著者
植木 幸孝 荒牧 俊幸 辻 良香 來留島 章太 小島 加奈子 川内 奈津美 寺田 馨 江口 勝美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.2118-2124, 2017-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
13

高齢者関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は,若年発症RA(younger-onset rheumatoid arthritis:YORA)が高齢化したRAと,60歳以上で発症したEORA(elderly-onset rheumatoid arthritis)に分類される.EORAでは,YORA同様,T2T(treat to target)に準じた治療を行い,低疾患活動性を目標にコントロールするのが現実となっている.しかし,高齢者は多彩な合併症を有しており,高齢化RAと同様,治療にあたり合併症の増悪や薬物による有害事象を定期的にモニタリングすることが重要である.
著者
井田 弘明 江口 勝美
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.90-100, 2007 (Released:2007-04-30)
参考文献数
41
被引用文献数
2 4 2

TNF-associated periodic syndrome (TRAPS)は,TNFが病態の中心と考えられる遺伝性周期性発熱症候群の一つである.TNFRSF1A(TNFR1)分子が細胞表面に留まり,TNFからの反応が持続するため,発熱などの様々なTRAPS症状が出現すると単純に考えられてきた.ところが,最近,TNFRSF1A分子の切断異常がみられない症例や突然変異のないTRAPS症例もあること,さらに孤発例も存在することが判明し,TRAPSとは大変heterogeneousな症候群であることがわかってきた.最近,細胞表面に発現されないTNFRSF1A分子が,TNFと無関係に細胞内で凝集し,NF-κBの活性化やアポトーシス誘導を生じていることも報告され,TRAPSの病因は混沌としている.本邦において,現在までTNFRSF1A遺伝子に突然変異をもつTRAPS症例は5家系15名と少ないが,突然変異のない孤発例は多い.本稿では,TRAPSについて自験例を提示しながら臨床像を紹介するとともに,TNFRSF1A分子の発現制御機構から考えられるTRAPSの病因,その病因とこれまで経験した症例から検討した診断のためのフローチャート,および,現存の治療法と私たちが試みた新しい治療法などを解説した.
著者
岡部 浩祐 和泉 泰衛 宮下 賜一郎 入野 健佑 川原 知瑛子 地内 友香 野中 文陽 江口 勝美 川上 純 右田 清志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.61-67, 2014 (Released:2014-03-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は35歳男性.ぶどう膜炎,炎症所見,大動脈の主要分岐部の動脈壁の肥厚を認め,高安動脈炎の診断のもと,プレドニゾロン(40 mg/day)とメトトレキサート(6 mg/week)で治療が開始され症状の改善を認めていた.治療開始2年後に,躁症状などの精神症状が出現し,精査のため入院となった.神経学的所見,頭部MRI,脳血流シンチでは異常認めなかったが,髄液検査でIL-6の上昇(65.4 pg/ml),血清IgDの増加を認め神経ベーチェット病が疑われた.血管病変の存在と併せて,特殊型ベーチェット病と診断し,インフリキシマブの投与を開始した.30歳時より周期性発熱の病歴がありMEFV遺伝子解析を行った所,エクソン2にE148Q/L110P複合ヘテロ変異を認めた.これら遺伝子異常が,本症例の非典型的なベーチェット病の病態に関与している可能性があり文献的考察をふまえ報告する.
著者
川尻 真也 川上 純 岩本 直樹 藤川 敬太 荒牧 俊幸 一瀬 邦弘 蒲池 誠 玉井 慎美 中村 英樹 井田 弘明 折口 智樹 江口 勝美
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.190-194, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
12

症例は56歳,女性.主訴は多発関節痛.1999年に拇趾MTP関節の痛風発作を発症した.その後,痛風発作を繰り返すもコルヒチン内服にて症状は軽快していた.しかし,2006年頃より関節痛は全身の多関節におよび,持続性となった.2007年4月,多発関節炎の精査加療目的にて当科紹介入院となった.入院時,著明な高尿酸血症を認めた.入院中,関節炎発作による全身の関節痛および高熱を認めた.関節液所見にて白血球に貪食された尿酸ナトリウム針状結晶を認め,痛風と診断した.デキサメタゾン4 mg筋注およびコルヒチン投与により症状は改善した.
著者
有馬 和彦 玉井 慎美 岩本 直樹 川上 純 江口 勝美
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第34回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.23, 2006 (Released:2006-09-01)

