- 著者
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玉木 栄一
- 雑誌
- 玉川大学観光学部紀要 (ISSN:21883564)
- 巻号頁・発行日
- vol.2014, no.2, pp.13-35, 2015-03-31
伊東市は,富士箱根伊豆国立公園の指定区域にあり,温暖な気候,豊かな自然と美しい景観に恵まれ,また古くから全国に知られた温泉地でもある。さらに最大の観光市場である首都圏に近く,交通の利便も良い。まさに観光地として必要な条件を全て備えている。 第二次大戦後は,交通の利便性が増して,観光開発も進み,大幅に観光客数を伸ばしていった。しかしバブル崩壊後の長期的な経済不況に入ると,観光需要低下に対しての効果的な対応策が打てず,他の観光地と同様に,観光客が年々減少していった。 こうした近年の停滞から脱却し,かつての輝きを取り戻すために,この論文は,伊東市の観光開発・観光振興戦略の方向性を提示することを目的として進められた。まず伊東市の概要と歴史を概観し,伊東市は,江戸時代から続く小さな村が合併し出来た町であり,古くから観光が主な産業であったことを確認した。伊東市観光の歴史を考察すると,温泉地としての発展は,明治時代の鉄道と道路網の整備から始まり,昭和13年(1938年)の鉄道・伊東線の開通で大きく発展したことが分かった。戦後では,昭和36年(1961年)の伊豆急線の開通で,伊東市南部の別荘地の開発が進み,1970年代から,リゾート型温泉保養地として大きく発展していった。 次に伊東市の観光資源,観光の動向や市の観光政策を調べ,SWOT分析を行った。その結果として,伊東市観光の課題とその対応としての戦略の方向性が明らかとなった。その戦略の方向性は,伊東市総合計画書の中にある方策と一致したもので,次の4つが提示された。 1)積極的攻勢戦略:外国人観光客の誘客推進 2)差別化戦略:首都圏での地域資源を活用した観光マーケティング活動の強化 3)段階的施策戦略:外国人観光客の受入体制の整備 4)専守防衛戦略: 外国人観光客の誘致で,市街地と観光地の活性化を図ることと,自然災害の危機管理体制の強化 そしてこれらの戦略の方向性は,伊東市街の温泉地と伊豆高原地域の観光開発・観光振興戦略に取り入れられ,これからの伊東市観光の観光開発・振興戦略として提案された。 この論文では,伊東市の観光開発歴史の考察と観光の現状分析から,今後の取り組み課題を把握し,戦略の方向性を示しているが,ここで提示された戦略の実施には,伊東市観光のステークホルダーとの議論を重ね,詳細の施策を実施計画に落とし込んでいく必要がある。