著者
杉村 泰
出版者
名古屋大学言語文化研究会
雑誌
ことばの科学 (ISSN:13456156)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.25-44, 2018-12-25

本稿は平成28-32年度科学研究費基金(基盤研究(C))「中国人日本語学習者におけるポートフォリオ型学習データベースの構築と文法習得の研究」(研究代表者:杉村泰、課題番号16K02809)による研究成果の一部である。
著者
玉岡 賀津雄 TAMAOKA Katsuo
出版者
名古屋大学言語文化研究会
雑誌
ことばの科学 (ISSN:13456156)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.45-64, 2020-12-25

SNSの普及にともない,書き言葉によるコミュニケーションが頻繁に行われるようになってきた。とりわけ,事実に即した情報や依頼などをわかり易く書き言葉で伝達するための「説明文(expository writing)」を書く能力が要求されるようになってきた。この能力を「説明力(explanatory ability)」と呼ぶ。現代社会において,説明力は日本語母語話者ばかりでなく外国人日本語学習者の実生活でも,なくてはならない能力になっている。そこで,『多言語母語の日本語学習者横断コーパス: I-JAS』に収録された2つのストーリーライティング課題が説明文を反映していると仮定し,海外で学習する日本語学習者850名が書いたテキストデータを基に,(1)動詞,助動詞,副詞,助詞の4つの品詞を「述部」とし,(2)名詞,形容詞,連体詞の3つの品詞を「名詞句」として,品詞別の産出頻度を算出した。そして,J-CAT(Japanese Computerized Adaptive Test)で測定された日本語能力からI-JASのテキストの産出頻度への因果関係モデル(図1を参照)を5つ想定して,構造方程式モデリング(structural equation modelling, SEM)の解析法で日本語能力と産出頻度データとの適合度を検討した。適合度指標に照らして,最適の因果関係モデル(図2を参照)をみいだした。このモデルは,次のような連続的な因果関係を示した。(1)語彙と文法が「基礎力」を構成し,(2)読解と聴解の「理解力」を促進し,(3)「述部」の語彙産出を豊かにし,(4)「名詞句」の語彙産出に大きく貢献する。With the widespread use of SNS (social networking services), people are communicating more frequently by written text than ever before. The ability to express content plainly is in great demand. In the present study, this is defined as “explanatory ability”. In contemporary society, this ability has become essential to daily life not only for native Japanese speakers but also for foreign learners of Japanese. Assuming the two story-writing tasks recorded in the International Corpus of Japanese as a Second Language (I-JAS) reflect explanatory ability, the productive frequencies of lexical categories found in the text written by 850 Japanese learners outside Japan were divided into two groups: (1) four categories of verbs, auxiliary verbs, adverbs, and auxiliaries as “predicates” and (2) three categories of nouns, adjectives, and conjoined words as “noun phrases”. Using the statistical method of structural equation modelling (SEM), the five causal relation models linking Japanese proficiency as measured by the Japanese Computerized Adaptive Test (J-CAT) and text productive frequencies (see Figure 1) were examined to see how these models fit with data from proficiency scores and productive frequencies. Based on the fitting indexes, the study found the best causal model to be that identified in Model 2 (see Figure 2). This model showed causal sequencing in the following order: (1) procession of a basic knowledge of vocabulary and grammar (2) promotes reading and listening comprehension, further (3) enriches the production of predicates and (4) contributes to the production of noun phrases.
著者
大和 祐子 玉岡 賀津雄 熊 可欣 金 志宣 YAMATO Yuko TAMAOKA Katsuo XIONG Kexin KIM Jeeseon
出版者
名古屋大学言語文化研究会
雑誌
ことばの科学 (ISSN:13456156)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.39-58, 2017-12-25

本研究では,韓国人日本語学習者31名を対象に,語彙テスト36問および漢字読み取り・書き取りテスト各24問(合計48問)の結果から,韓国人日本語学習者の語彙知識と漢字の読み書き能力との因果関係を検討した。日本語の語彙知識が漢字の読みと書きに同時に貢献する並列モデルと日本語の語彙知識がまず漢字読み取り能力に貢献し,読み取り能力を介して漢字書き取り能力に貢献するとする逐次モデルを想定して,それぞれのデータとモデルの適合度を構造方程式モデリングの手法で調べた。その結果,逐次モデルテストの結果を最もよく反映していることが分かった。韓国人日本語学習者は,日本語の基本的な語彙知識から漢字語の読み(音韻的表象群の形成)を習得し,その記憶の蓄積から,漢字語の書き取り能力(書字的表象群の形成)を向上させるという因果関係をみいだした。
著者
杉村 泰
出版者
名古屋大学言語文化研究会
雑誌
ことばの科学 (ISSN:13456156)
巻号頁・発行日
no.32, pp.25-44, 2018-12

本稿は平成28-32年度科学研究費基金(基盤研究(C))「中国人日本語学習者におけるポートフォリオ型学習データベースの構築と文法習得の研究」(研究代表者:杉村泰、課題番号16K02809)による研究成果の一部である。