【背景】 マトリックスメタロプロテイナーセ群(MMPs)は関節リウマチ(RA)の骨破壊に関わる重要な酵素群である。特にMMP-9は血液脳関門の破壊にも関与していると考えられている。【目的】 RAの骨破壊の予見的所見であるMRIにおける骨髄浮腫とMMPsの機能的遺伝子多型に関連があるという仮説を検証した。【対象】 関節痛を有する84名と健康対照群96名。【方法】 MRI検査と同時期に血清学的検査を行った。MMP-1,7,9,13の機能的遺伝多型に関して単塩基多型にはRFLP解析、二塩基繰り返し多型にはフラグメント解析を用いた。検定にはカイ二乗検定を用いた。【結果】 骨髄浮腫所見を32名に認めた。MMP-9の機能的遺伝子多型頻度は、骨髄浮腫陽性群全体では健康対照群と有意差を認めなかった。更に血清学的検査で群別したところ抗CCP抗体陰性の骨髄浮腫陽性群では健康対照群に比較して有意に高発現単塩基多型が高頻度で認められた(35.0% vs 14.3%, Odds ratio=3.23, p=0.017)。【考察】 今回の検討ではMMP-9の機能的遺伝子多型のRA発症への関与は明らかではなかった。しかし、抗CCP抗体陰性RA群には、自己抗体産生という免疫学的病態以外のMMP-9の高発現による血液骨関門の破壊等といった、抗CCP抗体陽性RA群とは異なる障害機序が存在する可能性が示唆された。

1 0 0 0 OA RS3PE症候群

著者
折口 智樹 有馬 和彦 梅田 雅孝 川㞍 真也 古賀 智裕 岩本 直樹 一瀬 邦弘 玉井 慎美 中村 英樹 川上 純 塚田 敏昭 宮下 賜一郎 溝上 明成 岩永 希 古山 雅子 中島 好一 庄村 史子 荒武 弘一朗 荒牧 俊幸 植木 幸孝 江口 勝美 福田 孝昭
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.48-54, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
16

概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.
著者
後藤 貴史 石川 博基 佐伯 哲 猪狩 成彦 福田 麻里子 田浦 直太 西村 大介 市川 辰樹 濱崎 圭輔 中尾 一彦 江口 勝美
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.298-303, 2006 (Released:2006-11-28)
参考文献数
20

肝炎後再生不良性貧血の2例を経験した.症例1は35歳男性,2003年4月中旬より全身倦怠感出現し,4月20日にT-Bil 6.2mg/dl, AST 1900IU/L, ALT 3020IU/Lと肝機能異常を認めPT 68%と低下していた.A∼E型の肝炎ウイルスは陰性で各種自己抗体陰性,薬剤の関与も否定的であった.徐々に肝機能は正常化したが,同年7月14日にWBC 3000/mm3, Plt 7.4万/mm3と2系統の血球減少が出現し,7月25日に再入院となった.骨髄は低形成性を呈しCD4/CD8比は0.207と低下していた.症例2は26歳男性,2003年6月下旬より全身倦怠感出現し,7月1日にT-Bil 13.2mg/dl, AST 1748IU/L, ALT 2924IU/Lと肝機能異常を認めPT 62%と低下していた.各種ウィルスマーカーは陰性で肝炎の原因は不明であった.徐々に肝機能異常は改善したが,7月中旬より血球減少が出現した.骨髄は低形成性でありCD4/CD8比は0.335と低下していた.2症例とも免疫抑制剤等の治療により汎血球減少は改善した.若年者の原因不明の肝炎後に再生不良性貧血を合併する事があり注意が必要と思われた.