著者
渡邉 斉志
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.536-541, 2007-11-01
被引用文献数
1

ドイツには国立図書館が三館存在しており,単一の巨大な国立図書館が全国の図書館をリードする形にはなっていない。ドイツは連邦制国家であり,教育・文化行政は州の所掌となっている。そのため,国立図書館は他の図書館を指導する立場にはなく,現在進められている図書館振興策においても国立図書館の存在感は希薄である。また,国立図書館は,図書館法がないドイツにおいては例外的に法律に根拠を持つ図書館であり,振興の対象としては,優先順位が高いわけではない。しかし,国立図書館自身も,自ら改革を進めることで,国立図書館としての機能の強化に努めている。
著者
渡邉 斉志
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.58, pp.103-115, 2007

短報Purpose: The Japanese public library community is struggling with the issue of protecting the confidentiality of user information, because this is a key point in obtaining users' trust. The purpose of this paper is to analyze whether the community's efforts are consistent with its aims.Results: Japanese libraries are often requested to delete user information as soon as possible in order to protect user privacy. This policy is not only based on strengthening sensitivity to privacy, but also on the fact that police have ordered the disclosure of user information repeatedly in the past, and, by complying with their legal duties, librarians get labeled asdisloyal. However, it is difficult to implement customized services like Amazon's recommendations without collecting user information, and the lack of such innovative client-centered services causes public libraries to stagnate. Therefore, it is obvious that the library community itself poses the largest hindrance to progress by refusing to improve its own services.
著者
渡邉 斉志
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.66, pp.153-165, 2011

短報【目的】本稿の目的は, 公立図書館におけるレファレンスサービスがどのような状況にあるのかを分析し, レファレンスサービスの位置づけを見直す必要があることを示すことにある。【方法】統計が比較的整備されている静岡, 富山, 神奈川の三県の公立図書館及び都道府県立図書館における平成14年度以降のレファレンスサービスの件数の推移を分析した。併せて, 大阪版市場化テストにおける府立図書館の業務に関する議論からレファレンスサービスに関する論点を抽出し, 検討を行った。【結果】静岡, 富山, 神奈川の三県の公立図書館においては, 蔵書規模に比してレファレンスサービスが活発に行われている図書館ではレファレンス件数は総じて減少傾向にあり, レファレンスサービスが不活発な図書館においてレファレンス件数が増加しているのとは対照的な状況にあることが明らかとなった。また, レファレンス質問の難易度との関連性で見ると, 難易度が低い質問の多寡がレファレンス件数全体の増減を左右しており, インターネットの普及が進む環境下において, 図書館に寄せられるレファレンス質問が難化しているという通説の妥当性はかなりの程度疑わしいことが判明した。このことと, 大阪版市場化テストにおいて提起されたような「レファレンスサービスは過剰サービスである」という考え方が一定程度社会に存在していることとを併せ考えることにより, レファレンスサービスへのリソースの投入が今後も継続可能であると考えるのは楽観的に過ぎること, したがってレファレンスサービスの発達を図るためにはレファレンスサービスの充実が社会的に容認されるようにするための取組みが必要であること, という二点が導き出された。