著者
森 均
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-15, 2012-01

スクールリーダーは、あらゆる場面において人権尊重をベースに教育活動を行うことを教職員に指導する必要がある。本論考においては、筆者が平成23(2011)年度の大阪府高等学校進路指導研究会の会長として遭遇したさまざまな事案の中から、近畿高等学校統一応募用紙の履歴書に関わる事案を検証し、人権尊重上不適切な事案を決して見逃すことのないスクールリーダーとして感覚について、近畿高等学校統一応募用紙制定の趣旨をもとに論じる。
著者
吉田 佐治子 Sachiko YOSHIDA
雑誌
摂南大学教育学研究
巻号頁・発行日
vol.7, 2011-01

"絵本の読み聞かせ場面における親子のやりとりを長期にわたり追跡し,横断的・縦断的に検討したものを概括した.追跡調査は継続中であるが,0歳から4歳までの経過からは,各親子で独自の読み聞かせスタイルがあること,そのスタイルは,こどもが発達しても大きくは変わらないことが示された"
著者
村田 俊明 ムラタ トシアキ Toshiaki MURATA
雑誌
摂南大学教育学研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-82, 2009-01

最近における教育改革の中で、教員の資質向上に係る動向が注目される。教員免許法改正を機に、教員の人事考課、教職大学院、免許更新制の導入、自治体による教師養成塾、あるいは高等学校における「教育コース」の設置の動きなどがあり、教員養成のあり方を抜本的に問い直すべき状況がある。本稿では、一部自治体あるいはその教育委員会による「教師塾」開設の動きについて考えてみたい。東京都をはじめとして、大阪府・市、堺市、京都市などに「教師塾」が設けられ、特に教員確保が喫緊の課題であるいくつかの大規模都市自治体では、行政が教員養成の一端を担い始めている。規制緩和と分権化が推進される教育改革の下で、「大学養成制」と「開放制」を原則としてきたわが国の戦後教員養成制度が、新自由主義と新保守主義による改革の波に揉まれつつある。そこに教員養成そのものを行政責任の対象と捉え、大学における教員養成を主導し、場合によっては大学の養成段階を飛び越す構造へ向かう契機と問題性が含まれているのではないか。本研究の意図は、大学で教師養成に関わる一教師として、この動向をどう考えたらよいかを考察するものである。そこで、自治体およびその教育委員会による「教師塾」の取り組みを整理し、開設の背景とその問題に関する研究の覚書としたい。「教師塾」とは何なのか。わが国の教員養成・採用・研修政策上、どのように位置づけられるのか。「教師塾」の何が問題なのかといった点について考察した。
著者
小森 伸子
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-44, 2009-01

学生の「読書離れ」という問題は以前から指摘されているが、そもそも読書を行う学生にとって「読書」とはどのようなものを読むのかにっいて調査したものは少ない。本研究は、大学生を対象にどういったものを「読書」の対象ととらえているのか、大学生の「読書概念」を明らかにすることを目的とした。大学生54名を対象に、様々な文字を使ったメディア・ジャンルをとりあげ、それぞれの対象について「読む」・「読書」という言葉がどれくらい適切かを判断させるアンケートを行った。結果を集計すると、文字を使っていても時刻表やインターネットサイトなど「読む」にも「読書」にも入らないジャンルの他に、漫画・コミックや雑誌のように「読む」には適切だが、「読書」とはいわないジャンルの存在が確認された。「読書」の適切度は小説がもっとも高かった。漫画やインターネットなど様々なジャンルに接しているであろう大学生だが、その中で小説が「読書」という概念にもっともあてはまるジャンル、対象であることが明らかになった。
著者
村田 俊明
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-76, 2007-01

わが国では、いま道徳意識の低下や社会規範の崩壊が問題になっている。これらの諸現象は必ずしも学校・教師だけの責任ではなく、家庭・地域社会の教育力低下、より広く大人社会や社会的な風潮、あるいは教育政策などの反映である場合が少なくないかもしれない。けれども、学校で道徳教育に携わる教師の責任が全く問われずにすむものでもない。こうした状況に鑑み、将来「道徳」の授業を担当する受講生が、どのような基礎的指導力を身につけておかなければならいかは、教職科目「道徳教育の研究」の課題でもある。本稿では教員をめざす受講学生を対象にした筆者の「道徳教育の研究」の実践を報告する。教職科目の「道徳教育の研究」では、『授業計画』に示すとおり、教職志望をもつ学生が、教員免許法に基づいて修得すべき教職教養として、道徳教育の歴史や子どもの道徳性の発達、さらには『学習指導要領』の内容等について総合的に計画している。受講生は、これらの内容を半期間で習得するのであるが、筆者はより実践的な「学習指導案づくり」を中心とした授業を行う必要を感じ、「道徳」の学習指導案が書けることを「道徳教育の研究」の主要な目標の一つと考えている。なぜなら、学習を構想できなければ、授業はできないからである。特に「道徳」の学習指導案づくりで重要なことは、指導する側の「ねらい」、すなわち「中学生に気づいてほしい、あるいは考えてほしい」ことは何であるかを明らかにし、中学生が「自分とむき合う」道徳の指導とは、どうあればよいかを考えてほしいという点である。
著者
朝日 素明
出版者
摂南大学
雑誌
摂南大学教育学研究 (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-32, 2009-01

本稿は、摂南大学教職教室が2008年2月から4月にかけて東京都を除く関東甲信地方8県に所在する市町村教育委員会を対象として実施した質問紙調査(「関東甲信8県市町村教育委員会調査2008」)の、単純集計結果では報告しきれない自由記述回答を部分的に紹介し、若干の考察を加えることを目的としている。我々がこの調査を実施したのは、時期的には地教行法一部改正法が成立し改正地教行法が施行される前後になる。したがって、この度の地教行法改正の概要は我々が2005年に行った調査の時点では明示的ではなかったことから、今回の調査は前回調査と時期的な比較対照が可能であるとも考えられる。本稿はこうした観点から、この度の地教行法改正の概要に即して調査の結果を補足検討しようとするものである。まず教育委員会の組織について、教育委員の本務職業は無職が圧倒的に多いほかは、比較的、実務時間が自律的に調整可能な職業が上位に並んでいる。また、教育長を除く一教育委員会の構成人数を4人として算出すると、児童生徒の保護者が0.66人となり、前回調査時点から倍増していることから、教育委員として保護者を選任することを義務化した2007年の地教行法一部改正法の影響が現れたとも推察できる。教育長の多くの回答からは、教育委員に選任される保護者の代表性を担保するための工夫は窺うことができなかったが、PTA役員経験が現実的だと捉えられているようだ。さらに、保護者が教育委員として会議に臨む際の配慮事項として、保護者の立場からの意見を尊重しようとする配慮と守秘義務への配慮の二つが特に目立った。次に教育委員会の設置単位について、3割弱の教育長が市町村の連合(共同設置)による広域化を望ましいと答えていた。