著者
峯 篤史 松本 真理子 伴 晋太朗 矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.115-123, 2022 (Released:2022-04-27)
参考文献数
18

CAD/CAMレジン冠が保険導入されて8年をむかえようとしている.この間,本治療法の向上のために日本補綴歯科学会会員は,基礎研究データおよび臨床エビデンスを蓄積してきた.本稿ではその成果である「現在推奨されている接着技法」,「全臨床アウトカム」をまとめ,それらの最新情報から導かれる「具体的な臨床術式」および「患者説明のあるべき姿」を提案する.CAD/CAMレジン冠の治療を成功させる要素は多岐にわたり,歯科医はこれらを総合的にマネージメントする必要がある.さらに,新規メタルフリー治療として日本からの発信を達成するために刷新すべきドグマや臨産官学民連携について吟味したい.
著者
矢谷 博文
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.36-43, 2018-04-20 (Released:2018-05-14)
参考文献数
53

顎関節症のリスク因子には,外傷,解剖学的因子,病態生理学的因子,心理社会学的因子など多くのものがあることが知られており,そのうち単一の因子,あるいは複数の因子の複合によって発症するものと考えられる。すなわち,顎関節症の原因は患者によって異なっており,生物心理社会学的モデル(biopsychosocial model)の枠組みのなかで,病歴聴取を含む臨床的診察や検査結果を基に,目の前の患者ごとにそれらの複数のリスク因子のなかから推定されるべきである。咬合因子の顎関節症発症における役割について論じた質の高い文献は依然少ないものの,それらの文献は,咬合因子は顎関節症発症のリスク因子の一つにすぎず,咬合が発症の最重要因子となっている症例は決して多くはないというエビデンスを一致して示している。このことは,不可逆的治療である咬合治療は顎関節症の治療法の第一選択ではなく,保存療法,可逆療法を優先すべきであるというメッセージをわれわれに伝えている。
著者
山口 哲 大谷 恭史 矢谷 博文 荘村 泰治
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, 2009-09-10
被引用文献数
1

As dental implants have become an established dental treatment, the number of applications to difficult and aggressive cases has increased. To overcome these difficulties and realize safe and precise surgery, computer-assisted navigation systems have been developed. In conventional systems, surgeons feel anxious intra-operatively because they have to operate instruments in the oral cavity while watching a surgical monitor. Thus, we develop novel surgical navigation system by combining the retinal projection head mounted display (RPHMD) and the augmented reality (AR) techniques. In this paper, we propose an image overlay procedure based on the RPHMD and verify its accuracy.
著者
矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.209-224, 2020 (Released:2020-08-13)
参考文献数
56

目的:オールセラミックカンチレバーブリッジの生存率,成功率と合併症に関する系統的文献レビューを行い,評価すること.方法:オールセラミックカンチレバーブリッジの生存率,成功率,失敗のリスクファクターならびに合併症について記載された文献について,適切なMeSHの選択と包含基準の設定を行ったうえで,PubMedからコンピュータオンライン検索を行った.検索された文献の抄録を精読してさらに文献を絞り込み,最終的に15論文を選択し,レビューを行った.結果:得られた結果は以下のとおりである:1)生存率と成功率の考察は,異なる10のコホートの患者302人,ブリッジ381個の臨床成績を対象とした,2)MIを具現化する少数歯欠損補綴法としてのカンチレバーブリッジ,特に接着カンチレバーブリッジの生存率,成功率は高く,2リテーナー型の接着ブリッジよりも優れた臨床成績が得られている,3)症例選択はカンチレバーブリッジ成功の重要な要素であり,欠損部位としては,上顎側切歯,上顎中切歯,下顎切歯,上下顎小臼歯が適しており,欠損歯数は1歯で支台歯は生活歯であることが望ましい,4)使用材料としては,最近はガラスセラミックスに代わって高密度焼結型ジルコニアが用いられるようになっており,材料として最も適切と考えられる,5)合併症の出現率は総じて低く,特に生物学的合併症の出現頻度はきわめて低く,ほとんどが脱離をはじめとする技術的合併症である,6)接着カンチレバーブリッジを成功に導くためには,2リテーナー型接着ブリッジにおいて確立された接着技法を遵守することが重要であり,装着にはMDP含有の歯科用接着材が適している.結論:オールセラミックカンチレバーブリッジ,特に接着カンチレバーブリッジの生存率,成功率は高く,また従来型2リテーナー型ブリッジを上回る利点を多く有し,メタルフレームを用いたカンチレバーブリッジとともに少数歯欠損補綴法の1オプションに加えられるべきである.
著者
峯 篤史 萩野 僚介 伴 晋太朗 松本 真理子 壁谷 知茂 矢谷 博文
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.135-141, 2022-05-25 (Released:2022-06-20)
参考文献数
13

