著者
本田 直樹
出版者
Japanese Neural Network Society
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.146-153, 2010-09-05
被引用文献数
1

去る2009年10月30日から11月3日に,諏訪湖で開催された日本神経回路学会オータムスクールAscone2009(Autumn School for Computational Neuroscience)において,大澤五住先生(大阪大学大学院 生命機能研究科脳神経工学講座 視覚神経科学研究室)の講義が行われました.その講義内容とスライドを元に,筆者が講義録としてまとめたものです.大澤先生が話しているような形式にまとめていますが,筆者の理解で再構成したものです.本内容や表現に関する責任は筆者がおうものとします.
著者
瀧山 健
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.108-122, 2013-09-05
参考文献数
59

本稿では計算論的神経科学の視点からリハビリテーション,特に脳卒中リハビリテーションへアプローチする方法の一つを紹介する.第一に,腕の到達運動そして外乱学習に着目し,運動プリミティブの枠組みに基づく運動学習の数理モデルを紹介する.第二に,到達運動そして外乱学習において,各病態(小脳疾患,パーキンソン病,ハンチントン病,脳卒中)の患者と健常者の行動を比較する.第三に,脳卒中リハビリテーション方法をいくつか紹介する.最後に,計算論的神経科学の観点から脳卒中リハビリテーションに対する仮説を提唱する.すなわち,脳活動計測から推定できる両半球の一次運動野間の機能的結合の強度が十分強い脳卒中患者には両腕運動に基づいたリハビリテーションが有効であり,その機能的結合の強度が弱い患者には片腕運動に基づいたリハビリテーションが有効である,という仮説を計算論神経科学の観点から提唱する.
著者
和田山 正
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.63-69, 2010-06-05
参考文献数
7
被引用文献数
1

圧縮センシング(compressed sensing)は,スパース信号に対するサンプリング理論である.ランダム線形測定過程により得られるサンプル信号からの原信号の再現可能性,計算量の少ない再現アルゴリズムの構成が圧縮センシングの重要な研究テーマとなっている.本解説では,Candes-Taoらによる原信号完全再現のための十分条件について解説を行う.
著者
田辺 誠司 藤田 一郎
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.64-73, 2004-06-05
参考文献数
50
被引用文献数
1

The stereo vision system derives a 3D representation of the visual world from a pair of 2D representations of retinal images. For this well-defined computational task, stereo vision serves as a model system for investigations of the neural mechanisms of visual perception. Computational ideas merge with neurophysiological data of single neuron responses in the monkey visual cortex. Area V1 performs initial filter-like processing, but this alone is not sufficient for all aspects of stereo vision. Several higher visual areas play important roles. Recent findings suggest that areas along the dorsal and ventral pathways have complementary functions in stereopsis.
著者
西本 伸志
出版者
Japanese Neural Network Society
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.39-49, 2012-03-05

神経科学のゴールの一つは,私たちの日常の体験を支える脳·神経系の情報処理メカニズムを理解することにある.しかし,脳·神経の視覚情報処理に関する多くの知見は,特定の仮説検証を行うために特化した限定的な視覚刺激を用いた実験結果に基づいており,より自然な視覚入力に対して容易に一般化できない.自然な視覚入力下における視覚情報処理の包括的な理解を目指す枠組みとして,近年エンコーディングモデルを用いたアプローチが注目を集めている.このアプローチでは,視覚情報処理に関する仮説は任意の刺激に対する応答を予測する定量的モデルとして実装され,その妥当性は新規刺激に対する予測性能によって検証される.エンコーディングモデルを用いたアプローチは汎用的なものであり,その適用例は初期視覚領野における視覚特徴表現から高次視覚領野における意味情報表現まで,受動的知覚条件下から能動的認知タスク条件下まで,また単一細胞電位記録から機能的磁気共鳴画像(fMRI)記録まで,多岐に渡る.本解説では,エンコーディングモデルを用いた研究の枠組み,および同モデルを利用した最近の研究を紹介する.
著者
大前 彰吾
出版者
Japanese Neural Network Society
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.289-297, 2008-12-05

この講義録は2007年ASCONEにて,吉田正俊先生が行われた「盲視(Blindsight)が明らかにする「気づき」(awareness)の脳内情報処理」の講義の記録である.講義では「意識」や「気づき」といったあいまいな概念をどうやって検証できる形に持ってゆくか,という問いを設定し,盲視(Blindsight)という現象の紹介を通して「気づき」に迫る手法について講義·議論が交わされた.
著者
望月 彰子 大森 隆司
出版者
Japanese Neural Network Society
雑誌
日本神経回路学会誌 = The Brain & neural networks (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.81-89, 1996-09-05
被引用文献数
24 4 10

In our real life, it is well known that our cognitive process is always influenced by our environment. It is called as "context dependency" of the cognition. In this paper, we propose a memory model "PATON" that is based on a macroscopic structure of a cortico-hippocampal memory system; it has three components of a symbolic layer, a pattern layer, and an attentional system. The attentional system sends signals to control a change of the model's structure dynamically. The change induces a modulation of metric between memorized items. Computer simulation shows an association process dependent upon a context based on the modulation.