著者
山下 貴子 山崎 佳代
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.62-70, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
13

本研究は,介護現場における職員と利用者がサービスを通じてともに満足感を得るためにはどのような要因が必要であるか,介護現場がとるべき対応について検討を行った。先行研究より「離職要因」「サービス品質」「サービス・プロフィット・チェーン」「リスク・コミュニケーション」から職員および利用者の満足感の構成要因を検討した。続いて先行研究で用いられた概念の指標を基に質問項目を作成し,職員と利用者を対象に定量調査を行った。職員への調査からは「サービス価値」,「人間関係」,「マネジメントの質」,「信頼」,「リスクマネジメントの必要性」,「リスクマネジメントの浸透」の6つの因子間に正の相関があり,互いに労働条件にも強く影響し,働くモチベーションやサービス品質を決定づける重要な要因であることを確認した。また利用者満足度の分析では,「ケアマネージャーの品質」「提供サービス品質」「施設サービス品質」のそれぞれ正の関係がみられ,利用施設の「心理的ロイヤルティ」向上へ作用していることも確認でき,利用者満足向上と働きやすい職場環境の両立にむけた新たな視座を提供することができた。
著者
木暮 美菜 諸上 茂光
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-29, 2021-02-26 (Released:2021-02-26)
参考文献数
20

ダイエットなどの消費者自身の変化を期待する「行動変容促進型商品」は消費者の努力の程度によって商品から得られる結果が異なる。そのためダイエット器具の口コミを閲覧する消費者は,口コミ閲覧者自身が可能な努力の程度によって口コミに対して知覚する共感感情が異なり,口コミから類推する製品の評価や購買意思決定が異なると予測される。そこで本稿は口コミ閲覧者の自己効力感とダイエットに対する価値の知覚によって,ダイエットの口コミに対する認知的共感,情動的共感が異なること,知覚する共感の違いによって製品評価やダイエット器具の効果の予測が異なることを場面想定法を用いたアンケート調査から検証した。分析結果より消費者の自己効力感やダイエットの価値の知覚によって口コミに対する認知的共感,情動的共感が異なること,口コミ閲覧者の自己効力感は成功口コミへの共感に関係し失敗口コミへの共感には関係しないことが確認された。また口コミに対する認知的共感はダイエット器具のダイエット効果の予測を高める一方で,口コミに対する情動的共感はダイエット器具の製品評価に影響することが確認された。
著者
宮林 隆吉
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.12-22, 2020-03-04 (Released:2020-03-04)
参考文献数
18

グローバル経営において国や文化の異なる従業員同士の融和は重要な課題であり,国境や文化を超えて組織アイデンティティを構築するためにも,人々を束ねる経営理念が重要な役割を果たすと考えられる。しかし,多くの日本企業の人材面・制度面での現地化は遅れており,安易に翻訳された理念やビジョンがそのまま輸出されて形骸化しているケースが見られる。本研究では,まず経営理念が組織アイデンティティの重要な基盤であり,戦略や組織のあり方に大きな影響を与える要素であることを先行研究より考察した。次に,異なる文化圏(アメリカ,中国,日本,ドイツ)の企業計121社の経営理念をコンテンツ分析・比較し,国民文化が経営理念に与える文化の影響度を検証した。その結果,権力格差(PDI)と不確実性の回避(UAI)が社内外のステークホルダーとの関係構築姿勢に影響を与えていることが認められた。今後,経営理念を核とした企業ブランディングや組織運営を行う上でも,グローバル企業にとって異文化文脈の理解は欠かせない。
著者
高橋 伸治 佐々木 康成
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.48-57, 2020-03-04 (Released:2020-03-04)
参考文献数
5
被引用文献数
1

「移動者」とは通勤や通学で移動中の生活者のことで,本研究では主に鉄道を利用して通勤する「移動者」を対象とする。その「移動者」は鉄道利用者であり,駅ナカや駅チカで買物をする消費者であり,OOHや交通広告のオーディエンスであるが,駅周辺の商業環境が益々充実化し,またスマートフォンやデジタルサイネージの普及により移動中の情報環境が急激に変化する中,潜在ショッパーとしての「移動者」,コミュニケーションターゲットとしての「移動者」が重要な存在になってきている。本研究の狙いはそういった「移動者」の行動特性と心理特性を捉え,それを駅や駅周辺施設のサービス向上や「移動者」との効果的なコミュニケーション手法の開発に結びつけることである。
著者
新井 優太 相島 雅樹 小出 佳世
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.58-66, 2020-03-04 (Released:2020-03-04)
参考文献数
9

現在の不動産ポータルサイトの多くは,沿線から駅と順に物件を絞り込んでいくような探索方法が主流である。しかしそれが,合理的に自分に合った居住地を探索する方法だとは限らない。たとえば,似た特徴を持った街の集団が分かっていれば,街の特徴から選択するような探索方法も可能である。そこで本研究では,住みたい街アンケート個票データから,住みたい街ネットワークを構築し,モジュラリティ最大化による手法を用いることで,空間的・心理的距離が近く,似た特徴を持つ街の集団を圏域として抽出することを試みた。その結果,首都圏を75の圏域に分割することができた。さらにコレスポンデンス分析を用いることで,各圏域についての特徴付けを行った。