著者
藤田 弘之 Hiroyuki Fujita
出版者
関西外国語大学
雑誌
人権を考える = Thinking about human rights : 関西外国語大学人権教育思想研究所紀要 (ISSN:2189177X)
巻号頁・発行日
no.23, pp.41-66, 2020-03

我が国において、いわゆる教師の不祥事は教育に関わる大きな問題の1つである。教師の不祥事は正確には、教師による不法行為、あるいは服務義務違反を指している。こうした行為が行われた場合、任命権者により懲戒処分がなされ、最も重い場合は免職処分が課される。懲戒免職処分を受けた教師の免許状は失効し、教師を続け、または教師になることができない。しかし、3年を経過すると、免許状を再取得でき、再び教職に復帰することも可能になる。イギリス、特にイングランドの場合、教師が不法行為を行った場合は、任命権者により懲戒処分が行われるが、重大な不法行為の場合は、教育省の執行機関である教職規制機構(Teaching Regulation Agency)に通告され、必要と認めた場合は審査会により教職禁止命令が決定され教育大臣に勧告される。本稿は、現在イングランドにおいて、この教職規制機構が、教師の不法行為についてどのような権限に基づき、どのような対応措置をとっているかに関して明らかにするとともに、この機構が取り扱った事案を分析し、教師がどのような不法行為を行い、それがどう対処したのかについて明らかにした。