著者
鹿嶌 達哉
出版者
広島国際大学総合教育センター
雑誌
広島国際大学総合教育センター紀要 (ISSN:24322881)
巻号頁・発行日
no.4, pp.35-53, 2020-02

論文要旨:ホームレス問題では本人の責任を重視する「よくある素朴な見方」と種々の社会問題を重視する「支援者側の見方」が対立することが多い。大学生が支援者の講演を聞く前後の見方を調べ、その変化と上記2つの見方との対応性を検討した。さらに、2018年に告示された教科「道徳」とホームレス問題との関連を考察した。野宿者襲撃(いじめとの同型性が指摘されている)、ホームレス生活者に対する偏見と差別等は、本来道徳教育が解決すべき問題であるが、今回の改訂では自主・自律、節度、遵法精神・公徳心、社会正義、社会参画・公共の精神、勤労、家庭生活の充実、集団生活の充実等を重視するあまり、ホームレス生活(者)を否定・排除する背景・理由づけとなる危険性がある。「あるべき姿」を教える道徳教育に対して、現実の悪(人・社会・私の中にある)への向き合い方を示した発達的モラルレジリエンスモデルの道徳教育における可能性も併せて考察した。
著者
鶴田 一郎
出版者
広島国際大学総合教育センター
雑誌
広島国際大学総合教育センター紀要 (ISSN:24322881)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-16,

Abstract: In 1933, Rampo Edogawa's paper entitled, "Secret Passion of J. A. Symonds" appeared as a series in the journal named "Psychoanalysis," published by Tokyo Psychoanalysis Science Research Center, supervised by Kenji Otsuki. The paper was not finished after all. This study examined its fourth issue. First, the progress of Rampo's "awareness of unconsciousness" was examined. Furthermore, how Rampo brought back self-projections was examined by considering his later writing activities. The results indicated that Rampo unconsciously achieved awareness of unconsciousness during writing his unfinished paper. His subsequent writing activities were conducted based on this awareness. Especially, his paiderastia was considered to have been sublimated into "Kobayashi," a boy character in "Boys'Detective Team," which is one of Rampo's important works.要約:本稿では、大槻憲二が主宰して いた東京精神分析学研究所が発行する『精神分析』に 1933 年に発表された江戸川乱歩の未完の論文「J · A・シモンズのひそかなる情熱」の内、第四回掲載分について検討・考察を行った。その際、上掲論文において、乱歩の「無意識の意識化」が、どの程度進んだのかを考察の出発点とし、更に、その後の乱歩の創作活動も視野に入れて、乱歩は如何に「投影の引き戻し」 を達成していったのかについて検討した。その結果、4 回にわたる未完の論文の 中で、乱歩自身、意識せずに行っていた「無意識の意識化」を指摘した上で、それが基礎になり、更に、その後の創作活動、特に少年探偵団の小林少年の中に乱歩のパイデラスティアは昇華された、と結論付けた。
著者
山口 雅史 兒玉 安史 笠岡 敏 藤田 貢 堀 隆光
出版者
広島国際大学総合教育センター
雑誌
広島国際大学総合教育センター紀要 (ISSN:24322881)
巻号頁・発行日
no.5, pp.21-30, 2021-03

大学教育で問題となる留年について解析した。留年生には「入学時学力」が不足している者が多いが、入学時学力と大学での学修成果である評定平均には進級するにつれて相関性はなくなった。そこで、評定平均と学力にとらわれない行動因子(非認知能力)の関係性について解析したところ、評定平均とセルフコントロール尺度、ならびに性格5因子の一つである良識性には正の相関性があった。一方、評定平均と性格5因子の一つである情緒安定性には負の相関性があった。以上の結果は、これらの行動因子が学力不振に陥りやすい学生に対する早期指導、及び留年防止のための有用な指標になることを示唆している。
著者
飯野 矢佳代 中井 伸治
出版者
広島国際大学総合教育センター
雑誌
広島国際大学総合教育センター紀要
巻号頁・発行日
no.5, pp.73-88,

本研究の目的は、文献レビューを通して看護教員に「求められる能力」の特徴を明らかにすることである.医学中央雑誌WEB版を用い「看護教員」「能力」に関する18件の文献を分析対象とした.結果,看護教員に求められる能力のコアカテゴリーは「教育実践能力」「看護実践能力」であり,「教育実践能力」のサブカテゴリーは, 1)指導技術2)学生理解3)コンピテンシーの発揮4)調整能力,「看護実践能力」サブカテゴリーは,1)看護過程の展開・応用2)ベッドサイドケア3)医療支援4)健康生活支援5)人間尊重6)健康環境調整7)健康問題査定能力であった. 教育実践能力,看護実践能力ともに,学生・患者家族をありのまま受け止め,根気強く支える「人間性」,どの場面でも倫理的立ち振る舞いを意識する,保健医療福祉への権利意識を持ち合わせる「倫理観」,看護実践がいい方向へ進むよう,研究成果の収集と実践への活用「自己研鑽」,看護方法の改善・看護学発展への探求「研究」が必要という結果が見い出された.
著者
鶴田 一郎
出版者
広島国際大学総合教育センター
雑誌
広島国際大学総合教育センター紀要 (ISSN:24322881)
巻号頁・発行日
pp.23-39, 2016

Rampo Edogawa's a paper "Secret Passion of J. A. Symonds-1st-"(1993) has been considered by this article. His papers were published over 4 times, but it had ended incompletely. The first time carrying part of the papers in the 4-time-series is made a subject of research this time. His papers were published by a "Psychoanalysis" magazine originally. This magazine was the scientific journal that Tokyo Psychoanalysis Science Research Center had been issued. Mr. Kenji Otsuki who had a pioneer of psychoanalysis in our country by himself was supervising the research center. When a theme is narrowed down to "Greek Love", "homosexuality", and "paiderastia, or boy-love", the "analysis on John Addington Symonds" of the Rampo's paper(1st) was very sharp and excellent. But, when from the view point of psychoanalyzing it, I said it was insufficient. Then, I will try re-interpretation of three dreams that Symonds saw. In the case, comparison of Plato's "carriage of two building" is quoted.