著者
井上 優
出版者
ココ出版
雑誌
一橋日本語教育研究
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-12, 2015-03-28

この文章では次のことを述べる。①言語の対照研究は,言語研究の一分野ではなく,言語を研究する際のスタイル・立ち位置である。②他の言語と比べて考えることは,対照研究だけでなく,個別言語研究においても重要である。③日本語研究の立場から対照研究をおこなうことは,日本語研究者の役割の一つである。④おもしろい対照研究にするためには,「何が問題の本質か」を常に考えながら研究をおこなうこと,そして,ふだんから異なる言語の研究者と直接話をしながら研究をおこなうことが重要である。⑤言語を比べて考えることは言語について分析的に考えるセンスを磨くのに役立つが,学生(特に留学生)が対照研究を研究テーマにするのがよいかどうかは,それとは別に考える必要がある。
著者
有田 佳代子
出版者
ココ出版
雑誌
一橋日本語教育研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-46, 2014-02-14

東京都世田谷区と新潟県新発田市の公立小中学校では、構造改革特区認定による自治体独自の教科「日本語」が全児童生徒への必修科目となっている。一方、日本語教育では、非母語話者だけではなく、母語話者に対する関与と貢献の必要が昨今主張されている。小論では、二者の連携の可能性を探るための基礎研究として、日本語教育が母語話者に貢献しようとする理由としての3つの視点から、教科「日本語」の教科書のなかにその接面があるかどうかを検討した。その結果、(1)両者の共通点は随所で見いだせ、特にメディア・リテラシーに関しては教科「日本語」から学ぶべき点が多いこと、(2)「多言語・多文化共生を目指す教育」に関する内容は、教科「日本語」に補われるべき点として日本語教育の視点から指摘しえること、が明らかとなった。
著者
朴 宰怜
出版者
ココ出版
雑誌
一橋日本語教育研究
巻号頁・発行日
no.3, pp.97-102, 2015-03-28

「ら抜きことば」は実生活で幅広く使われている表現だが、「ら抜きことばは日本語の乱れ」といった否定的な認識がまだ残っているため、年配者相手や面接、教育などの改まったことばづかいが必要とされる場面では使わないのが礼儀とされている。本稿では、「ら抜きことば」が本当に標準語において認定されていない「乱れたことば」なのかを研究するため、「ら抜きことば」研究の権威である井上史雄氏の文献を参考に「ら抜きことば」の定義と変遷を調べた。さらに、今日の「ら抜きことば」の実態を把握するためアンケートを行って「ら抜きことば」の諸相を調査し、分析した。
著者
ユン ドングン
出版者
ココ出版
雑誌
一橋日本語教育研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.107-118, 2014-02-14

日本語学習者にとって、「敬語」が難しい最大の理由はそれが規則的なものというより語用論的なものであるためである。本稿では、スピーチレベルシフトの実態をドラマのスクリプトを用いて記述した。その結果、「ダ体→デスマス体」「デスマス体→ダ体」のいずれにおいても、「動かす」目的よりも「伝達」目的の方が、「垂直関係」よりも「水平関係」の方が、「継続的」な場合よりも「一次的」な場合の方がスピーチレベルシフトが起こりやすいことがわかった。
著者
庵 功雄
出版者
ココ出版
雑誌
一橋日本語教育研究
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-12, 2012-07