著者
高木 有子 落合 幸子 池田 幸恭
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-38, 2008-03

本研究では,性教育の分野で有効とされるピアエデュケーションを,「子どものいじめ自殺」を主題に,大学1年生160名に実施した。「子どものいじめ自殺」に関する大学生の意識と授業の感想を分析した結果,次の3点が示された。(1)いじめの被害経験,加害経験がある者は,どちらも全体の約3分の1程であった。さらに,被害経験がある者は被害経験がない者よりも,加害経験のある割合が高い。(2)ピアエデュケーション形式の授業によって,学生はテーマをより身近に感じて考えを深められると共に,ピアエデュケーターの学習も深まり,授業を行うことで自信をもつことができる。ピアエデュケーション形式の授業は,双方にとって成長を促進するするきっかけとなる。(3)「いじめ」に関する体験を語ることには意義があり,特に「いじめ自殺」は友人関係の中で生じる問題であるがゆえに,ピアエデュケーションを通して友人間でその問題を共有することには意義がある。
著者
高坂 康雅 池田 幸恭 葉山 大地 佐藤 有耕
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-16, 2010-08-31 (Released:2017-05-22)
被引用文献数
4

Psychological functions of sharing among junior high school friends were examined and the relationship between shared objects and psychological functions of sharing was investigated. Participants were junior high school students (N=1068). The result of factor analyzing items on psychological functions of sharing indicated the following six factors: "motivation", "increased pleasure", "friendly evaluation from others", "increased feeling of burden", "achievement evaluation from others", and "increased negative evaluations from others." Descriptions of objects shared with friends were classified into eight categories and psychological function of sharing scores was compared for the most important shared object. Result indicated the following; 1) "psychological sharing" such as "feelings" and "goals" had positive functions. 2) "Material sharing" such as "things" did not have either a positive or negative functions. 3) "Behavioral sharing" such as "chatting" and "school activities" had negative functions. These results suggest that friendships that included "psychological sharing" increased "motivation" and "pleasure" in junior high school students, and was deeper than friendships based on "behavioral sharing" and "material sharing".
著者
落合 亮太 池田 幸恭 賀藤 均 白石 公 一般社団法人全国心臓病の子どもを守る会
出版者
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 = Acta cardiologica paediatrica Japonica (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.258-265, 2012-09-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

<B>目的</B>:本研究の目的は, 身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者を対象に,(1)社会的自立度と心理的側面との関連,(2)社会生活上の不安・困難・要望を明らかにすることである. <BR><B>方法</B>:全国心臓病の子どもを守る会が実施したアンケート調査結果のうち, 身体障害者手帳を有する15歳以上の患者143名分のデータを分析した. 社会的自立を表す指標として就労状況, 年収, 障害年金受給状況を尋ね, 心理的側面を表す指標として経済的苦痛, 精神的苦痛を尋ねた. さらに, 生活上の困難・不安・要望について自由記述にて回答を得た. <BR><B>結果</B>:対象者になった143名(年齢15~73歳, 中央値=24歳;男66名, 女71名, 不明6名)のうち, 身体障害者手帳1級を有する者は95名(66%), 就労者は59名(41%;このうち年収200万円以下が58%)であった. 患者の経済的苦痛には, 手術歴があること, 通院頻度の高さ, 世帯総収入の低さ, 本人の年収の低さ, 障害年金受給が, 精神的苦痛には, 通院頻度の高さ, 仕事への不満足がそれぞれ有意に関連していた. 自由記述では, 「周囲の理解が得られない(57名が言及)」「年金制度を充実させてほしい(38名)」「医療費に対する助成を充実させてほしい(37名)」「就労支援・雇用拡大が必要(25名)」といった意見が聞かれた. <BR><B>結論</B>:身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者の収入は総じて低く, 経済的問題と就労環境が, 患者に心理的苦痛を及ぼすと推察された. 就労支援体制の整備と所得保障を含めた福祉制度の充実が急務である.
著者
池田 幸恭
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.487-497, 2006-12-30

