著者
吉田 右子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.390-403, 2000-03

アメリカにおいて1947年からALAの指揮のもとで行われた「公共図書館調査」の成果報告レポートの中から,リー(Robert D. Leigh)の著作The Public Library in United States : The General Report of the Public Library Inquiryについて討究する。調査代表者であったリーは,調査結果を資料・サービス・政策過程・図書館専門職・予算・管理に分割し,テーマごとに調査成果を総括し評価を行った。リーの公共図書館論は,多様なメディアによって構成されたアメリカの文化コミュニケーション全体を視野に入れて公共図書館の位相を検討することによって,公共図書館活動の針路を見定めようとするものであった。
著者
後藤 敏行
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.320-331, 2007-03

標題の事柄を,文献および事例に基づき整理・分析した。論点には,誰がアーカイビングを担うのか,どの段階のファイルがアーカイビングの対象になるのか,いつ誰がアーカイブにアクセスできるのか,アーカイブの財源をどこから調達するか,がある。既存のアーカイブには,Portico,オランダ国立図書館, LOCKSS,その他の第三者アーカイブや,法定納本制による対応があり,あり方は多様であるといえる。既存のアーカイブのあり方は多様である。今後は,それらの連携協力や,途上国の電子ジャーナルをアーカイビングの対象にすること,個々の機関による貢献,等が求められると考えられる。
著者
薬袋 秀樹
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.208-216, 2003-11

読書案内サービスの提供方法を,①読書案内デスクで司書が行う方法(読書案内デスク方式),②貸出カウンタ一等で司書が貸出・返却・配架と一緒に行う方法(貸出・司書方式),③司書職制度のない図書館で行われている貸出カウンタ一等で司書と事務職の混成集団が貸出・返却 配架と一緒に行う方法(貸出・混成方式)の三つに分類し,必要な職員配置について検討した。その結果,②の方式は,担当職員が全員司書有責格者でなければならないため,司書職制度のない多くの公立図書館では事実上不可能であることが明らかになった。
著者
後藤 敏行
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.190-203, 2012-09-01

RFID (Radio Frequency Identification)を用いた図書館システムがわが国の図書館に普及しつつある。本稿は,図書館RFIDの導入館を対象に自由記述の質問紙調査を実施することによって,貸出・返却業務,蔵書点検業務,および不正帯出防止機能という,図書館RFIDの代表的な3機能について,現状における課題を考察する。44館からの回答を分析した結果,読み取り性能がより良く,関連機器がより使いやすく,壊れにくく,現状にはない新しい機能を備えたRFIDを,より安い価格で図書館が求めていることが明らかとなる。
著者
奥泉 和久 小黒 浩司
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.158-167, 2003-09-01

敗戦直後の青年会活動は戦前の活動の延長線上にあった。青年会図書館も同様であり,長野県下伊那郡上郷村では,戦後,青年会に図書館運営が委託されたものの,図書館長には国民学校長が充てられるなど戦前の図書館運営を踏襲していた。ところが,上郷図書館に村の診療所が併設され,青年たちの図書館活動は大きな制約を受けることになった。この頃青年会では自主的な図書館運営をめざすべきだとの議論が起こり,青年たちは図書館を自らのものとし,図書館を診療所から独立させるための運動をすすめることになった。青年たちは,図書館を本来の姿に取り戻すため,民主化運動の一環としてこの運動をとらえ,図書館長の選任についても議論を重ね,図書館規程を改正するなど自主的な管理・運営体制を実現した。また,青年たちはこの運動をとおして,図書館の運営主体であると同時に,図書館を維持・発展させるため,自ら読書をしたり議論し交流する場を求める,いわば利用者としての主体を形成していく必要性を明らかにした。
著者
小黒 浩司
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.174-184, 2009-09-01
被引用文献数
1

長野県上田市立上田図書館には,1925年以来書き継がれてきた同館の『日誌』がある。本稿ではこの『日誌』に見える発禁図書没収の記録を中心に,長野県内他館の記録などを用いて,戦前・戦中期の図書館統制の歴史を検証した。その結果,図書館に対する統制は,1930年代に入って次第に強化されたことを明らかにした。さらに1940年代になって大量処分が繰り返され,図書館に対しても極めてきびしい取締りが行なわれたことを論証した。
著者
宮崎 真紀子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.434-441, 2001-11-10

日本の戦前の図書館には婦人室があった。それは義務づけられたものではなかったが設置することが望ましいとされ,女性へのサービスの一環ともみなされていた。確かにその部屋は狭く,現代の感覚からすると押し込められた,というイメージでとらえられてしまうが,当時の状況を考えると,違う姿が浮かび上がる。婦人室を中心に,女性の図書館利用,そして図書館は女性利用者をどう見たかを考察する。
著者
村田 弘
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.60-65, 1952-08
著者
竹内 秀樹
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.345-354, 2001-09-01

我が国図書館界において資料保存への本格的な取り組みが開始されたのは,酸性紙問題が広く知られるようになった1980年代のことである。近代の抄紙技術を用いて製造された用紙は耐久性に乏しく,紙中の酸の作用により,わずか50〜100年でボロボロになってしまう。短命な酸性紙の問題を我が国で最初に紹介したのは,金谷博雄氏の『本を残す-用紙の酸性問題資料集』(1982年)とされる。この文献が刊行されてからおよそ20年を経て,資料保存問題への認識・方法論は着実に浸透しつつある。また,それを支える技術面においても数々の成果が生み出されている。しかし,全国,地域,個々の図書館,それぞれのレべルにおける組織的・体系的な保存対策の立案・実施という観点からみれば,課題は多い。一方,1990年代以降の情報処理・通信技術のめざましい進展により,図書館においてもCD-ROM形態やインターネットを通じて頒布される電子出版物が多くの図書館で収集・提供されている。これらデジタル技術を用いて記録・頒布される資料をどのように収集・保管し,長期に保存するか,資料保存の分野においても新たな問題領域が出現している。本稿においては,1993年以降の文献をもとに,「酸性紙問題への取り組みの進展」及び「新たな問題領域への対応」という2つの観点から,我が国における資料保存対策の現状を概観してみたい。