著者
狩野 廣之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.114, pp.69-73, 1934-02
著者
田中 信
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.66, pp.25-60, 1930-02

(1) Cathode Sputtering。Sputtering の方法は大體Bossの方法によつた。試片は短冊形の硝子片に着膜した。唯從來の實驗と違つてゐる點は,陰極板の代りに金屬の粉末をも使つたこと,又布や紙を硝子板の代りにして,其を鍍銀して見たこと等である。(2)膜の外見。非金屬的で薄膜に於ける干渉色でない色を持つ膜,Biでは特に白色な膜,普通の金屬光澤の膜,黒味を帯びた灰色の膜,及び其等の中間の種々な膜を經驗した。非金屬的膜の發生原因は不明である。Biの白色膜發生の原因は,放電による陰極の加熱の爲に,硝子板が熱くなるのを主因と考へた。此考へは,放電時間の斷續,放電條件の調節,硝子板背面に放熱器を貼る事等によつて,裏書きされた。併し此等の膜の均整に必要な條件を充しても,猶ほ部分的に現れて來る反射能の不均等に就いては,熱電氣測定と相俟つて,陰極板に或る固有な因子のある事を知つたが,單結晶陰極板を用ゐることによつて,陰極の結晶状態のみが主因をなすものでないことを知つた。併し此の陰極板表面の影響の主因は不明である。(3)顯微鏡寫眞。反射能の小さい膜では明白な粒状組織が見られる。其上に屡々数倍の大粒が散布してゐる。此はBi, Pt, Pd, Agの皆に共通である。特にBiでは,大粒が丘の樣な形になつて存在する事を知つた。尚ほ一つの試みとして,擬格子的粒状構造の数學的分類法を考案し,此種の雜然たる組織の分類法として應用され得る事を指示した。併し,金屬膜の寫眞に就ては顯微鏡の誤差に沮まれて,未だ充分な結果は得られなかつた。又實際の場合に類似した,人工的格子組織の寫眞を作つて,同じ方法でphotometerを使つて比較する事をした。此によつて硫黄の膜が部分的には正方格子に近いと云ふ結果を得た。(4)電氣抵抗。外見上非金屬色を呈する金屬膜は異常に大きな抵抗を持つ。白色膜は金屬光澤膜に比して餘り異らない。白色及び種々の反射能の膜の比抵抗と厚さとの關係は興味ある問題であるが,併し,此れは此處で試みた樣な膜の構造の研究と相俟つて行ふべきものと考へられる。二種の異金屬の膜の二重層を作つて,其抵抗を測つた。Biが關係する膜には,著しい抵抗の特異性のある事を認めた。併し量的の結果は後日に讓る事にした。(5)熱電氣的性質。Bi膜に就ては,同一金屬の異種の膜の間に著しい熱動電力を認めた。此E.M.F.は反射能の良い膜が反射能の惡い膜に對して,hot junctionでelectro-positiveと云ふ結果に達した。放電の斷續,放電條件の加減,硝子板背面に放熱器を付けること等によつて支配した反射能の差に於て,上のE.M.F.と反射能との關係が成立つことを認めた。此と同様にPt, Pdに就ても,放電條件を變へて付けた膜の間に明瞭なE.M.F.の起ることを知つた。要するに膜の熱電氣的性質の研究には,其反射能と關係ある顯微鏡的構造の研究が必要であることは,以上の結果から明かである。又一方では,超顯微鏡的構造の差を熱電氣的性質から研究し得る曙光を認めることも出来たと考へる。又此の構造の研究は,結局は當然電氣抵抗の本質に關する研究と連關して來るであらうと考へる。終りに,此實驗は終始;寺田寅彦先生の懇篤な御指導に頼つて成つたものである。
著者
西脇 仁一 川口 恒夫
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.192, pp.265-309, 1940-08

この頃の様に發動機の性能が向上したり,又飛行機の速度が増したりすると,油冷却器の抵抗も却々大きなものとなつて來る.本實驗は現在各種飛行機に實用されてゐる各種滑油冷却器の抵抗並びに放熱試驗等を行ひ,航空機用としての性能を比較した.實驗に使用した冷却器は平行板型(ヴィカース,ランブラン),蜂の巣型2種,空冷發動機用環状型(圓管型,偏平管型)の6種類である.實驗の結果,蜂の巣型冷却器が航空機用としては性能が勝れてゐる.供試冷却器が少いので詳しくは分らぬが,蜂の巣型冷却器で管長の長い方が性能としてはよい様である.(これは水冷却器と同様の性質である,この點に關する詳細は續報に譲りたい).本實驗では冷却液として水及び油を使用して比較した,一般に油を使用すると,水の場合に比べ油の粘性の影響で放熱量が低下する,この低下の度合は流量や油の温度にもよるが,油の通路が狹くて曲つてゐると低下の度合が少くて濟む様である.本文中には滑油冷却器設計の資料として實驗データを記載して置いた.