本研究の目的は,青年期における母親に対する感謝の心理状態について明らかにすることである。そのため,母親に感謝しているときに感じる気持ちと,自分が苦労しているのは母親のせいだと感じる気持ちを合わせて検討した。中学生,高校生,大学生の585名に質問紙調査を実施した結果,次の3点が示された。(1)母親に感謝しているときに感じる気持ちとして,援助してくれることへのうれしさ,産み育ててくれたことへのありがたさ,負担をかけたことへのすまなさ,今の生活をしていられるのは母親のおかげだと感じる気持ちという4種類の気持ちが抽出された。(2)援助してくれることへのうれしさ,産み育ててくれたことへのありがたさ,今の生活をしていられるのは母親のおかげだと感じる気持ちは,青年期のどの時期でも感じられていた。(3)青年期における母親に対する感謝には,自分が苦労しているのは母親のせいだと感じる傾向がみられる要求的な心理状態から,負担をかけてすまないと感じる自責的な心理状態が現れ,そして負担をかけたことへのすまなさと自分が苦労しているのは母親のせいだと感じる傾向が小さくなる充足的な心理状態が現れるという変化の順序性がみられた。
著者
池田 幸恭
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.67-86, 2023-04-20 (Released:2023-05-13)
参考文献数
48

This study aimed to clarify the relations between awareness of and attitude toward parental aging from late adolescence to early adulthood in Japan. An online survey was conducted with 800 participants aged 20-39 years, and the data were analyzed by exploratory and confirmatory factor analysis. Awareness of “decline in parents’ activity” and “parents’ psychological maturation” were extracted for awareness of parental aging. Four attitudes toward parental aging were extracted: “caring about aging parents,” “sadness about parental aging,” “anxiety over parents’ old age,” and “generativity evoked by parental aging.” Structural equation modeling revealed that awareness of decline in parents’ activity was positively associated with sadness about paternal aging as well as anxiety over parents’ old age. Awareness of parents’ psychological maturation was positively associated with generativity evoked by parental aging. Additionally, awareness of parents’ psychological maturation was positively associated with caring about aging parents, except for women in their 20s and 30s regarding their fathers and mothers, respectively. These associations differed according to the type of parent-child relationship and the child’s age group.
著者
池田 幸恭 葉山 大地 高坂 康雅 佐藤 有耕
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.111-124, 2013-02-15 (Released:2017-05-22)
被引用文献数
7

This study aimed to clarify undergraduate students' styles of sharing with close friends at their university. Participants were 972 undergraduate students who responded to a 75-item questionnaire relating to styles of sharing, satisfaction, and depth of relationship with university friends (acquaintances, good friends, or best friends). The results were as follows. (1) Six styles of sharing with friends were identified: sharing relationships, places, feelings, intentions, items, and sensitivity. (2) Scores for all six styles of sharing were higher in the order of best friends, good friends, and acquaintances. (3) Irrespective of level of intimacy, sharing in relationships increased satisfaction and depth of relations. On the other hand, sharing worries or negative feelings decreased satisfaction with all three types of friends, but stimulated deeper relations with both good and best friends. In addition, sharing items decreased satisfaction with good friends and depth of relations with best friends. Results show that close friendships among undergraduate students involving sharing relationships, places, feelings, intentions, and sensitivity was based on psychological bonds, and such sharing might decrease satisfaction but deepen relations with close friends.
著者
池田 幸恭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.11-31, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
150
被引用文献数
2

本稿の目的は,2019年7月―2020年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌5誌と2020年9月にオンラインで開催された日本教育心理学会第62回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。中学生,高校生,大学生他,青年期の複数時期,成人期以降,多世代の発達時期について,自己,対人関係,学習,キャリア発達,生活という5つの研究領域に関する観点から分類し,研究内容の概要と動向をまとめた。分析の結果,青年期以降の発達研究は,高校生の研究は少ないが,研究対象の発達時期,領域,方法は多様であり,生涯発達に関する知見が着実に蓄積されていると考えられた。研究対象の偏り,研究方法の発展,研究成果の理解という問題について,オープンサイエンスに基づくデータの共有,マクロレベルとミクロレベルの多水準の時間単位の接続,発達観の明示に伴う科学コミュニケーションの必要性と可能性を論じた。これらの展開をとおして,発達研究が一人ひとりの多様な発達の理解に貢献することが期待できる。
著者
葉山 大地 髙坂 康雅 池田 幸恭 佐藤 有耕
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.99-113, 2019-03-22 (Released:2019-05-04)
参考文献数
33

