- 著者
-
小田切 康彦
- 出版者
- 経営哲学学会
- 雑誌
- 経営哲学 (ISSN:18843476)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.2, pp.97-109, 2020-10-31 (Released:2021-06-08)
- 参考文献数
- 41
パブリック・ガバナンス(public governance)論は、従来の政府中心の統治体制ではなく、多元的な統治の担い手を政府に代えて設定する視点を強調するが、そのような公共における担い手のいち主体として期待されてきたのがNPOである。しかしながら、既存研究では、NPOが果たす役割は多様・多義に論じられ、その定義に合意が得られていない。また、議論が個々の国の文脈に強く依存していることや、実証的研究が乏しいこと等、多くの課題が指摘されている。本稿は、NPOの果たす役割について、その「機能」の視点から、日本の実態を体系的に捉えることを目的とした。まず、日本の実態を分析するための枠組みの検討を行い、NPOの機能として、サービス提供、アドボカシー、コミュニティ構築、という3つを設定した。つづいて、この分析枠組みを基に、日本におけるNPOの機能の実態を、独立行政法人経済産業研究所が実施した「平成29年度日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」のデータを用いて定量的に明らかにした。分析の主要な結果として、(1)特定非営利活動促進法や公益法人制度改革等による新しい制度の下で活動する脱主務官庁制の法人は、サービス提供に加えアドボカシー等のマルチな役割を果たしていること、(2)大規模なNPOほどサービス提供の比重が大きいこと、(3)所在地が都市部のNPOほどアドボカシー活動に注力していること、(4)NPOの代表の経歴が活動内容に影響していること、(5)日本の実態としてはアドボカシーの比重が極めて小さく、サービス提供とコミュニティ構築の2つが主たる役割であること、等が明らかになった。