著者
矢谷 博文
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.36-43, 2018-04-20 (Released:2018-05-14)
参考文献数
53

顎関節症のリスク因子には,外傷,解剖学的因子,病態生理学的因子,心理社会学的因子など多くのものがあることが知られており,そのうち単一の因子,あるいは複数の因子の複合によって発症するものと考えられる。すなわち,顎関節症の原因は患者によって異なっており,生物心理社会学的モデル(biopsychosocial model)の枠組みのなかで,病歴聴取を含む臨床的診察や検査結果を基に,目の前の患者ごとにそれらの複数のリスク因子のなかから推定されるべきである。咬合因子の顎関節症発症における役割について論じた質の高い文献は依然少ないものの,それらの文献は,咬合因子は顎関節症発症のリスク因子の一つにすぎず,咬合が発症の最重要因子となっている症例は決して多くはないというエビデンスを一致して示している。このことは,不可逆的治療である咬合治療は顎関節症の治療法の第一選択ではなく,保存療法,可逆療法を優先すべきであるというメッセージをわれわれに伝えている。
著者
山口 哲 大谷 恭史 矢谷 博文 荘村 泰治
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, 2009-09-10
被引用文献数
1

As dental implants have become an established dental treatment, the number of applications to difficult and aggressive cases has increased. To overcome these difficulties and realize safe and precise surgery, computer-assisted navigation systems have been developed. In conventional systems, surgeons feel anxious intra-operatively because they have to operate instruments in the oral cavity while watching a surgical monitor. Thus, we develop novel surgical navigation system by combining the retinal projection head mounted display (RPHMD) and the augmented reality (AR) techniques. In this paper, we propose an image overlay procedure based on the RPHMD and verify its accuracy.
著者
松香 芳三 萩原 芳幸 玉置 勝司 竹内 久裕 藤澤 政紀 小野 高裕 築山 能大 永尾 寛 津賀 一弘 會田 英紀 近藤 尚知 笛木 賢治 塚崎 弘明 石橋 寛二 藤井 重壽 平井 敏博 佐々木 啓一 矢谷 博文 五十嵐 順正 佐藤 裕二 市川 哲雄 松村 英雄 山森 徹雄 窪木 拓男 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.281-290, 2013 (Released:2013-11-06)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

目的:(社)日本補綴歯科学会は病態とその発現機序の把握に基づく適切な補綴歯科治療を国民に提供するために,補綴歯科治療における新たな病名システムを提案した.これは患者に生じている「障害」を病名の基本とし,この障害を引き起こしている「要因」を併記して病名システムとするものであり,「A(要因)によるB(障害)」を病名システムの基本的な表現法としている.本研究の目的は考案した方法に従って決定した補綴歯科治療における病名の信頼性と妥当性を検討することである.方法:模擬患者カルテを作成し,(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会で模範解答としての病名(以下,模範病名)を決定した.その後,合計50 名の評価者(日本補綴歯科学会専門医(以下,補綴歯科専門医)ならびに大学病院研修歯科医(以下,研修医))に診断をしてもらい,評価者間における病名の一致度(信頼性)ならびに(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会による模範病名との一致度(妥当性)を検討した.結果:評価者間の一致度を検討するための算出したKrippendorff’s αは全体では0.378,補綴歯科専門医では0.370,研修医では0.401 であった.Krippendorff’s αは模範病名との一致度の高い上位10 名の評価者(補綴歯科専門医:3 名,研修医:7 名)では0.524,上位2 名の評価者(補綴歯科専門医:1 名,研修医:1 名)では0.648 と上昇した.日常的に頻繁に遭遇する病名に関しては模範病名との一致度が高かったが,日常的に遭遇しない病名は模範病名との一致度は低い状況であった.さらに,模範病名との一致度とアンケート回答時間や診療経験年数の関連性を検討したところ,相関関係はみられなかった.結論:全評価者間の一致度を指標とした本病名システムの信頼性は高くはなかったが,模範病名との一致度の高い評価者間では一致度が高かった.日常的に遭遇する補綴関連病名については模範病名との一致度が高かった.以上から(公社)日本補綴歯科学会の新しい病名システムは臨床上十分な信頼性と妥当性を有することが示唆された.
著者
加藤 隆史 原木 真吾 辻阪 亮子 東山 亮 矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.145-152, 2016 (Released:2016-05-26)
参考文献数
56

睡眠時ブラキシズムは歯科医療の中でも特に関心が高い睡眠関連疾患の一つである.睡眠時ブラキシズムの研究が進むにつれ,歯科医学的な常識だけでSBの診断や臨床の正当性を説明することができない様々な実態が明らかとなってきた.したがって,睡眠時ブラキシズムの診断や治療の新しい展開を切り開くためには,歯科臨床問題中心型の診断や治療だけでなく,病態生理学的な側面を勘案した医学的な診断・治療論理が求められると考えられる.本稿では,睡眠医学領域の視点を踏まえた診断の重要性を提案し概説する.
著者
矢谷 博文
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.229-245, 2012 (Released:2012-09-21)
参考文献数
180