2014年に保険導入されてから8年間で,CAD/CAMレジン冠は日本の臨床に着々と普及してきている.この新規補綴装置の質を向上させるために,わが国は「臨産官学民連携」で奮起してきた.臨床研究の成果として4年予後調査では,小臼歯CAD/CAMレジン冠の生存率は96.4%であり,脱離をトラブルと捉えた場合の成功率は77.4%であった.基礎的データの蓄積も進み,マトリックスレジンを被着対象としたレジンプライマーの有用性が明らかとなっている.このように,CAD/CAMレジン冠の臨床と基礎研究から,さらなるコンポジットレジン系材料としての可能性がみえてきている.今後,「日本独自のメタルフリー治療」が確立されるために,歯科理工学会にも強く期待せずにはいられない.本総説の内容は第78回日本歯科理工学会学術講演会(担当校:岡山大学)における学会主導型シンポジウム「さらなるコンポジットレジン系材料の可能性を探る!」で発表した.
著者
玉本 光弘 名原 行徳 矢谷 博文 小谷 博夫 浜田 泰三
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.1018-1022, 1984
被引用文献数
3

義歯性口内炎の原因の1つとして, デンチャー プラーク中の真菌が重要な役割を演じていると考えられている. したがって, 真菌を含んだプラークを除去する目的で, 義歯洗浄剤を使用することは, 義歯性口内炎の予防および治療にとって有効な手段と考えられる. しかし, 従来の義歯洗浄剤の洗浄効果の研究は, 肉眼的な義歯の汚れ除去効果のみに主眼を置いたものであった. そこで, 本研究では, 義歯性口内炎の治療および予防に主眼を置いた義歯洗浄剤の洗浄効果の評価のため, 従来の肉眼的な評価法と, 新たに義歯性口内炎の原因菌と考えられている真菌を検出する簡易培地であるストマスタットを用いた評価法の有効性を検討した.
著者
矢谷 博文
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.190-198, 2005-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
32
被引用文献数
1

目的: 補綴臨床が8020運動にどのような臨床的インパクトを有しているかを知るため,(1) 歯質欠損あるいは少数歯欠損を補綴することで支台歯の寿命は延びるか,(2) 補綴治療は補綴をしていない残存歯の寿命を延ばすことに貢献するか, の2つの問いに対する答えを系統的文献レビューにより明らかにすること.方法: 歯冠補綴装置の生存率, クラウンブリッジの支台歯の運命, 部分床義歯装着およびインプラント治療が残存歯の生存に及ぼす影響, および欠損を放置した場合と補綴した場合の残存歯の喪失率について, 適切なMeSH (Medical Sublect Headings) の選択と包含基準の設定を行ったうえで, PubMed からコンピュータオンライン検索を行った. 検索された文献の抄録を精読してさらに文献を絞り込み, レビューを行った.結果: 得られた結果は以下のとおりである.(1) クラウンブリッジは, 装着後13年以上経過すると急速にトラブルが増加し, 15年で約1/3, 20年で約1/2が機能しなくなる,(2) 歯質欠損あるいは少数歯欠損をクラウンブリッジで補綴することで支台歯の寿命を延長することができる,(3) 少数歯欠損を放置した場合と比較して, インプラントあるいはブリッジによる欠損補綴は残存歯の寿命を延ばすことに貢献できる.結論: クラウンブリッジおよびインプラント治療は, 支台歯ならびに欠損隣在歯の寿命の延長に貢献できることから, 補綴臨床が8020運動に与える臨床的インパクトは大きい.
著者
中村 隆志 矢谷 博文 古川 惣平 荘村 泰治 絹田 宗一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

