- 著者
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KING ALFRED
- 出版者
- 宇宙航空研究開発機構
- 雑誌
- 東京帝國大學航空研究所彙報
- 巻号頁・発行日
- vol.63, pp.559-659, 1929-11
飛行機の運動に關する研究は實驗から得た多くの係数を用ひてやる。この實驗の一部分は模型によって行ふことが出来る。併し場合によっては實際の飛行機を飛ばして實驗せねばならない。この場合測定のためには光學的と機械的との方法が問題にされる。いつでも幾何學的に決定されて直接明瞭な關係軸系が有利である。安定の研究及これに關聯した操縦及自動安定の諸問題の研究は飛行機に固定した座標軸系に就いてやった。測定量はいつでも速度と角速度とのコムポーネント及その諸誘導係數である。飛行機固定軸によれば問題の諸量は直接光學的(寫眞)或は機械的(ヂヤイロ、振子、速度計等)に測定することが出来る。操縦者はまた大低の場合光學的の認知に従つて即飛行機固定系が地面の任意の固定系に封する位置に従つて操縦をやる。こゝには研究しないが非常に大きな絶對値の迎角に対する飛行機の運動に於ても亦機械的の認知(加速度)による「感じ」の助けをかりなければならない。兎に角多くの操縦者に対しては空気力学的の迎角といふものはたゞ純然たる「定義」にすぎないで、風方向の座標系に關する量は「直覺」を缺ぐものである。飛行機同定軸系の量と空気力學上のカ及モーメントに封して絶對的に必要な迎角との重要な関係をこゝに觀察するやうな小さい迎角範圍に對して算出した。一般運動方程式及攪亂方程式は、飛行機固定軸を主慣性能率軸とするやうな飛行機に皆應用出来るやうになつてゐる。結果に省略法を行はないものは大低はばつとしてゐて明瞭を缺くが、數量的に重要でない項をやめてしまへば初めて主な影響を明瞭に出すことが出奔る。實際的の計算に對してこの省略法をやるのは、次のやうな理由である。即大低は亂暴な經驗による係数を用ひるから非常に正確であるかどうかうたがはしいにかゝはらず計算に大なる手間をかけることが不正當であるから。本論中の圖及表は各個量の數量的通觀を與へる。I.1.2及3に於てやつた假定のものとに六つの攪亂方程式は各三つづゝの各對稱及非對稱の運動に相當する二つの組に分けられる。兩方共決定行列式を展開すると各四次方程式になる。デイメンジョンなしの量にして形式上綺麗に表はすことは直接の明瞭性を缺くからやめた。攪亂項(I.4)に対する通觀し得る符號は全研究を通じてそのまゝにしてをいた。普通のやうな胴體の飛行機でない特別の飛行機に封しても失張り主慣性モーメント軸(I.2)の假定が滿足されゝば安定方程式の係數(I.4)は變化しない。また展開しない攪亂項(I.5)の式も亦符號に適當な定義を下せばそのまゝにしてをくことが出来る。攪亂量が攪亂項に及ぼす影響を各個に亘り研究した(II,1及III,1)。對稱運動ではこの方法により既に「靜的安定」の主條件が出てゐる。一般の對稱安定條件(II,2)の議論はまた「靜的安定」の意味に導いた。確かにこの條件は上昇時または下向きの滑空時には附加條件によつて修正きれねばならない。非對稱運動に於て一般安定準據より主條件を出すことが出来る。これ亦上昇及下向き滑空の時に一般式にかへねばならない(III,2)。運動の主型式を知るために近似法を與へてこれを作つた(II,3及III,3)。對稱運動に於ては二重二次方程式を二つに分ければ簡單に行く。この際重心振動及回轉振動の物理的意義に対しても何等困難はない。非對稱連動に於ては非常に大きな根と非常に小さい根とを簡單に求めてそれを解釋することが出来る。この二つの根をなくして簡單な數學的近似式及完全な物理的の意味は之を與へることが出来ない(III,3)。横軸のまはりの回轉による後退角及主翼の衰退モーメントの影響は簡單に一般の研究に入れることが出来なかつたから特別に取扱つた(I,5)。有名な指数の積分常數を求めるにはRouthによる方法を與へた(III,3)。強制振動及自動安定の關聯問題に對しては數學式とその解の一般法とを與へた(IV,1及2)。上反角が一定の非對稱連動の操縦に及ぼす影響は質的に例題の數量的結果を基として有限の攪亂に應用して論議した(IV,2)。またこれ迄省略してゐた迎角による壓力中心軸の變化が非對稱運動に及ぼす影響を數學的にまとめ、操縦に及ぼす影響を質的に取扱つた(IV,2)。舵の調和に關する問題の取扱に對し小振動の方法による一つのやり方を輿へた(IV,2)。