象者376 人のうち69.7% が冬季にすんき漬を摂取していた。食物アレルギー有訴率は6.6%、アレルギー疾患有訴率は29.8% だった。ロジスティック回帰分析の結果、男性であることと1 日/週以上の納豆摂取は食物アレルギー有訴者を有意に減少させており、1 日以上/週の豆乳摂取は食物アレルギーを有意に増加させていた。冬季のすんき漬の摂取と毎日の果物摂取はアレルギー疾患有訴率を有意に減少させており、親がアレルギー症状を有すること、中華麺の1 日/週以上の摂取はアレルギー疾患有訴率を有意に上昇させていた。本研究により、冬季のすんき漬摂取はアレルギー疾患有訴率を減少させることが示唆された。本研究は時間断面研究であり、アレルギー疾患が自己申告であることから、今後、アレルギー疾患の種類や診断、すんき漬摂取量等、より詳細な調査を行うことにより、すんき漬摂取の明確な抗アレルギー効果が評価できると考えられた。 / Sunki pickle is an unsalted, traditional fermented vegetable produced in Kiso area of Nagano Prefecture, Japan. Some lactobacill in sunki have been reported to have an anti-allergic effect. We investigated sunki consumption, prevalence of allergies and lifestyle among the residents of a village in the Kiso area by questionnaire. Response rate was 88.4% and the number of valid respondents was 376. According to the response, 69.7% of the 376 participants consumed sunki during winter. The prevalence of food-allergy was 6.6%, and that of allergy diseases was 29.8%. In a logistic regression model, male gender and the consumption of natto (fermented soybeans) more than once a week significantly decreased the prevalence of food allergy, and consuming soymilk more than once a week increased the prevalence of food allergy. Sunki consumption in the winter and daily fruit consumption significantly decreased the prevalence of allergy diseases, whereas parental allergy disease and Chinese noodle consumption more than once a week significantly increased the prevalence of allergic diseases. Our findings indicate that sunki consumption during the winter may decrease the prevalence of allergy diseases. Future detailed investigations such as types of allergy, diagnoses of allergies and intake of sunki are necessary to clarify the anti-allergy effect of sunki.
著者
津田 洋子 内山 隆文 塚原 嘉子 西村 繁 塚原 照臣 野見山 哲生
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.64-65, 2007-08

長野県木曽地域に伝わる"すんき漬"にはⅠ型アレルギーに関与するIgE抗体を抑制する植物性乳酸菌が含まれていることが報告されている。すんき漬の抗アレルギー効果を調べるための自記式調査票による調査を王滝村に実際に居住する全村民(910人)に実施した。回収率88.2%であり、回答者の76.6%が冬季にすんき漬を食し、64.1%がすんき漬を好んでいた。冬の間のすんき漬摂取の有無、煮大豆、・みそ(味噌汁として)・豆乳・乳酸菌飲料・ヨーグルトの摂取、飲酒、喫煙を説明変数としてロジスティック解析を行った結果、食物アレルギーの有無には豆乳の摂取(p=0.02)、アレルギー疾病の有無には煮大豆(p=0.03)・乳酸菌飲料(p=0.02)・ヨーグルトの摂取(p<0.00)が有意に関係している結果であった。冬の間のすんき漬の摂取は食物アレルギーの有無(p=0.10)、アレルギー疾病の有無(p=0.14)の両方に関して有意な関係はみられなかったが、オッズ比がそれぞれ1.81、1.38であった。
著者
諏訪 直人 岡田 真平 石井 誠 梅垣 茂
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.46-47, 2013-08

要旨:地域で実践されているオリジナル体操のコンテストを企画し、5年間、6回にわたって開催した効果を検証した。コンテストへは県内で体操の実践活動に取り組む団体がエントリーし、コンテスト当日は、地域住民、健康運動指導士、保健福祉医療関係者等がイベントに参加した。これまでに、エントリーは累計のべ35チーム、イベント参加者は40市町村から累計のべ999名と拡大した。またコンテストの開催が、地域内での活動充実や、地域間での相互作用といった側面でも貢献し、公衆衛生活動としての意義は高い。
著者
高野 由梨 織田 真理子 小林 良清
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.50-51, 2012-08

要旨:予防接種の県内共通の評価指標として「予防接種済率」というものを考えている。この予防接種済率を算出するにあたり、予防接種台帳の管理等について各市町村の現状と課題についてまとめた。この予防接種済率を算出するには、基準日時点での居住者数(対象者数)、接種者数の把握が必要となるが、算出できるという市町村は77市町村中64市町村であった。転出入を考慮した基準日時点の対象者を把握することや転入者の接種情報を全て把握し、台帳管理することが困難な実態がわかった。
著者
栁澤 節子 小林 千世 山口 大輔 上原 文恵 吉田 真菜 鈴木 風花 松永 保子
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌 (ISSN:18822312)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.107-113, 2018-03

本研究の目的は、主観的健康感と生活形態、健康維持への意識、および地域社会活動との関連を検討することであった。2015 年7 月にM 市内の総合球戯場でゲートにいた成人と、2016 年9 月から10 月にM市内の商業施設の成人の来店者とS 大学医学部主催の健康講座に来た成人の参加者を調査対象者とした。調査内容は対象者の属性、主観的健康感、生活形態、直接スポーツ観戦の有無などであり、無記名式質問紙調査を実施した。分析は、主観的健康感について「主観的健康感高群」と「主観的健康感低群」に分けて、それらを従属変数とし、「地域活動に関する事柄」、「生活習慣に関する事柄」、「健康維持に関する意識」、「直接スポーツ観戦の有無」を独立変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。その結果、「夢中になれるもの」(OR=3.41、95% CI=1.270─9.167)、「規則正しい生活」(OR=2.64、95% CI=1.251─5.585)、「直接スポーツ観戦」(OR=2.584、95% CI=1.158─5.766)が、主観的健康感を高める要因であった。これらのことから、人生において、夢中になれるものがあることや、規則正しい生活を送ること、直接スポーツを観戦することが、主観的健康感に大きな影響を与えていることが分かった。また、直接スポーツを観戦することや、直接スポーツをすること以外にも、スポーツに関わる、あるいは携わることが、健康に対する意識を高め、健康の保持増進に影響を与えることが推察された。したがって、スポーツができない高齢者や患者においても、スポーツを観戦することで、主観的健康感が高まり、人生における楽しみや生きがいにつながり、「近隣の人との交流」、「地域での活動に参加する」などの社会的活動やその役割、意識をも高め、主観的健康感も高まると考えられた。今後、健康寿命の延伸に向けた健康づくりのためには、今回明らかになった主観的健康感を高めるような要因が充実する介入や支援ができる体制を作り上げることが重要であると考えられた。