マイクロフォーカスX線CTを用い歯科修復物と模型等の断層撮影を行い、得られたデータから歯科修復物の適合性や内部欠陥等を3次元的および非破壊的に評価することを目的に研究を行った。まず歯科修復物の適合性について、Angel Crown(Mddia)、Procera Allceram(Nobel Biocare)、IPS Empress(Ivoclar Vivadent)、4)Estenia Crown(クラレメディカル)の4種類のオールセラミックをマイクロCTを用いて計測し分析した。その結果、1)Angel crownの間隙量の標準偏差は他のクラウンより小さく,安定した適合性を有していると考えられた。2)Procera Allceramはマージンを除き全体的に均一な間隙を有していた、。3)IPS Empressは本実験に用いたCAD/CAMシステムより優れた適合性を有していた.本実験結果より,CAD/CAMオールセラミッククラウンは安定した内面の適合性を有することを,マイクロフォーカスX線CTを用いた三次元的および非破壊的評価により明らかにすることができた。次にEstenia crownを除くの3種類の材料に関して、マイクロフォーカスX線CTを用い、気泡などの内部欠陥の形や大きさ、位置を非破壊的に分析した。その結果、CAD/CAMにより作製されたオールセラミッククラウンは内部欠陥が少なく、試料間でのばらつきも少ないことがわかった.一方で、手作業でポーセレンを築盛する部分では、内部欠陥が多く見られること、また試料によって大きさ、数、場所にばらつきが見られることが示された。以上のように、マイクロフォーカスX線CTを用いることで、歯冠修復物の内部欠陥の存在や適合性を非破壊的に分析することができた。本装置を臨床の場において簡便に使用することができればオールセラミッククラウンなどメタルフリークラウンの破折をより減少させることができると考えられた。
著者
松香 芳三 萩原 芳幸 玉置 勝司 竹内 久裕 藤澤 政紀 小野 高裕 築山 能大 永尾 寛 津賀 一弘 會田 英紀 近藤 尚知 笛木 賢治 塚崎 弘明 石橋 寛二 藤井 重壽 平井 敏博 佐々木 啓一 矢谷 博文 五十嵐 順正 佐藤 裕二 市川 哲雄 松村 英雄 山森 徹雄 窪木 拓男 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.281-290, 2013 (Released:2013-11-06)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

目的:(社)日本補綴歯科学会は病態とその発現機序の把握に基づく適切な補綴歯科治療を国民に提供するために,補綴歯科治療における新たな病名システムを提案した.これは患者に生じている「障害」を病名の基本とし,この障害を引き起こしている「要因」を併記して病名システムとするものであり,「A(要因)によるB(障害)」を病名システムの基本的な表現法としている.本研究の目的は考案した方法に従って決定した補綴歯科治療における病名の信頼性と妥当性を検討することである.方法:模擬患者カルテを作成し,(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会で模範解答としての病名(以下,模範病名)を決定した.その後,合計50 名の評価者(日本補綴歯科学会専門医(以下,補綴歯科専門医)ならびに大学病院研修歯科医(以下,研修医))に診断をしてもらい,評価者間における病名の一致度(信頼性)ならびに(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会による模範病名との一致度(妥当性)を検討した.結果:評価者間の一致度を検討するための算出したKrippendorff’s αは全体では0.378,補綴歯科専門医では0.370,研修医では0.401 であった.Krippendorff’s αは模範病名との一致度の高い上位10 名の評価者(補綴歯科専門医:3 名,研修医:7 名)では0.524,上位2 名の評価者(補綴歯科専門医:1 名,研修医:1 名)では0.648 と上昇した.日常的に頻繁に遭遇する病名に関しては模範病名との一致度が高かったが,日常的に遭遇しない病名は模範病名との一致度は低い状況であった.さらに,模範病名との一致度とアンケート回答時間や診療経験年数の関連性を検討したところ,相関関係はみられなかった.結論:全評価者間の一致度を指標とした本病名システムの信頼性は高くはなかったが,模範病名との一致度の高い評価者間では一致度が高かった.日常的に遭遇する補綴関連病名については模範病名との一致度が高かった.以上から(公社)日本補綴歯科学会の新しい病名システムは臨床上十分な信頼性と妥当性を有することが示唆された.
著者
加藤 隆史 原木 真吾 辻阪 亮子 東山 亮 矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.145-152, 2016 (Released:2016-05-26)
参考文献数
56

睡眠時ブラキシズムは歯科医療の中でも特に関心が高い睡眠関連疾患の一つである.睡眠時ブラキシズムの研究が進むにつれ,歯科医学的な常識だけでSBの診断や臨床の正当性を説明することができない様々な実態が明らかとなってきた.したがって,睡眠時ブラキシズムの診断や治療の新しい展開を切り開くためには,歯科臨床問題中心型の診断や治療だけでなく,病態生理学的な側面を勘案した医学的な診断・治療論理が求められると考えられる.本稿では,睡眠医学領域の視点を踏まえた診断の重要性を提案し概説する.
著者
矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.229-245, 2012 (Released:2012-09-21)
参考文献数
180
被引用文献数
1

