著者
有馬 和彦 玉井 慎美 岩本 直樹 川上 純 江口 勝美
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第34回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.23, 2006 (Released:2006-09-01)

【背景】 マトリックスメタロプロテイナーセ群(MMPs)は関節リウマチ(RA)の骨破壊に関わる重要な酵素群である。特にMMP-9は血液脳関門の破壊にも関与していると考えられている。【目的】 RAの骨破壊の予見的所見であるMRIにおける骨髄浮腫とMMPsの機能的遺伝子多型に関連があるという仮説を検証した。【対象】 関節痛を有する84名と健康対照群96名。【方法】 MRI検査と同時期に血清学的検査を行った。MMP-1,7,9,13の機能的遺伝多型に関して単塩基多型にはRFLP解析、二塩基繰り返し多型にはフラグメント解析を用いた。検定にはカイ二乗検定を用いた。【結果】 骨髄浮腫所見を32名に認めた。MMP-9の機能的遺伝子多型頻度は、骨髄浮腫陽性群全体では健康対照群と有意差を認めなかった。更に血清学的検査で群別したところ抗CCP抗体陰性の骨髄浮腫陽性群では健康対照群に比較して有意に高発現単塩基多型が高頻度で認められた(35.0% vs 14.3%, Odds ratio=3.23, p=0.017)。【考察】 今回の検討ではMMP-9の機能的遺伝子多型のRA発症への関与は明らかではなかった。しかし、抗CCP抗体陰性RA群には、自己抗体産生という免疫学的病態以外のMMP-9の高発現による血液骨関門の破壊等といった、抗CCP抗体陽性RA群とは異なる障害機序が存在する可能性が示唆された。
著者
鈴木 克典 齋藤 和義 中山田 真吾 田中 良哉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第34回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.62, 2006 (Released:2006-09-01)

全身性エリテマトーデス(SLE)はB細胞活性化と自己抗体過剰産生による臓器障害が特徴の自己免疫疾患である。免疫吸着療法による早期自己抗体除去が1年後の臨床的活動性、予後への関与を検討した。1999年から2005年までの6年間に腎生検で増殖性ループス腎炎と診断し、ステロイド大量療法、シクロホスファミド間欠大量静注療法に免疫吸着療法を施行したSLE患者群を免疫吸着群(IA;26)、血漿交換療法を併用した血漿交換群 (PE;6)、患者背景をマッチさせたコントロール群(C;24)と3群を治療開始時、1,3,6,12ヶ月目のSLEの疾患活動性、腎機能、自己抗体などの免疫異常などを評価した。PEもIAも治療開始初期に抗dsDNA抗体を速やかかつ自己抗体特異的に除去しえた。SLEDAIでのSLE疾患活動性改善度は、IA, PEにて3ヶ月後有意に改善しCと同等、さらに12ヶ月後にIAはCより活動性制御されPEは上昇傾向が見られた。血清補体価は治療開始後12ヵ月後C、PEに比して IAで有意な改善を認め、IAではCに比して平均観察期間中央値で3.8年間の再燃・死亡の危険性は有意に低かった。治療開始後3ヶ月、12ヵ月後の長期経過によりSLE全般的改善度や再燃率でIAの優位性が明らかとなり抗dsDNA抗体などの早期自己抗体除去による臓器沈着、補体活性化軽減が示唆され、活動性の高く、特に自己抗体が異常高値症例で積極的に免疫抑制療法に併用しIAを開始することを提唱する。
著者
渡邉 幹夫 中野 愛子 飯田 貴雄 松塚 文夫 宮内 昭 岩谷 良則
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第34回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.27, 2006 (Released:2006-09-01)

【目的】以前我々は、自己免疫性甲状腺疾患(AITD)患者の甲状腺組織内においてCD4+細胞の比率が減少し、CD4+細胞上のFas発現が増加していることを見出した。今回、特にCD4+CD25+調節性T細胞(Treg)がAITDの甲状腺内でアポトーシスによって減少している可能性を考え、CD69とFoxp3を用いたより厳密なTregサブセットを解析した。【方法】バセドウ病患者15名、橋本病患者5名、健常人10名を対象とし、治療目的で摘出したAITDの甲状腺組織より分離した甲状腺浸潤単核球と、同一患者および健常人の末梢血より分離した単核球を用いて、Tregサブセットの解析およびアポトーシス細胞の検出をflow cytometryにより行った。【結果】AITDにおける甲状腺浸潤CD4+CD25+細胞の比率は末梢血と比べて低下しており、さらに厳密なTregサブセットであるCD4+CD25+CD69-細胞やCD4+CD25+Foxp3+細胞の比率も甲状腺内でに低下していた。甲状腺浸潤CD4+細胞には末梢血に比しアポトーシス細胞が多く、特にCD4+CD25+細胞にアポトーシスがより高頻度に誘導されていた。【結論】AITDの甲状腺ではTregがアポトーシスによって減少している可能性があり、甲状腺内におけるTreg比率の減少が、AITDの発症や病態に関係している可能性が示唆された。