著者
上杉 妙子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.84, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表では、旧英領インド陸軍及び英国陸軍に雇用されてきたグルカ兵の通婚規制を取り上げ、配偶・生殖過程の管理に注目する観点から英国の国際戦略におけるマーシャル・レイスの位置づけ及び主体的関与を明らかにする。結論として、1)グルカ兵が自主的に通婚規制を行ってきたことと、2)通婚規制が、駐屯地周辺の人々との民軍関係を調整しマーシャル・レイスのブランドを維持するための境界作業として機能してきたことを指摘した。
著者
木村 大治 亀井 伸孝 森田 真生
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.51, 2012 (Released:2012-03-28)

この研究は「数学することとは,きわめて身体的な行為であろう」という予想のもとに,数学研究者たちの会話・身体動作から,彼らが数学的対象をどのように扱って研究を進めているかを明らかにしようとするものである。分析からは,現実世界には具体的な対応物のない概念に対しても,身体的と呼びうる操作がおこなわれているさまを見ることができた。
著者
高橋 絵里香
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.132, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表は、トーベ・ヤンソン著「ムーミン」童話シリーズを題材として、フィンランドの家族概念を社会思想として理解し、外縁としての共同体との関係を明らかにすることを目指す。ムーミン物語における家族描写にはリベラルと保守という対極的な思想が混在しており、それはフィンランドの家族のかたちを反映している。こうした物語構造の分析を通じて、フィンランドの保守/リベラルをめぐる社会思想の軸を理解していく。
著者
徐 玉子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.68, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表は在韓米軍基地村の米兵専用のクラブで「エンターテイナー」として働くフィリピン移住女性たちの生活に密着した参与観察とインタビューに基づいて、よく国際人身売買の犠牲者として表象される彼女たちが移住先の性産業で遂行する労働をミクロなレベルで考察する。それによって、これまであまり議論されなかったセックスワークにおける感情労働について論ずると同時に、労働過程で発現されるエイジェンシーを浮き彫りにする。
著者
奥田 若菜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.108, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表ではブラジル路上商人の二つの規範を考察する。「正しさの規範」と「善さの規範」の二つの領域は、矛盾することなく彼らの生活の中にある。二つの領域は使うべき場面が決められている。市場交換の場面で贈与交換を執拗に求めてはいけないし、贈与交換の場面で等価交換を頑なに主張することは批判を呼ぶ。「ねだり」「邪視」「物乞い」を事例に、二つの規範がぶつかり合う場面で生じる困惑を考察する。
著者
田中 雅一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.67, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表の目的は、セックスワーカーたちのインタビューをもとに、彼女たちが男性客に対してどのような態度をとるのかという問いについて考察し、これまでの感情労働研究を批判的に検討することである。一般にセックスワーカーと客との間には絶対的な上下関係があるとみなされてきた。このため叱りつける、といった行為は想定されてはいなかった。その意味を探ることで女性たちのエイジェンシーの特質に迫りたい。
著者
大石 高典
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.158, 2012 (Released:2012-03-28)

アフリカ熱帯林の狩猟採集民の社会は、徹底した分配により、平等主義を規範とする社会として描かれてきた。本発表では、換金作物栽培を開始したカメルーン東南部の狩猟採集民バカが、集団内部の経済的不平等や貨幣経済の流入にともなう社会変化をどのように認識し、対応しているのかについて、最近変化が見られるようになった呪術・邪術に関わる言説や行動に着目して検討する。