本総説は,顎関節症(TMD)の治療法,特に補綴歯科領域のおける保存療法が,歴史とともにどのように変遷を重ねてきたかについて病因論の変遷とともに歴史を追って詳述した.膨大な臨床研究が積み重ねられた結果,現在では,1)TMDは臨床症状の類似したいくつかの病態からなる包括的名称であること,2)生物精神社会的モデルを発症機序の基本とした多因子の病態であること,3)その生物精神社会的モデルの枠の中で各病態の治療や長期的な管理がなされる必要があること,4)各病態とも症状の自然消退の期待できる(self-limiting)疾患であるゆえ,まず可逆的な保存治療を優先させること,が共通の理解となった.今後は,TMDの各種保存療法の治療効果を病態別に明らかにするために,治療の結果を測る方法の標準化が強く求められる.
著者
渡辺 和美エリゼッテ 鈴木 一臣 山下 敦 繁田 真人 今井 誠 矢谷 博文 中井 宏之
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.187-191, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
5

歯質被着面に一定期間作用した仮着材は, 接着における阻害因子になることが懸念されている.そこで, 仮着材を作用させた象牙質に対する接着性レジンセメントの接着強さを測定し, 残留仮着材が接着に及ぼす影響について検討した.すなわち, ウシの歯象牙質に種々の仮着材を24時間作用させた後, エキスカベーターを用いて仮着材を肉眼的に付着していない状態まで除去し, この被着面と接着材(パナビア21, クラレ)との接着強さの測定および接着界面の形態をSEM観察した.その結果, コントロールの接着強さは6.9MPaであったが, ハイボンドテンポラリーセメント作用面に3.6MPa, フリージノールテンポラリーパック作用面に4.9MPaおよびテンパック作用面に5.3MPaの値を示し, いずれの仮着材においても低い値を示した.一方, 接着界面のSEM像から, コントロール試料においては約0.5μmの樹脂含浸層が確認されたが, 仮着材を作用させた後の接着界面には樹脂含浸層が生成されていなかった.
著者
石垣 尚一 廣川 雅之 矢谷 博文
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.15-19, 2009 (Released:2011-02-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:顎関節症を始めとする慢性疼痛疾患は女性に多くみられ,このような性差の存在について種々の観点から仮説が提言されているが,その解明には至っていない.本研究の目的は,三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値の性差を明らかにすることである.方法:被験者として健常成人80名(男女各40名,平均24.7歳)を選択した.三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値の測定には,定量的感覚検査機器(TSA-II®, Medoc)を用い,両側頬部皮膚に温度刺激を加えた.性差,左右側差の影響の有無について二元配置分散分析を用いて検討を行い、平均値の差の検定にはt検定を用いた.解析にはSPSS Statistics® 17.0を用いた.結果:温刺激に対する知覚閾値には性差が有意に影響しており(P=.001),女性の温刺激に対する知覚閾値の平均値は男性に比べ有意に低かった(P=.001).冷刺激に対する知覚閾値には性差の影響を認めなかった.温刺激に対する疼痛閾値にも性差が有意に影響しており(P=.003),女性の温刺激に対する疼痛閾値の平均値は男性に比べ有意に低かった(P=.003).冷刺激に対する疼痛閾値には性差の影響を認めなかった.いずれの計測値にも左右側差の影響を認めなかった.結論:三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値には性差が存在し,温刺激時の知覚閾値および疼痛閾値は女性が男性に比べて低いことが明らかとなった.
著者
江草 宏 矢谷 博文 佐伯 万騎男 横田 義史
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究計画は、小分子化合物をId2遺伝子欠損マウスに由来する骨芽細胞および破骨細胞に作用させることで、新たな細胞内分子機構を探索することを目的として行われた。その結果、小分子化合物harmineは、破骨細胞分化に重要な役割をするNFATc1の活性をリン酸化酵素DYRK1Aの阻害を介して増強するが、同時に破骨細胞の分化抑制因子として作用するId2の発現を増強する結果、破骨細胞分化における細胞融合を著明に抑制することを明らかにした。
著者
矢谷 博文 江草 宏 田畑 泰彦 田畑 泰彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,チタンインプラント埋入部周辺の骨組織再生を誘導するための基盤技術を確立することを目的に行われた。チタンインプラントに設けた内空に生理活性物質(b-FGF)を徐放するゼラチンスポンジ生体材料を組み込むことにより,埋入周囲における骨組織新生の誘導が可能であることが明らかとなった。また,骨組織再生を誘導する合成ペプチドおよび小分子化合物を特定し,これらの骨組織再生における役割を明らかにした。