- 著者
-
森川 拓也
- 出版者
- 桜花学園大学
- 雑誌
- 桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVETSITY (ISSN:13483641)
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.77-90, 2020-11-30
平成20年度版小学校学習指導要領において「伝統的な言語文化に関する事項」が新たに設けられ、現行の小学校学習指導要領でも「我が国の言語文化に関する事項」として、同じく3・4学年で俳句と短歌が取り扱われている。その内容は「親しむこと」が重視され、その作品の内容についての鑑賞・解釈という点は求めてはいない。しかし、それでは俳句本来の価値に触れることは難しい。つまり文学作品としての短歌や俳句は、短く少ない言葉に秘められた思い、奥深さ、言葉によるイメージの膨らみを得ることがその価値である。その価値に触れてこそ、より親しみを感じるのではないのだろうか。その見地に立ち、光村図書教科書4年上で扱われている「雀の子そこのけそこのけ御馬が通る」(小林一茶)の俳句を例に、児童が俳句の内容に迫る授業の可能性を、授業実践例から考察した。児童は、句の中の数少ない言葉の意味、その言葉から導き出されるイメージを駆使して、この句の内容に迫っていくことができた。その授業からは、言葉というはっきりした証拠をもって豊かに想像を膨らませることの可能性が示されたと言える。