著者
本田 浩一
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.365-369, 2022 (Released:2022-06-28)
参考文献数
26

1990 年に遺伝子組み換えヒトEPO(rHuEPO)製剤が上市され,腎性貧血治療は大きく変貌を遂げた.rHuEPO は忍容性が高い薬剤で広く普及したが,作用時間が短いことから血液透析患者に比べ,保存期慢性腎臓病や腹膜透析患者の貧血治療薬としては不十分であった.また,rHuEPO 低反応性の問題が報告された.その後,長時間作用型の赤血球造血刺激因子(ESA)製剤が開発されて貧血管理は向上したが,ESA 低反応性の問題は残されたままであった.2019 年に低酸素誘導因子(hypoxia‒inducible factor:HIF)プロリン水酸化酵素阻害薬(HIF‒PH 阻害薬)が保険収載され,腎性貧血治療の選択肢が増えた.HIF‒PH 阻害薬は内因性EPO を生理的な範囲で産生し,鉄代謝に対する直接的作用も有する薬剤であり,ESA 低反応性にも効果が期待できる.本稿ではESA 製剤による腎性貧血治療の課題に触れ,ESA 製剤とHIF‒PH 阻害薬の使い分けについて私見を述べる.
著者
安田 康紀 大河内 昌弘 本田 浩一 馬場 卓也 近藤 好博 加藤 幸正 後藤 章友 神谷 泰隆 大野 恒夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.332, 2008 (Released:2009-02-04)

糖尿病患者の究極の治療目標は、糖尿病細小血管合併症・大血管合併症の発症・進展を阻止し、健常人と変わらない日常生活の質の維持・寿命の確保であるが、その目標を達成するためには、薬物・運動療法に加えて、食事療法が重要であることは言うまでもない。最近、糖尿病患者の食後高血糖が、糖尿病性心血管合併症と密接に関連し、食後血糖が高いほど、糖尿病性心血管合併症を発症しやすいことが示されてきている。食後血糖値の上昇幅を表す指標として、Glycemic Index(GI)が知られており、GI値が高い食品ほど食後高血糖が上昇しやすい。多くの日本人が主食としている白米は、GI値が高いのに対し、玄米や発芽玄米はGI値が低く、食後の血糖上昇が低いことが知られている。また、発芽玄米の更なる利点は、発芽玄米が、白米、玄米に比べて、糖尿病ラットの神経伝導速度および尿蛋白漏出量を著明に改善するとの最近の報告から、糖尿病患者の神経症・腎症を予防できる可能性が示されてきていることにある。発芽玄米は、玄米を水に浸してほんの少し発芽させたお米であり、発芽によって眠っていた酵素が活性化し、新芽の成長に必要な栄養素が増加する特徴があり、-アミノ酪酸や抗酸化成分などが、白米、玄米に比べて豊富に含まれる。 そこで、我々は、発芽玄米食に注目し、入院中の糖尿病患者の食事療法に発芽玄米食を取り入れた処、糖尿病コントロールが劇的に改善し、著明なインスリン注射単位数の節減効果をもたらすことが出来た症例を経験したので報告する。症例は、54歳女性、身長157cm、体重58kg、BMI 21.6kg/m2。うつ病で、当院精神科にH19年4/19に入院となった。糖尿病は、10年程前から指摘されており、入院前は、ノボラピッド朝10, 昼10, 夕8単位+ペンフィルN眠前12単位 の4回注(計40単位)でHbA1c8.6%と糖尿病コントロール不良であった。尿中C-peptide3.6μg/dayと内因性インスリン分泌は低値であった。糖尿病性網膜症・腎症・神経症は認めず、肝臓にも異常を認めなかった。糖尿病コントロール不良のため、入院時H19年4/19より、ヒューマログ朝14, 昼14, 夕14単位+ペンフィルN朝16, 眠前16単位 の5回注(計74単位)に変更したところ、毎食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.6%と安定し、その後3ヶ月間血糖コントロールは安定して経過した。その後、注射回数が少ない方がよいとの患者の希望があり、H19年7/4より、ヒューマログ50mix朝16, 昼16, 夕14単位の3回注(計46単位)に変更したが、食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.3%と、半年間、安定して経過した。その後も本人の血糖コントロールに対する意欲が高かったため、H20年1/11より、食事療法として、白米から発芽玄米食に変更したが、食事カロリー(1520kcal)はそのままとした。また、その他の治療方法は、精神科薬も含めて、全く変更しなかった。そうした処、発芽玄米食に変更以降、毎食前血糖値が急激に下がり始め、インスリンの減量を頻回に必要とするようになり、H20年2/5には、ヒューマログ50mix朝12, 昼6, 夕8単位の3回注(計26単位)で、食前血糖値70-110mg/dl, HbA1c4.9%、4/23には、ヒューマログ50mix朝10, 昼2, 夕6単位の3回注(計18単位)で、食前血糖値80-110mg/dl, HbA1c4.7%と、インスリンの必要単位数の激減に加えて、血糖コントロールの更なる改善が得られた。インスリン抗体等の低血糖を起こす要因は認めず、発芽玄米食摂取が、血糖コンロールの著明な改善を促し、インスリン注射単位数の劇的な節減効果をもたらした貴重な一例と考えられた。
著者
本田 浩一
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.61-73, 2011

The Northern Vietnamese dialect is known to involve laryngeal configuration as an integral part of its tonal system. This work analyses the relationship between pitch and voice quality in another variety of Vietnamese spoken in the North-Central region, named Lam River Speech. Acoustic data of fundamental frequency (F0) and duration in the citation form of their unstopped tones is presented in the form of mean F0 time-course; and voice quality is determined by perceptual observation of ten female speakers. Normalised mean F0 and various voice qualities are discussed from viewpoints of both between-speaker and within-speaker differences. The within-speaker variation points to the fact that the degree of laryngealisation is correlated with relative pitch of a speaker. Intrinsic vowel F0 data supports this fact, where laryngealisation is likely to occur in low vowels that carry lower F0. It is concluded that pitch is a primary cue in the LRS tonal system, whereas laryngealisation is a secondary one. Ultimately, this usage of laryngealisation is different from the well-studied Northern Vietnamese dialect.