The purpose of this study was to examine how sharing styles and social skills relate to the development of same-sex friendships in universities. In 2011 and 2013, longitudinal surveys were conducted in July (Time1), November (Time2), and January (Time3). Fifty freshmen participated fully in these surveys.Cross-lagged effects models including “degree of satisfaction” indicated that “degree of satisfaction with their friendships” (Time2) decreased “sharing intentions” (Time3), while “degree of satisfaction” (Time1) promoted many styles of sharing (Time2). These findings show that some participants avoid sharing intentions because they prefer to maintain moderately satisfactory relationships. In addition, a negative effect of “sharing goods” was estimated from the result that “sharing goods” (Time1) decreased “degree of satisfaction” (Time2).A cross-lagged effects model including “depth of relationship” showed that “sharing relationships” (Time2) promoted “depth of relationship” (Time3). Moreover, the findings that “depth of relationship” (Time1) promoted “sharing feelings” (Time2) and “sharing feelings” (Time2) promoted “depth of relationship” (Time3) showed a mutual causal association.
著者
池田 幸恭
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.65-74, 2017-03-31

日本では「すまない」などの負債感を含んだ複合的感情として感謝をとらえる傾向があるという文化的特徴に着目し、心理学や言語学の複数領域での研究成果に基づいて、感謝に伴って生じるすまなさ感情を経験することの心理的意味を明らかにすることを本研究の目的とした。そのため、「すまない」の語義、日本語の感謝表現における「すまない」、感謝と負債感の関係に関連する文献を概観した。それらの論考を踏まえて、以下の3つの試論を提起した。第1に、感謝は自分が周りから恩恵を受けていることを認識することによって、肯定的感情と否定的感情の両方として経験される可能性がある。そこでは、未分化で肯定的感情と複合したすまなさ感情を経験する場合、経験された否定的感情を解消するために他者へ返報する義務があることを強調して負債感を分化する場合があると考えられた。第2に、感謝に伴うすまなさ感情は、相手の負担、意図、与えられた恩恵の価値という状況の評価に加えて、相手との社会的関係の影響を受ける。さらに、感謝に伴うすまなさ感情は、他者との関係の形成や維持につながると考えられる。第3に、感謝に伴うすまなさ感情は、自己洞察を深めるが、同時に自己否定的な心理状態に留まるという危険性もある。今後の研究の展望として、対人関係以外の抽象的な対象への感謝に伴うすまなさ感情について検討すること、感謝の経験と表明の相違を検討すること、本研究で提起した試論について文化的背景を視野に入れた実証的研究をとおして確かめていくことの必要性について論じた。
著者
池田 幸恭 Yukitaka IKEDA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.65-75, 2015-03

本研究の目的は、感謝を感じる対象の発達的変化について明らかにすることである。10代(15歳以上)、20代、30代、40代、50代、60代それぞれ300名(男性150名、女性150名)の合計1800名にweb調査を実施し、感謝を感じる対象20項目への回答を主に求めた。各対象へ感謝を感じる程度を確認した上で、感謝を感じる対象の年代による評定得点の差を検討した。その結果、感謝を感じる対象の発達的変化は、対人関係における感謝(変化なし)、対人関係における感謝(変化あり)、抽象的な対象への感謝という大きく3つの特徴にまとめられた。第1の対人関係における感謝(変化なし)は、父親、母親、職場(あるいはアルバイト先)の人が含まれ、年代による得点差はみられず、15歳以上から60代にかけて感謝の気持ちを安定して感じていた。第2の対人関係における感謝(変化あり)は、友だち、恋人(あるいは配偶者)、祖父母、学校の先生、自分の子ども、年下のきょうだい、年上のきょうだいが含まれ、感謝の気持ちを最も感じている時期ならびに感じる程度が最小の時期が対象によって異なっていた。第3の抽象的な対象への感謝は、自然の恵み、自分の健康状態、いのちのつながりといった10種類の対象が含まれ、概ね10代から20代よりも50代、さらに60代に感謝を感じる程度が大きくなっていた。以上より、感謝は生涯発達をとおして、具体的な対人関係においてだけなく、抽象的な対象へも広がって感じられるようになると考えられた。