著者
濵田 麻希 瀧川 哲也 奥野 正幸
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.162, 2018 (Released:2020-01-16)

石川県羽咋郡志賀町の富来鉱山は能登半島のほぼ中央部にあり,鉱床タイプは金山に典型的な鉱脈鉱床である.しかし産出する金鉱物および銀鉱物に関する情報は極めて乏しく,金や銀を含む鉱物種とその産状は不明であるため,本鉱山で産出する金鉱物および銀鉱物の同定と産状の解明を目的とし研究を行った.富来鉱山東郷三番坑の坑道の母岩である輝石安山岩は熱水変質を受けており,斑晶の輝石および斜長石は緑泥石,雲母類,白チタン石に変質しているか,交代されている.母岩中全体に自形の黄鉄鉱,石英脈と母岩との境界に他形の黄銅鉱が産出している.これらの変質鉱物と硫化鉱物は鉱床形成に伴う熱水作用によって生じたと考えられる.金・銀鉱物を含む石英脈を伴う試料の主な鉱石鉱物は黄鉄鉱,黄銅鉱,ほぼ純粋なZnS組成の閃亜鉛鉱である.閃亜鉛鉱とともに産出が報告されることの多い方鉛鉱の産出は見られない.エレクトラムは赤褐色石英脈中の間隙中に他形鉱物として産し,およそ47 mol.%程度の銀を含む.アグイラ鉱,自然銀,未同定鉱物の集合体は石英脈間隙中のエレクトラム周辺に他形の鉱物として産する.
著者
白勢 洋平 下林 典正 高谷 真樹 石橋 隆 豊 遙秋
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.50, 2018 (Released:2020-01-16)

京都大学総合博物館では,京都帝国大学の教授であった比企忠が蒐集した国内では最大級の貴重な鉱物・鉱石標本を所蔵している。その標本整理の過程で「比企標本」は,「和田標本」,「若林標本」,「高標本」といった20世紀初頭の日本の「三大鉱物標本」に勝るとも劣らない標本であることがわかった。比企は1894年に帝国大学を卒業ののち,1898年に京都帝国大学理工科大学の助教授に任じられ,開設されたばかりの採鉱冶金学教室で教鞭をとった。その後,採鉱学第三講座(鉱床学)の初代教授となり,1926年に定年退職するまでの間に,1万点以上の鉱物・鉱石標本が陳列する鉱物標本室を作り上げた。比企は亡くなる直前に鉱物標本の行く末を案じ,後進に「標本の志るべ」なる手引書を遺した。「標本の志るべ」の中には蒐集した鉱物標本ひとつひとつの解説と共に,教育熱心さが窺える文言が記されている。比企標本は,国宝級とも形容される,質・量ともに優れた選りすぐりの標本であるが,同時に我が国の鉱物学の黎明期に多くの研究者や学生を育ててきた貴重な標本でもある。
著者
古川 登
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.70, 2018 (Released:2020-01-16)

広島市市街地の地下からオレンジ色に着色した方解石(以下オレンジ方解石とする)が内部に晶出した貝化石が産出した.(古川, 1966 ,山崎他,2000)その化学組成からオレンジ色の着色要因としてMnが示唆された。貝化石中のオレンジ方解石を400℃で加熱処理したところ黒褐色に変化したことから,Mnは結晶中のCaを置き換えるのではなく,不純物として含まれている可能性が高いことがわかった。オレンジ貝化石を透過型電子顕微鏡で観察したところ,オレンジ貝化石では30~60nmの包有物がみられた。この包有物がオレンジ色の着色要因と考えられる。
著者
原 俊介 大井 修吾
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2018年年会
巻号頁・発行日
pp.160, 2018 (Released:2020-01-16)

滋賀県は琵琶湖を中心に美濃丹波帯と花崗岩体に囲まれており、花崗岩付近の美濃丹波帯は接触変成岩が分布する。本研究は変成温度の推定を目的とし、琵琶湖周辺のホルンフェルスの菫青石の三連双晶の有無に着目した。大文字山、大石地域、山女原地域、岳山北部、金糞岳、白谷地域の6地点からホルンフェルスを採取した。採取した岩石から薄片を作成し、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡により観察した。大文字山、金糞岳の試料からは菫青石三連双晶が確認できた。大石地域の試料からは、芯と花弁からなる花弁状の結晶が観察でき、菫青石三連双晶が確認できた。山女原地域の試料からは、花弁はピナイト化しているが、先行研究のように菫青石三連双晶からなる芯が観察された。本研究の岳山北部の試料からはピナイト化した結晶しか観察できなかった。白谷地域の試料からも、菫青石三連双晶が観察できた。 田上・鈴鹿・田上・江若・貝月山花崗岩体との接触部の試料から菫青石三連双晶が観察できたため、滋賀県内の花崗岩体の接触変成部付近において、菫青石の三連双晶は一般的なものであると考えられる。三連双晶の形成条件からの変成温度を推定することが今後の課題となる。