著者
諸橋 侃
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.1011-1017, 1965-09

腹壁誘導胎児心電図を定期検査とし, 慶応義塾大学病院産婦人科ME外来を訪れた妊婦より次の結果を得た. 1) 1,400例中, 胎児棘波を認めたものは1,360例 (97.1%)である. 陰性群の検討を加えた誤診率は, 0.5%であった. 2) 陽性率と妊娠週数の関係は, 諸家の報告と同様, 双峰性を示したが, その谷は, 82.2~84.6%と高値を示した. 早期診断例は, 妊娠15週の2例であった. 3) QRS振巾も, 陽性率と同様の傾向を示した. 4) QRS時間は, 妊娠週数と共に増加する傾向が認められた. 5) 胎児心拍数は, 妊娠週数が進むに従って, 減少したが, 今後尚検討を要する. 6) 低位横誘導による検出は, 切迫流早産及び妊娠末期に多く認められた. 7) 予定日超過群は, 胎盤機能不全症候群の有無により検討を加え, QRS振巾に有意の差を認めた. 8) 波型の類別を試み, qR型, Rs型, qRs型, RSR'型, RI型等臨床的に興味ある所見を得た. 9) 胎児不整脈は, 1,400例中8例に認め, 期外収縮が, ブロックよりも多く証明された. 早期証明例は, 期外収縮の妊娠23週であった. 10) この他に, 多胎, 羊水過多症, 胞状奇胎, 血液型不適合, 糖尿病, 想像妊娠, 無脳児等も記録した. また, 胎児頻脈についても述べた.
著者
安田 泰久
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.16, no.12, 1964-12

妊馬血清性ゴナドトロピン (PMSG) と絨毛性ゴナドトロピン (CG) をヤギに連続投与して, アンチホルモン (Anti-H) の産生, 血清タンパク質含量, タンパク各分屑値の変動と沈降反応混合法による沈降素抗体価の変動を追求した. その後, 殺処分して病理学的考察を加えた. 又, Anti-Hの本態を明らかにする目的で, ウサギに大量のCGを投与して, 沈降反応重層法による抗体価の変動と沈降反応重層法による「反応の場の形」を求め, 寒天内沈降反応 (Ouchterlony法) を行い, 更に, この抗CG血清から得たγ-glのAnti-H作用を生物学的測定法で追求した. その結果, 次の成績が得られた. 1) PMSG及びCG両注射群ヤギにAnti-H産生を認めた. 血清タンパク質及びγ-gl値は初め増加するが, その後減少する. これとは反対にAl及びA/G比は注射開始後減少し, 末期に回復する. 又, 沈降素抗体価は注射の反復に伴って上昇が認められた. 病理学的所見では, 肝臓と甲状腺の重量増加が認められたが, 卵巣には変性濾胞が多く血胞及び成熟濾胞の発育は認められない. 肝臓及び腎臓の著変から, 解毒及び排泄機能の亢進が考えられる. 2) ウサギ血清の沈降素抗体価の変動で, 抗体産生に対する個体差の影響が大きいと認められた. 又「反応の場の形」で, CGと抗CG血清とは3種以上の反応系を有することが推定され, CGは複雑な抗原より成り立つものと考えられる. 寒天内沈降反応による抗原抗体分析でもCGと抗CG血清は2本以上の沈降線が認められたが, PMSGと抗CG血清との間に反応系はみられない. 又, 同一のCGでも Lot.の差によって, その中から検出出来る抗原成分数が異なることがみうけられた, 抗CG血清及び抗CG血清より抽出されたγ-gl液は, 生物学的測定で, 同時に注射したCGを抑制 (Anti-H) する作用をもつことが認められた. 以上の諸点から, Anti-Hの本態は抗体と考えられる.