- 著者
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鈴木 俊幸
- 出版者
- 中央大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
本研究は、近世から近代初頭にかけての時代、信濃地域に対象を絞り、書籍・摺物に関わる一連の文化的事象の証跡を網羅的に収集し、当時における文化状況を立体的に復元することを目的とした。すなわち、信濃において製作・発行された書籍・摺物、また信濃人蔵版書の網羅的な調査に基づき、藩版・町版・寺院版を含め信濃における出版活動、書籍流通、享受の全貌、またそれらの連関について明らかにしようとしたものである。そのための基礎作業として、まず、明治20年を下限に、信濃において製作・発行された出版物の調査を行った。さらに、貸本屋や小売専業の本屋は、地域における書籍文化の環境のきわめて重要な要素であると考え、仕入印・貸本印、また、明治初頭の書籍に付された売弘書肆一覧記事から信濃地域の書商の記事を抽出し、信濃地域における書商とその営業内容のリストを作成した。これらは、これまでまともに研究されてこなかった書籍流通の実態をも浮き彫りにしうる基礎データである。次に、信濃地域における彫工、活版印刷業者等業者を洗い出した。摺物所や製本業者も調査対象に加えた。これらはいずれも地域における印刷・出版の前提となる要素である。また、藩・代官、寺社、個人篤志による出版書、また施印本も地域の書籍文化を考える上で逸することができないものであり、これについてのデータ収集も行った。寺社境内図等の名所絵図類は、一枚摺の片々たるもので、見落とされがちな分野であるあるが、地方における出版文化の雄である。これらについては特に意を用いてデータ収集を行った。上記の作業に、寺院・旧家の蔵書等書籍享受に関る資料調査も平行して行い、それらを総合して信濃における書籍文化の具体相について考察してきた。また、書籍を研究対象とする研究者間の情報疎通促進をはかる目的で『書籍文化史』という雑誌を年一回のペースで第一集から第四集まで発行した。