著者
森下 和路 安藤 信
出版者
京都大学大学院農学研究科附属演習林
雑誌
森林研究 (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.35-45, 2002-12-10

京都市周辺の都市林では, 1980年代以降に激化したマツ枯れにより, 多くのアカマツが枯死した.京都市市街地北部における近接3地域(宝ヶ池, 神山, 上賀茂)の都市林について, マツ枯れ前後の植生図を比較し, 林相変化を明らかにした.植生図は1982年, 1990年, 1998年撮影の航空写真から作成し, 各林分を優占種によってアカマツ林などの林分タイプに分類した.1982年には, アカマツ林が最も多くみられ, 宝ヶ池及び神山地域で60%以上, 上賀茂地域でも約30%の面積を占めた.しかし, 3地域のアカマツ林の面積は, 1998年にはそれぞれ0.6%, 4.6%, 2.1%にまで減少していた.宝ヶ池及び神山では, マツ枯れ後, 谷地形で落葉広葉樹が順調に林冠層に現れたのに対し, 尾根地形では林冠層を欠く林分が多く出現した.上賀茂では, マツ枯れ後, ヒノキが林冠層に現れた林分と, ヒノキ以外の樹種が優占した林分が存在し, その後それぞれが地形に応じて様々な林相に変化した.以上より, これらの地域におけるマツ枯れ後の林相変化にはいくつかのパターンが存在し, その違いには地形やマツ枯れ以前の林分構造が影響していると考えられる.
著者
倉島 孝行 松浦 俊也 日野 貴文 神崎 護 キム ソベン
出版者
京都大学フィールド科学教育研究センター森林生態系部門
雑誌
森林研究 (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.81, pp.1-11, 2021

本稿ではカンボジアを例に, 集約管理型コミュニティ林業 (以下, CF) 導入・普及の試みが発展途上国の台地・丘陵地帯で直面しうる問題と, その現実的な対策について解明・論述する. 具体的には一地方内の複数のCF区域と各周辺域の土地利用動態, それらの差違の要因, 以上の点から汲み取れる施策上の示唆点を記す. カンボジアでは大規模森林伐採権制度停止後, 国土の11%をCF域とする方針が出された. だが, 森林維持群と耕地拡大群という, 好対照なCF区域が狭い範囲内に出現していた. 特に後者には政府の新たな土地コンセッション発行に基づくゴム園の拡大と, 農民による商品農作物栽培地の拡大とが直接・間接に影響していた. 以上の対照的なCF区域出現の背景として, 村ごとで異なった余剰可耕地の大小と, 新参者の耕地化の動きが重要だった. そこで今後, 森林維持群を増やすためには, 1)CF区域の取捨選択に当たり, CF以外の土地利用政策と農林業の動向, それらに由来する土地需要の変化を踏まえた, 中期的で広範な分析に基づく判断と, 2)CF区域での新参者の耕地化に, 元からいる村人らが追随しないようにする効果的な支援が肝要だと言える.
著者
山根 力 増田 稔 仲村 匡司
出版者
京都大学大学院農学研究科附属演習林
雑誌
森林研究 (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.70, pp.29-33, 1998-12