本総説は,顎関節症(TMD)の治療法,特に補綴歯科領域のおける保存療法が,歴史とともにどのように変遷を重ねてきたかについて病因論の変遷とともに歴史を追って詳述した.膨大な臨床研究が積み重ねられた結果,現在では,1)TMDは臨床症状の類似したいくつかの病態からなる包括的名称であること,2)生物精神社会的モデルを発症機序の基本とした多因子の病態であること,3)その生物精神社会的モデルの枠の中で各病態の治療や長期的な管理がなされる必要があること,4)各病態とも症状の自然消退の期待できる(self-limiting)疾患であるゆえ,まず可逆的な保存治療を優先させること,が共通の理解となった.今後は,TMDの各種保存療法の治療効果を病態別に明らかにするために,治療の結果を測る方法の標準化が強く求められる.
著者
渡辺 和美エリゼッテ 鈴木 一臣 山下 敦 繁田 真人 今井 誠 矢谷 博文 中井 宏之
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.187-191, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
5

歯質被着面に一定期間作用した仮着材は, 接着における阻害因子になることが懸念されている.そこで, 仮着材を作用させた象牙質に対する接着性レジンセメントの接着強さを測定し, 残留仮着材が接着に及ぼす影響について検討した.すなわち, ウシの歯象牙質に種々の仮着材を24時間作用させた後, エキスカベーターを用いて仮着材を肉眼的に付着していない状態まで除去し, この被着面と接着材(パナビア21, クラレ)との接着強さの測定および接着界面の形態をSEM観察した.その結果, コントロールの接着強さは6.9MPaであったが, ハイボンドテンポラリーセメント作用面に3.6MPa, フリージノールテンポラリーパック作用面に4.9MPaおよびテンパック作用面に5.3MPaの値を示し, いずれの仮着材においても低い値を示した.一方, 接着界面のSEM像から, コントロール試料においては約0.5μmの樹脂含浸層が確認されたが, 仮着材を作用させた後の接着界面には樹脂含浸層が生成されていなかった.
著者
石垣 尚一 廣川 雅之 矢谷 博文
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.15-19, 2009 (Released:2011-02-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:顎関節症を始めとする慢性疼痛疾患は女性に多くみられ,このような性差の存在について種々の観点から仮説が提言されているが,その解明には至っていない.本研究の目的は,三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値の性差を明らかにすることである.方法:被験者として健常成人80名(男女各40名,平均24.7歳)を選択した.三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値の測定には,定量的感覚検査機器(TSA-II®, Medoc)を用い,両側頬部皮膚に温度刺激を加えた.性差,左右側差の影響の有無について二元配置分散分析を用いて検討を行い、平均値の差の検定にはt検定を用いた.解析にはSPSS Statistics® 17.0を用いた.結果:温刺激に対する知覚閾値には性差が有意に影響しており(P=.001),女性の温刺激に対する知覚閾値の平均値は男性に比べ有意に低かった(P=.001).冷刺激に対する知覚閾値には性差の影響を認めなかった.温刺激に対する疼痛閾値にも性差が有意に影響しており(P=.003),女性の温刺激に対する疼痛閾値の平均値は男性に比べ有意に低かった(P=.003).冷刺激に対する疼痛閾値には性差の影響を認めなかった.いずれの計測値にも左右側差の影響を認めなかった.結論:三叉神経領域における温度刺激に対する知覚および疼痛閾値には性差が存在し,温刺激時の知覚閾値および疼痛閾値は女性が男性に比べて低いことが明らかとなった.
著者
江草 宏 矢谷 博文 佐伯 万騎男 横田 義史
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究計画は、小分子化合物をId2遺伝子欠損マウスに由来する骨芽細胞および破骨細胞に作用させることで、新たな細胞内分子機構を探索することを目的として行われた。その結果、小分子化合物harmineは、破骨細胞分化に重要な役割をするNFATc1の活性をリン酸化酵素DYRK1Aの阻害を介して増強するが、同時に破骨細胞の分化抑制因子として作用するId2の発現を増強する結果、破骨細胞分化における細胞融合を著明に抑制することを明らかにした。
著者
矢谷 博文 江草 宏 田畑 泰彦 田畑 泰彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,チタンインプラント埋入部周辺の骨組織再生を誘導するための基盤技術を確立することを目的に行われた。チタンインプラントに設けた内空に生理活性物質(b-FGF)を徐放するゼラチンスポンジ生体材料を組み込むことにより,埋入周囲における骨組織新生の誘導が可能であることが明らかとなった。また,骨組織再生を誘導する合成ペプチドおよび小分子化合物を特定し,これらの骨組織再生における役割を明らかにした。