著者
小田桐 確 Tashika Odagiri
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of inquiry and research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.114, pp.207-226, 2021-09

同盟は、勢力均衡を実現する手段として規定される。確かに、ユトレヒト条約(1713年)で「勢力均衡」が欧州国際社会の原則として明文化されて以降、19世紀のウィーン体制までに形成された大国間の同盟は、欧州の勢力均衡の回復という同一の目的を掲げていた。その一方で、大国の行動様式や同盟の機能には差異が見られた。18世紀には、国益を一方的に追求する側面が強かったのに対して、19世紀前半には、欧州全体の安定という共通の利益を実現するために協調する側面が顕著に現れた。では、このような同盟行動の差異は、いかにして生じたのか。本稿では、まず、同盟と勢力均衡の関係について理論的に整理する。続いて、フランス革命の勃発(1789年)からエクス・ラ・シャペル会議(1818年)に至る期間の欧州を取り上げ、当時の五大国による同盟形成の論理とその変化を考察する。最後に、今日の国際政治の分析に対する含意に言及する。
著者
鶴見 直人 岸野 浩一 小田桐 確 Masato Tsurumi Kouichi Kishino Tashika Odagiri
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.111, pp.179-192, 2020-03

国際関係への学生の興味関心を高めるとともに、時事問題に関する知識の定着を図る目的で作成したクイズを授業で活用し、その実践から得られたデータを分析した。その結果、学生たちはニュースに関心を持っていると表明しながらも、極めて基礎的な知識の確認さえ行わない傾向が浮かび上がってきた。これは「専門知の死」(トム・ニコルズ)として指摘される傾向と似たものと見られる。本稿によって明らかにされるのは、こうした指摘とはまた違った一面である。ここから、マスメディアの危機と「民主主義の死」が同時に指摘される現代において国際関係についての教育を行う際、メディア・リテラシーの重要性を説くだけでは不十分であり、「肯定的な懐疑心」を涵養してゆく必要性が示唆される。