著者
桃田 幸弘 高野 栄之 可児 耕一 松本 文博 青田 桂子 山ノ井 朋子 高瀬 奈緒 宮本 由貴 小野 信二 東 雅之
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.53-59, 2016-12-25 (Released:2017-04-12)
参考文献数
37

口腔顎顔面領域に発症する神経障害性疼痛は従来の薬物療法(非ステロイド性抗炎症薬,いわゆるNSAIDs)が奏効し難く,対応に苦慮する.1990年代,米国において新しい疾患概念として口腔顔面痛が提唱され,本邦においても,その対策は喫緊の課題とされる.近年,プレガバリン・トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(T/A錠)・加工附子末などが用いられ,その経験が蓄積されつつある.今般,われわれはプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤の三剤併用が奏効した口腔顔面痛の3例を経験したので報告する.患者は男性1名,女性2名,年齢50~81歳(平均65歳)であった.全例に対してプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤を併用し,痛みは緩解もしくは消失した.特記すべき有害事象は認められなかった.口腔顔面痛に対するプレガバリン,T/A錠および加工附子末製剤の三剤併用の有用性が示唆された.
著者
奥田 恵司 佐久間 泰司 前田 照太 岡崎 定司
出版者
Japanese Society of Orofacial Pain
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-13, 2012

目的:咀嚼障害や歯の欠損と全身の健康との関係が注目されているが、咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響はいまだ解明されていない部分が多い.そこで本論文では筆者が携わった動物実験をもとに咀嚼障害が脳機能に及ぼす影響の一部を解説する.<br>研究の概要:研究1:ラット18匹を用い4週齡で上顎臼歯をすべて抜歯した抜歯群,同量の麻酔のみを施した麻酔群,いかなる処置も行わない無処置群の3群を設定した.脳内マイクロダイアリシス法にてテタヌス刺激を与えた海馬の機能時のグルタミン酸放出量を測定した結果,抜歯群で有意にグルタミン酸の放出量が低下した.研究2:5週齡のラット16匹を用い5週齢で上顎臼歯をすべて抜歯した抜歯群と同量の麻酔のみを施した対照群の2群を設定した.テレメトリーバイオセンサーシステムを用い受動的回避実験中の海馬のグルタミン酸放出量を測定した結果,獲得試行では抜歯群が有意に少なく,保持試行では両群に有意差はなかった.<br>考察:早期に臼歯を失うことは咀嚼障害のみならず,海馬のグルタミン酸のシナプスにおける遊離量を減少させ,神経生化学機能に障害を及ぼす可能性が示唆された.<br>結論:早期の臼歯喪失が学習記憶の障害を誘発する一要因になりうることが明らかとなった.
著者
石垣 尚一 廣川 雅之 矢谷 博文
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.15-19, 2009 (Released:2011-02-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:顎関節症を始めとする慢性疼痛疾患は女性に多くみられ,このような性差の存在について種々の観点から仮説が提言されているが,その解明には至っていない.本研究の目的は,三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値の性差を明らかにすることである.方法:被験者として健常成人80名(男女各40名,平均24.7歳)を選択した.三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値の測定には,定量的感覚検査機器(TSA-II®, Medoc)を用い,両側頬部皮膚に温度刺激を加えた.性差,左右側差の影響の有無について二元配置分散分析を用いて検討を行い、平均値の差の検定にはt検定を用いた.解析にはSPSS Statistics® 17.0を用いた.結果:温刺激に対する知覚閾値には性差が有意に影響しており(P=.001),女性の温刺激に対する知覚閾値の平均値は男性に比べ有意に低かった(P=.001).冷刺激に対する知覚閾値には性差の影響を認めなかった.温刺激に対する疼痛閾値にも性差が有意に影響しており(P=.003),女性の温刺激に対する疼痛閾値の平均値は男性に比べ有意に低かった(P=.003).冷刺激に対する疼痛閾値には性差の影響を認めなかった.いずれの計測値にも左右側差の影響を認めなかった.結論:三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値には性差が存在し,温刺激時の知覚閾値および疼痛閾値は女性が男性に比べて低いことが明らかとなった.