どのような色の組合せの縞が「派手な」および「感じのよい」イメージを与えるのかを調査し、これらのイメージと色彩の物理量(L*, a*, b*)の間にどのような関係があるのかを検討した。アンケートには21色の組合せによって生じる2色縞のうち、108種類の縞を用いた。一般に、縞を構成する2色の間の色差(ΔE*)が大きければ大きいほど、「派手な」イメージを与えた。また、明度(L*)および彩度(C*)がともに大きい鮮やかな黄色が含まれている場合には、2色間の色差に関係なく「派手な」イメージとなった。一方、木材色に近い色彩で構成される縞は「派手な」イメージを与えにくいことが明らかとなった。「感じのよい」イメージは被験者の好みに左右され、個人差が大きかった。しかしながら白の含まれている縞は、一般に「感じのよい」イメージを与え、一方、黒の含まれる縞は「感じのよい」イメージを与えない傾向がみられた。What kind of color combination in stripes gives us 'showy' or 'agreeable' image? To make it clear the relation between physical values (CIE L*a*b*) of color combination of stripes and psychological images, questionnaires using 108 stripes were distributed to 30 subjects. These stripes were consisted of two-color combination of 21 different colors. The stripes were vertical and each color line has 4 mm width. Size of stripe specimens was 70mm (vertical)×100mm (horizontal). Results of questionnaires were as follows : (1) 'Showy' image was strongly given with increase of color difference ΔE* in stripes. (2) In addition to this, stripes including bright yellow color [both high lightness (L*) and high chromaticness (C*)] gave 'showy' image. (3) On the other hand, stripes consisted of woody color (YR) did not give 'showy' image. (4) Color of stripes judged to be 'agreeable' varied with subjects depending on their personality. (4) Stripes including white generally gave 'agreeable' images, but stripes including black did not give 'agreeable' image.
著者
田中 由紀 高槻 成紀 高柳 敦
出版者
京都大学大学院農学研究科附属演習林
雑誌
森林研究 (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.77, pp.13-23, 2008-12
被引用文献数
9

ニホンジカ(Cervus nippon)の採食による植生変化が近年目立つようになった京都大学芦生研究林において、2002年から2003年にかけて、ニホンジカの採食とササ群落の衰退の関係を調査した。糞分析を行い、ニホンジカの餌資源としてのササの重要性を調べた。また、シカによる葉の被食、稈の枯死の程度を調べ、地形条件との関係を調べた。さらに、積雪期に踏査を行い、ササの衰退と積雪分布の関係を調べた。シカの糞内容物に占めるササの割合は年間を通じて20〜50%であり、特に冬期に高かった(54.12±16.73%)。ササの葉の被食と稈の枯死は、緩傾斜、高標高、尾根部において多かった。また、積雪が少なく融雪が早い地点でササ群落の衰退が進み、積雪が多く融雪の遅い地点で衰退の程度が小さい傾向が見られた。以上より、シカの採食によるササ群落の衰退地の分布は地形条件と積雪分布に強く影響を受けることが示唆された。その背景には、シカが緩傾斜の尾根部のような採食行動をとりやすい地形条件を選択してササ群落を採食すること、特にシカにとってササが重要である積雪期には、積雪の少ない地点を集中的に採食することが考えられた。
著者
田中 由紀 高槻 成紀 高柳 敦
出版者
京都大学大学院農学研究科附属演習林
雑誌
森林研究 (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.77, pp.13-23, 2008-12
被引用文献数
9

ニホンジカ(Cervus nippon)の採食による植生変化が近年目立つようになった京都大学芦生研究林において、2002年から2003年にかけて、ニホンジカの採食とササ群落の衰退の関係を調査した。糞分析を行い、ニホンジカの餌資源としてのササの重要性を調べた。また、シカによる葉の被食、稈の枯死の程度を調べ、地形条件との関係を調べた。さらに、積雪期に踏査を行い、ササの衰退と積雪分布の関係を調べた。シカの糞内容物に占めるササの割合は年間を通じて20〜50%であり、特に冬期に高かった(54.12±16.73%)。ササの葉の被食と稈の枯死は、緩傾斜、高標高、尾根部において多かった。また、積雪が少なく融雪が早い地点でササ群落の衰退が進み、積雪が多く融雪の遅い地点で衰退の程度が小さい傾向が見られた。以上より、シカの採食によるササ群落の衰退地の分布は地形条件と積雪分布に強く影響を受けることが示唆された。その背景には、シカが緩傾斜の尾根部のような採食行動をとりやすい地形条件を選択してササ群落を採食すること、特にシカにとってササが重要である積雪期には、積雪の少ない地点を集中的に採食することが考えられた。