著者
久米 正吾
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.G4, 2019 (Released:2019-10-01)

本発表では、中央アジア東部での「牧畜社会」開始の基盤となった青銅器時代における初期農耕牧畜の波及とその歴史生態学的意義について、キルギス、天山山脈とウズベキスタン、フェルガナ盆地での発掘調査成果に基づき議論する。山岳地帯と平地という異なる地理環境への農耕牧畜の適応は、異なる2つの考古学的文化集団がそれぞれ担っているため、両者の相互関係の実相解明に向けた展望についても述べる。
著者
斉藤 成也
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.G5, 2019 (Released:2019-10-01)

本講演では、中央アジアにおける東西の人間の移動をDNAデータから考察する。まず、モンゴル帝国の始祖チンギス・ハンのY染色体の系統についての研究を紹介する。つぎに全ゲノムデータにもとづくウイグル人集団の起源に関する研究を紹介する。最後に東アジア人が東南アジアから北上した人々を主体としつつ、西から移動した人々とも一部混血して形成したという仮説を紹介する。東ユーラシアにおける稲作の起源についても時間があれば言及する。
著者
濱谷 真理子 藏本 龍介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F19, 2019 (Released:2019-10-01)

南アジア・東南アジア社会においては、「布施(dāna、dānなど)」と呼ばれる実践がみられる。本分科会では、インド、ミャンマー、スリランカにおいて「布施」として行われるさまざまな贈与の事例について、そこにはどのような規範や倫理がみられるのか、そしてそれはどのような社会関係や経済制度をもたらしているのかを検討する。それによって、「人間はなぜ他者に与えるのか」という問題に新たな視点を提供することを目的とする。
著者
中村 沙絵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F23, 2019 (Released:2019-10-01)

人道主義が世界各地で展開し、多様な主体や局地的な実践形態をとりこみながら遂行されている。こうしたなか、贈与の効果によってその価値を測る世俗的贈与と、与える行為そのものに意味を付与する宗教的贈与のロジックが、同一の活動において同時に保持されるような混淆的な状況が出現し、研究の対象にもなっている。しかし人道主義と宗教が重なり合う領域がいかなる贈与のロジックによって成立しているか、それがいかなる経験や関係性の創出に寄与しているかについては、あまり問われてこなかった。本報告ではスリランカで人道主義的な介入と宗教的実践とが重なり合う領域としての社会奉仕実践、およびそこでの贈与行為に着目する。与え手・受け手のふるまいやロジック、ならびに与え手と受け手のあいだでとりむすばれる関係性のありようをみながら、こうした混淆的な贈与の実践がもたらす経験や社会性について検討する。
著者
藏本 龍介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F22, 2019 (Released:2019-10-01)

本発表では、ミャンマーの「自然法」瞑想センターを事例として、仏道修行/布教事業/社会福祉事業が渾然一体となった「布施行」の実態を分析する。そして「布施」というロジックに貫かれたこのセンターにおいては、「布施経済」とでも呼びうる独特な経済制度がみられることを示す。
著者
上水流 久彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第53回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E21, 2019 (Released:2019-10-01)

台湾漢人社会では、男性子孫をもうけ、その子孫が祖先祭祀を行うことが当然とされてきた。男性は結婚し、男子を得ることでそれが可能となった。また女性は婚出し、そこで男子を生み、花婿側の祖先祭祀を継続させ、自分を祭祀する者を確保してきた。しかし、台湾社会では少子化と非婚化が進んでおり、男子が祖先崇拝を継承することを一層困難にしている。台湾の漢人はこの事態をどのように認識し、対処しているのだろうか。本発表では、伝統的な祖先祭祀から逸脱すると思われる「娘しかいない家庭」、「姉妹しかいない女性」、「未婚で子どもがいない女性」の聞き取りから、初歩的検討を行う。その検討からは、男性は「一族」という単位が祭祀の解決方法として選択肢に入っているが、女性にはない点、祭祀継承の観念よりも、「親と子」の単位の祭祀の重視されている点が明らかとなった。