著者
肖 越
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.45-66, 2010-03-25

本論は,次の四つの側面から「初期無量寿経」成立史における『無量清浄平等覚経』の役割を中心に検討した。まず,「初期無量寿経」成立史における『無量清浄平等覚経』の位置を検討した。次に,〈無量寿経〉最古訳の『大阿弥陀経』の原型を研究するにあたって,『無量清浄平等覚経』の意義を示した。次に,〈無量寿経〉諸訳の国土観の変遷を踏まえながら,『無量清浄平等覚経』の仏名としての「無量清浄」は,「浄土」の用語の元であり,『無量清浄平等覚経』が初期中国浄土教の成立において,重要な位置を占めることを示した。最後には,『無量清浄平等覚経』が『無量寿経』の翻訳に影響を与えたことを指摘し,更に中国初期浄土教の成立における『無量清浄平等覚経』の役割を纏めた。
著者
山中 行雄
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-126, 2010-03-25

1982年John Brough によって,あるガンダーラ仏像の台座に刻された碑文が阿弥陀仏と観音菩薩に言及したものであると報告され,注目を集めた。さらに,John Brough はこの碑文の年代を紀元後2 世紀と推定した。その後,この碑文の解釈を巡って議論がなされたが,未だ最終的な解決が出たわけではない。一方,パキスタン北部で発見された碑文群は,北西インドの仏教信仰の実情を研究する上で大きな意味を持ち,本稿で論じる当該のカローシュティー碑文を考察する上でも,示唆に富むものである。本稿では,これらのパキスタン北部碑文資料を参照しながら,当該碑文を再検討しガンダーラ地域における阿弥陀信仰を論じる。
著者
青山 忠正
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.61-74, 2001-03-25
著者
熊谷 貴史
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.63-85, 2011-03-25

仏教には高僧らが神秘的な宗教体験によって仏・菩薩などの形姿を観じ、〈感得〉するという概念がある。またその感得により得た視覚的イメージを、彫刻や絵画で表したものを〈感得像〉という。宗教概念である〈感得〉と造形化された〈感得像〉が不可分の関係にあろうことは言を俟たないが、そこに内在する宗教的意義の解釈と、像に対する仏教美術としての芸術的評価は多くの場合別個に論じられ、宗教性と芸術性が結び付けられることは概して少ない。本稿の目的は〈感得〉の概念を大局的に捉え直すことにより、具現化された〈感得像〉の意義を再考することにある。すなわち〈感得〉とは規範を前提としない尊容の獲得であり、初発的性質が評価される事象と考えられる。その初発的なイメージを反映する〈感得像〉は、図像的要素のみでは解釈し得ない、神仏顕現の奇跡を具現化しようとする全体観における異相(威相)の表現によって、本来の意義が見出される可能性を指摘する。