著者
當野 能之 梅谷 綾 南澤 佑樹 芝田 思郎 Tohno Takayuki Umetani Aya Minamisawa Yuki Shibata Shiro トウノ タカユキ ウメタニ アヤ ミナミサワ ユウキ シバタ シロウ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
外国語教育のフロンティア (ISSN:24339636)
巻号頁・発行日
no.3, pp.291-300, 2020-03-30

研究ノート本稿では、スウェーデン語学習者にとって必要な不変化詞および不変化詞動詞のリストの作成に向けて、見出し語となる不変化詞動詞の選定について考察した。不変化詞動詞は「動詞+不変化詞」から成り、複数の単語で1つの意味を表す「複単語表現(Multi-Word Expression)」に相当する。したがって、単一の単語に比べて、その頻度を出すことは容易ではない。そこで本稿では、不変化詞動詞の学習書やリストなどとコーパスデータを併用し、必要な不変化詞動詞の選定を行い、暫定的な不変化詞と不変化詞動詞のリストを掲載した。
著者
TAHIR Marghoob Hussain ターヒル マルグーブ フサイン
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
Frontier of foreign language education = 外国語教育のフロンティア (ISSN:24339636)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.209-221, 2021

教材研究本稿は、ウルドゥー語を学習する日本人学生を対象とした教材のうち、近代ウルドゥー文学のなかの、特に新体詩の基礎を築く上で大きく貢献したアルターフ・フサイン・ハーリー(Khwāja Alt̤āf Ḥusain Ḥālī, 1837-1914) と、南アジアのムスリムの自立を訴える詩でムスリムの政治・社会運動の思想的基盤を築き、パキスタンでは「大学者 'allāma」として尊敬を集めるムハンマド・イクバール(Muḥammad Iqbāl, 1877-1938)に関する紹介文である。ハーリーは詩作においてはガーリブ(Mirzā Asad Allāh Khān Ghālib, 1797-1869) の弟子であった。このため当初は恋愛やスーフィズムなどを主題とした伝統的なウルドゥー詩を書いていたが、イギリス植民地期の南アジアのムスリムの近代化運動「アリーガル運動」を牽引したサイイド・アフマド・ハーン(Saiyid Aḥmad Khān, 1817-98)に感化されると、ムスリムの近代化を文学面で支えた。詩集の序文でハーリーは恋愛など古典詩における伝統的な主題から、現実社会に目を向けた詩を作るべきであると主張し、この長い序文は『詩序論Muqaddima Shi'r o Shā'irī』 (1893 年) として別途刊行された。ウルドゥー文学史におけるハーリーの評価はその詩よりも、新体詩運動先導的役割にある。ハーリーの活動は、ウルドゥー文学史上重要な意味を持つばかりでなく、南アジアのムスリム、特にウルドゥー語話者の間での近代化の問題と深くかかわることから、理解しておく必要がある。ハーリーの作品としては、ムスリムの盛衰を描いた『ハーリーの六行詩Musaddas-e Ḥālī』の一部を紹介する。これはパキスタンのウルドゥー語教科書にも掲載されている。イクバールはパキスタンにおいて「イクバール学Iqbāliyāt, Iqbal Studies」として学問分野が確立して大学院での授業科目も設置されているほか、その詩想や思想を研究する機関が複数存在されている。また、彼のペルシア詩はイランでよく知られており、イクバールは「ラーホールのイクバールIqbāl Lāhorī」として知られている。青年期にヨーロッパに学んだイクバールは、西洋の文化を体験したことで、ムスリムが辿るべき道を示すべく、哲学的な内容を簡明な語彙で描出した。ここでは、各詩人の生涯の概要と作品の特徴を、文法的に理解しやすい詩句を例示しつつ解説している。分量はそれぞれ1 回の授業で読む程度のものとし、語彙や文体も中級の学生が理解できるよう簡明なものとなるように心がけた。これにより、中級レベルのウルドゥー語運用能力によって、近代ウルドゥー文学の基本的知識と教養である詩人 2 名について理解できることを目指す。
著者
Shchepetunina Marina シピトウーニナ マリーナ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
外国語教育のフロンティア (ISSN:24339636)
巻号頁・発行日
no.1, pp.119-133, 2018-03-30

論文現代ロシア語の言語文化的な世界観に含まれるロシア文化の特徴には、異なる時代に生成された概念があると考える。本稿は言語において神話的思想に由来する表現や話法を研究対象とし、その形態の考察を行い、文化的なコンテクストに対照する。慣用句や言い回しには、伝統文化、儀式や信仰に根付いた祭りに由来するものもある。また、自然の現象に神霊が宿ると考えたり、太陽・月・風など自然現象を生き物に見立てたりするのはアニミズムの特徴であったが、こういった発想は現代のロシア語にも残っている。例えば、「楽しいことがあれば、つらいこともある」と意味するne vsyo kotu Maslenitsa, biwaet i Velikii post「猫はいつまでも謝肉祭を楽しむわけにはいかない、大斉期もあるから」という慣用句には、スラブ民族の多神教に由来する美味おいしいものを食べて楽しむ祭りであるマスレニツァ(謝肉祭) が、キリスト教の大斉期に対照されている。さらに、ロシアのおとぎ話をはじめ、ロシア古代文学、古典文学および現代の詩や歌には、人間は太陽や月などの自然現象と会話し、それらの現象は人間とまったく同じような行為をする話しもある。これらの話しには、太陽や月が人間の主人公に直接に会話をする例もある。さらに、風は「神様以外に恐れるものがない」(ne boishsya nikogo, krome boga samogo)、「花はお情けで気落ちした」(tveti unili ot zhalosti) のような文学からの用例のように自然に「恐れる」(boyatsya)、「情ける」(zhalet)、「気落ちする」(univat) のような人間の感情を表す言葉が自然の現象に使用されて、自然は人間と同じように行動して気持ちを表し意志を持つものとして理解されている場合が珍しくない。こういった古代思想・神話思想にさかのぼる言語文化的世界観は、キリスト教による多信仰に対する圧迫、それに続いてソ連時代の反宗教の政策にもかかわらずフォークロアおよび言語に存残する。本稿ではその経緯をダイクロイック的に考察し、ロシア語における自然の擬人化を歴史文化的なコンテクストに乗せてロシア語文化学的な世界観の一部として取り扱う。言語文化学的なアプローチによって、学習者はロシア語における自然の擬人化を文化世界観の一部として理解し、自然現象に使用される語彙・話法は学習しやすくなると考える。
著者
Abdelrahman Tareq Sadeq Elsharqawy アブデルラフマーン ターレク サイード エルシャルカーウィー
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
外国語教育のフロンティア (ISSN:24339636)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.343-352, 2018-03-30

研究ノートThe Arabic Language has a long history as living and spoken language. It also occupies a wide geographical area and has acquired the position of a communicational language and international language, as well as a language for religion (Islam) and for science - specially during the medieval ages. There is a well-known phenomenon in Arabic which is having more than one level: standard and colloquial. This is what can be called as Diglossia. Because of diglossia, speakers have to choose the language level to use according to situation and the speech-act. This may cause some difficulty, if not contradiction when adopting guidelines for teaching/learning Arabic. The target of this paper is to review different Arabic language textbooks – currently in use – trying to find out how they deal with contradiction.