- 著者
-
劉 銀炅
- 出版者
- 中央大学国文学会
- 雑誌
- 中央大学国文 (ISSN:03898598)
- 巻号頁・発行日
- no.58, pp.17-31, 2015-03
夏目漱石の満韓旅行記「満韓ところどころ」をめぐって、「韓」の部分を書かないまま連載を中止した漱石の意図を、伊藤博文暗殺事件との関連から考察した。伊藤博文が暗殺されたハルビンを、約一ヶ月前に漱石も訪れていた。暗殺場所にいた人々に迎えられ満洲旅行をした漱石にとって、その事件は、他人事とは思えなかったであろう。暗殺者として知られる人物が韓国人の安重根であり、漱石が経験した韓国や、当時の日韓関係を考えると、一連のことが「満韓ところどころ」の連載中止に影響を与えたことが分かる。本論文は、「満韓ところどころ」の連載中止をめぐる以上のことから、漱石の韓国観を窺うことが目的である。